中国政府は2026年8月3日、改正「集積回路配置設計保護条例」を国務院令第842号として公表した。2001年の制定以来25年ぶりの全面改正で、10月15日に施行する。保護対象を集積光子や量子機能を持つ回路へ広げ、故意による重大な侵害には通常の算定額の1倍以上5倍以下という懲罰的賠償を導入した。
改正のもう一つの柱は、何を権利として守るのかを登録時に明確にする仕組みだ。申請者には独創性声明の提出を求め、登録後の保護範囲は複製物または図面を基準に決める。広く「チップ設計の保護強化」と呼べる動きではあるが、回路アーキテクチャや製造技術を一括して囲い込む法律ではない。新条例が強めるのは、登録する配置の境界と侵害後の救済である。
「チップ設計」より狭い保護対象
条例が守る「配置設計」とは、少なくとも1つの能動素子を含む複数の素子と配線を、半導体基板の中や上に組み込むための3次元配置を指す。製造に向けて準備された配置も含む。完成したチップの機能そのものより、素子と配線を物理的にどう置いたかを保護する制度である。
改正条例は、この枠組みを集積光子や量子などの機能を持つ集積回路にも適用できると明記した。従来の定義は半導体集積回路を前提としていたため、新しい集積デバイスまで条文上の対象に加えたことになる。ただし、保護は思想や数学的概念には及ばない。処理過程と操作方法も対象外だ。新しいチップの動作原理やアルゴリズムまで、この専有権だけで保護できるわけではない。
専有権が登録によって生じる点も変わらない。未登録の配置設計は条例の保護を受けず、研究・評価を目的とする複製や、分析を基に独創的な別の配置設計を作る行為には例外が残る。改正は保護対象を広げたが、技術の分析と独立創作を許す境界は維持した。
登録図面と独創性声明で権利を区切る
6章36条だった旧条例は6章54条に増え、申請・審査・取消しの手続が大きく書き足された。申請は実際の創作活動を基礎とし、虚偽を禁じる。提出する複製物または図面は独創的な部分を明瞭に示さなければならず、新設の独創性声明には、その区域、設計上の要点、対応する機能を記載する。
この声明は説明資料で終わらない。第34条は、保護される配置設計を登録済みの複製物または図面で確定し、独創性声明を独創部分の解釈に使えると定めた。国家知識産権局は2024年の改正草案説明で、旧制度では専有権の保護範囲を画定しにくいことを課題に挙げていた。図面と声明を組み合わせる新制度は、権利者がどの部分のコピーを侵害だと主張するのか、審査側や裁判所が何と比較するのかを申請段階から記録する。
配置設計登録を取り消す入口も広がった。旧条例では行政当局が不適合を発見した場合の取消しを定めていたが、改正後は誰でも請求できる。真実の創作活動を基礎としない申請、独創性の欠如、図面や声明の不備などが認められて登録が取り消されると、専有権は最初から存在しなかったものと扱われる。権利範囲が明確になる一方、申請資料の不備が後のライセンスや訴訟の前提を崩しうることも明文化された。
最大5倍の賠償と残る3つの期限
侵害時の賠償は、権利者の実際の損失または侵害者が得た利益を基に算定する。どちらも確定しにくい場合は、ライセンス料の倍数を参照する。故意に侵害し、事情が重大なケースでは、そこから算定した額の1倍以上5倍以下まで引き上げられる。権利者が侵害を止めるために支出した合理的な費用も賠償に含まれる。
旧条例は侵害者に停止と賠償を求めていたものの、算定の順序や懲罰的賠償を定めていなかった。今回の改正で、損害をどう金額へ変えるかが条文に入った。とはいえ、最大5倍があらゆる侵害へ適用されるわけではない。故意と重大性の両方が必要であり、実際の増額幅は証拠と個別判断に左右される。
| 条件 | 改正後の扱い | 旧制度からの変化 |
|---|---|---|
| 保護期間 | 申請日か世界初の商業利用日の早い方から10年 | 維持 |
| 創作後の上限 | 創作完成から15年で保護終了 | 維持 |
| 商業利用後の申請 | 世界初の商業利用から2年以内 | 維持 |
| 重大な故意侵害 | 通常算定額の1倍以上5倍以下 | 新設 |
この比較から分かるのは、改正が権利の存続期間を延ばしたのではなく、登録の質と侵害時の実効性を高めたことだ。商業投入を先行させる企業は2年の申請期限を引き続き管理しなければならない。創作から15年という絶対的な上限も残るため、古い設計を後から登録して長期保護へ切り替えることはできない。
企業は10月15日までに何を整えるか
10月15日の施行までに、設計会社は登録図面と独創性声明を一体で作る手順を決める必要がある。どの区域を独創部分として示し、設計上の要点と機能をどう対応させるかが、将来の権利範囲を左右する。条例本体には期限を逸した権利の回復手続も加わったが、不可抗力の場合でも障害の解消から2か月以内かつ期限満了から2年以内という条件が付く。
契約管理にも変更が及ぶ。ライセンス契約は発効から3か月以内に国務院の知識産権行政部門へ届け出る。専有権を担保に入れる場合は質権登録が必要になる。法人などが主導して作った配置設計では、条件を満たす担当者に合理的な報奨と報酬を与える規定も加わった。共有者間に別の合意がない場合、通常ライセンスで受け取る使用料は共有者間で分配する。
一方で、公衆が登録後の紙の図面を閲覧できる制度は残るものの、電子版は訴訟や行政処理などを除いて閲覧・複製できない。保護範囲を図面で明確にしながら、高精度なデータの拡散は抑える設計だ。国家知識産権局は関連する部門規則と規範文書を改める方針を示している。申請様式、独創性声明の記載例、取消し審査の運用が公表されれば、25年ぶりの改正が実務でどこまで権利を強くするかを測れる。


