Artemis programは、米国航空宇宙局(NASA)が主導し欧州や日本など複数国が参加する国際的な有人月探査プログラムである。人類を再び月面へ送るとともに、月周回宇宙ステーションLunar Gatewayや月面拠点の整備を通じて持続可能な月面活動基盤を構築することを目的とする。将来的にはこの基盤を火星への有人飛行技術の実証の場としても位置づけている。
概要
Artemis programは、Orion宇宙船やSpace Launch System(SLS)ロケットを中核とした輸送手段を用いて、月周辺への往還と月面への着陸を段階的に実現することを目指すプログラムである。同計画にはNASAだけでなく民間企業も参画しており、月面着陸機(Human Landing System)の開発をSpaceXなどの民間ロケット企業が担う体制が敷かれている。Artemis IIミッションでは4名の宇宙飛行士が搭乗し、56年間破られていなかった月周辺への有人飛行記録を更新した。同ミッションのOrionカプセルは、2026年4月10日(米国東部時間、日本時間4月11日)にカリフォルニア州サンディエゴ沖の太平洋に着水し、乗員は無事帰還した。
技術的位置づけ
Artemis programの技術基盤は、Orion宇宙船による有人輸送、SLSロケットによる打ち上げ、そしてLunar Gatewayによる月周回軌道上の中継拠点整備という三つの柱で構成されている。月面での持続的活動を支えるため、NASAとエネルギー省(DOE)は2030年までに月面で核分裂炉を稼働させる計画を正式に始動させており、これは月面基地の電力供給インフラを技術実証の枠を超えて実現しようとする試みである。また、月面着陸機の開発においてはSpaceXのStarshipが重要な役割を担うことが想定されており、同社の推進技術やAstroboticが開発する回転デトネーション・ロケットエンジン(RDRE)のような次世代推進技術の進展も、将来のミッション遂行能力に影響を与える要素として注目されている。
主要な動向
2026年4月には、Artemis IIミッションの乗員4名を乗せたOrionカプセルが太平洋に着水し、56年ぶりに月周辺への有人飛行を完遂したことが大きな節目となった。同月にはLunar Gatewayの意義を論じる記事が公開され、月周回宇宙ステーションが科学・商業目的での持続可能な月面居住地確立、さらには火星到達に向けた布石として位置づけられていることが示された。同時期に、NASAとDOEが2030年までの月面原子力発電所稼働計画を正式発表し、月面活動基盤の電力供給という課題への対応が進んでいることも明らかになった。
一方で、月面着陸機の開発を担うSpaceXのStarshipは試験段階で複数の困難に直面している。2026年4月にはStarship V3のブースターが試験中に破損する事態が報じられ、月面着陸計画への影響が懸念された。しかし2026年6月には、Starship V3の初飛行がブースターの制御不能な着水や上段エンジン故障を経験しつつも、主要目標であった衛星展開には成功し、SpaceXがIPOを控える中で技術的進展と課題を同時に示す結果となった。同時期にはBlue Originも大型ロケット「New Glenn 9×4」を発表するなど、月面輸送を巡る民間企業間の競争が活発化している。こうした動きは、Artemis programが民間の推進技術や輸送手段の成熟度に依存しながら、段階的に持続可能な月面活動基盤の構築を進めている状況を反映している。