暗号資産の購入意向に関する新調査で、モデル内の関連が最も強かったのは、技術やサービスを信頼できるという感覚だった。Rachna JainとShikha Sharmaが2026年7月13日に公開した調査は、信頼、使いやすさ、便益の順に関連が強いと報告した。その2日後、日本では暗号資産を金融商品取引法の規制へ移す改正法が成立した。英国の別調査では、非保有者の26%が規制されれば購入しやすくなると答えている。これらは日本の改正法が購入を促す因果効果を示さないが、規制当局が「安全な取引環境」と「安全な投資対象」を明確に分ける必要を映している。

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0.427が示す、購入意向の入口

International Journal of Blockchains and Cryptocurrenciesに掲載された論文は、技術受容モデル(Technology Acceptance Model、TAM)を暗号資産の購入へ当てはめた。TAMは、利用者が技術を使いやすく役に立つと感じることと、利用意向との関係を捉える枠組みだ。著者らはここに、知覚された信頼、リスク、便益を加え、横断的なアンケート結果をPLS-SEM(部分的最小二乗法による構造方程式モデリング)で分析した。

購入意向とのパス係数は、知覚された信頼が0.427(p=0.019)で最大だった。知覚された使いやすさは0.250(p=0.001)、知覚された便益は0.158(p<0.001)で続く。係数は同じモデル内で関連の強さを比べる値であり、その値を購入確率の上昇率として読んではならない。それでも、利用者が暗号資産そのものや取引サービスを信頼できると感じることが、操作の簡単さや期待する便益より購入意向に強く結びついたという結果ははっきりしている。

著者らは事業者に、金融・個人情報の保護、手数料の透明な開示、AIによる顧客支援、利用しやすい画面、対話型ダッシュボードを求めた。これらは秘密鍵の管理や手数料の確認でつまずく利用者を減らし、サービスを扱えるという自信を支える。同時に、優れた画面と丁寧なサポートは、原資産の値動きや発行体の健全性とは別の層にある。取引所を信頼できることは、買った暗号資産の価格が守られることを意味しない。

意向と実際の購入の間にある距離

今回の結果が直接測ったのは購入意向であり、実際の購入、保有期間、損益ではない。横断調査は一時点の認識と意向を結びつけるため、信頼が購入意向を生んだのか、買いたい人がサービスを高く評価したのかまでは確定できない。公表された要約には調査地域、回答者数、年齢や所得、暗号資産の保有経験も記載されていない。著者2人はインド・デリーの大学に所属するが、それだけで回答者をインドの消費者とみなすことはできず、日本を含む各国への一般化には材料が足りない。

実際の行動を見ると、別の力が前へ出る。国際決済銀行(BIS)の研究チームは、2015~2022年に95カ国で記録された暗号資産取引アプリの日次利用を分析し、Bitcoin価格が上がった後にダウンロードと利用開始が増えることを確認した。中国の暗号資産マイニング取り締まりとカザフスタンの社会不安という、アプリの使いやすさとは別にBitcoin価格を動かした出来事も利用し、価格変化が新規参入を動かす経路を検証している。

BISのデータでは、新規利用者の約40%を35歳未満の男性が占めた。参入時点とその後の価格推移から、個人利用者の73~81%が初期投資で損失を出した可能性があるとも推計した。これは2015~2022年のBitcoinとアプリ利用に基づく推計であり、現在の全保有者の確定損失率ではない。ただ、購入前に尋ねた「信頼できる」「使いやすい」という回答と、上昇相場で口座を開き、価格下落にさらされる行動は別に測らなければならない。

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規制は購入の背中を押すのか

英国の金融行為規制機構(FCA)がYouGovへ委託した2024年調査は、規制に対する消費者の自己申告を数字にした。英国成人2,199人を対象に、暗号資産を保有していない人の26%が、市場と関連活動が規制されれば購入しやすくなると答えた。規制は詐欺や市場乱用を抑え、保管や情報開示の水準を引き上げる。同時に、「当局が見ている」という事実が、資産の価格リスクまで小さくなったように受け取られるおそれがある。

ただし、FCAの26%は英国調査だが、新論文の公開要約は調査地域と標本属性を示していない。質問と調査設計も異なる。前者は仮定への自己申告、後者は横断データの関連であり、日本の法改正が信頼や購入を動かす効果を示した数字ではない。両者が共通して突きつけるのは、利用者が何を根拠に「信頼できる」と判断したのかを測る必要である。

同じ調査では、英国成人の93%が暗号資産を認知し、12%が保有していた。FCAは約700万人に相当すると推計している。購入の主な理由に友人や家族の影響を挙げた人は20%だった。購入資金にも変化があり、長期貯蓄を使った人は2022年の19%から2024年には26%へ、クレジットカードまたは当座貸越を使った人は6%から14%へ増えた。

ここでは信頼の出どころが分かれる。資産の仕組み、発行量、保管方法、手数料を確認して生まれる信頼と、家族の勧めや規制の存在から生まれる信頼は同じではない。借入可能な資金で購入する人が増える局面では、使いやすい画面が、損失を吸収できない利用者の購入まで早めていないかを確かめる必要がある。事業者の設計目標には、購入完了率に加えて、理解できない商品から離脱できた割合も必要になる。

成立した金商法改正と「お墨付き」の線引き

日本では暗号資産がすでに小口の個人へ広がっている。金融庁の暗号資産制度に関するワーキング・グループ報告によると、国内交換業者の口座開設数は2025年10月時点で延べ1,300万を超え、利用者預託金残高は5兆円以上に達した。保有者の約7割は年収700万円未満で、個人口座の8割以上は預かり資産が10万円未満である。投資経験者の暗号資産保有率は7.3%で、取引動機の86.6%を長期的な値上がり期待が占めた。

普及の裏で、利用者からの相談も多い。同報告によれば、金融庁の相談室には暗号資産に関する苦情相談等が月平均350件を超えて寄せられ、その大半を詐欺的な投資勧誘が占めた。使いやすい正規サービスと、信頼を装う勧誘を利用者が見分けられる制度が必要になった理由である。

市場の広がりに対し、2026年7月15日に成立した改正法は、暗号資産の規制を資金決済法から金商法へ移す内容だ。施行後は暗号資産の性質や機能、供給量、基盤技術などの情報公表を求め、発行者の定期・臨時情報を整える。取引業者には顧客適合性を確かめる体制や、不正流出時の補償原資となる責任準備金を求め、暗号資産のインサイダー取引も規制対象に加える。参議院の議案情報では両院で可決され成立済みだが、7月18日時点で公布日と法律番号は記載されておらず、暗号資産規制の見直しは公布から1年以内に施行される。

国会も「お墨付き」という受け止めを警戒した。衆議院の附帯決議は、投資者保護の強化と申告分離課税の対象化が、国として暗号資産投資に「お墨付き」を与える意図ではないと周知するよう政府へ求めた。さらに、暗号資産の大部分には裏付け資産がないという商品特性を踏まえ、利用者がリスクを理解し、負担能力の範囲内で取引できる環境を整えるよう明記した。

制度が狙うべきなのは、信頼を弱めることではなく、信頼の根拠を正確にすることだ。施行後は口座数や取引額に加え、利用者が何を規制済みだと理解したか、購入前にどの情報を確認したか、借入資金を使ったか、損失を負担できたかを追う必要がある。そこで購入意向と実際の損益を結びつけられれば、「信頼できる取引環境」と「利益が期待できる投資対象」を分ける制度設計の成否が見えてくる。