Black Forest Labs(BFL)は2026年8月4日、動画生成モデル「FLUX 3 Video」の一般提供を始めた。テキストや静止画から、対話や効果音を伴う最長20秒の動画を作り、既存動画の続きを生成する機能も一つのAPIで扱える。7月23日の発表時点では早期アクセスだったが、今回からBFL APIと一部パートナーを通じて誰でも利用できる。性能競争の数字以上に、秒単価とドラフト運用まで揃ったことが、制作現場にとっての変化である。
20秒・音声付き動画を一つのAPIで生成
FLUX 3 Videoが受け付ける長さは5〜20秒の整数秒で、内容に合わせる自動設定も選べる。解像度はHDが既定値で、FHDにも対応する。映像と同時に音声を生成する設定は初期状態で有効になっており、台詞、効果音、環境音を同じリクエストから出力する。
APIには三つの生成モードがある。text-to-videoは文章から映像を作り、image-to-videoは静止画を開始フレームや終了フレームとして固定できる。video continuationは既存の映像と音声を受け取り、その続きとなる動きやカメラ、会話を生成する。BFLの発表によれば、継続元として入力できる既存動画は最大4秒だ。
静止画は最大10枚をキーフレームとして指定できる。開始と終了の2枚を置く使い方に加え、各画像へ秒数を割り当てれば、途中の画角や姿勢を決めた絵コンテとして機能する。複数の場面やカメラアングルを一度の生成へ含めることも可能で、映像を短いカットごとに作って後から接続する作業を減らせる。
BFLは多言語の口の動きにも対応すると説明する。対応例には英語、中国語、日本語のほか、欧州や南アジアの複数言語が挙げられている。ただし、言語別の精度や長い台詞での同期率は公表されていない。
ドラフトから本番へ、20秒で1.20〜10.60ドル
制作工程で効くのがドラフトモードである。まず低価格のHDプレビューを生成すると、APIは暗号化されたdraft_cacheを返す。このデータは元のモードとプロンプトを固定する。seedと参照メディアも保持されるため、後から標準品質で再生成しても構図や動きを維持できる。利用者は案を選んだ後にHDかFHDを指定すればよく、本番レンダリングで内容が変わるリスクを抑えられる。
料金は出力時間に応じた秒単価で、生成音声を含む。公開価格から最長20秒を作る場合の費用を計算すると、次のようになる。
| モード | HDドラフト | HD標準 | FHD標準 |
|---|---|---|---|
| テキスト/画像から動画 | 0.06ドル/秒(20秒で1.20ドル) | 0.17ドル/秒(同3.40ドル) | 0.29ドル/秒(同5.80ドル) |
| 動画から続きを生成 | 0.12ドル/秒(20秒で2.40ドル) | 0.41ドル/秒(同8.20ドル) | 0.53ドル/秒(同10.60ドル) |
動画継続はテキスト・画像からの生成より高く、FHDの20秒では両モードの料金差が4.80ドルに広がる。複数案を試す工程では、0.06ドルまたは0.12ドルのドラフトを挟む方が費用を予測しやすい。一方、FHDはモデルが直接1080pを生成する方式ではなく、HD相当の生成結果を動画アップサンプラーで仕上げる。FHD標準はHD標準より20秒当たり2.40ドル高い。画面内の細かな文字や動きの速い場面で、この上乗せに見合う品質が出るかは実際の素材で確認する必要がある。
1135対1069、内部Elo評価の読み方
BFLが公開した人手評価では、text-to-videoのEloスコアでFLUX 3が1135を獲得した。Gemini Omni Flashは1090、Minimax H3は1082、Seedance 2.0は1069で、FLUX 3はSeedance 2.0を66ポイント上回る。7月の早期評価では、音声付き720p・10秒の一対一比較でFLUX 3が52%の票を得た。ただし、7月の選好率と8月のEloは評価条件と尺度が異なり、両者から差の拡大は判断できない。
image-to-videoの結果は接近している。FLUX 3は1051、Seedance 2.0は1049で差は2ポイントだ。図表上はFLUX 3が首位だが、BFLの説明文も両モデルを同等として扱う。「Seedance 2.0を上回った」という表現を全モードへ広げると、この距離感を失う。
さらに、このランキングはBFLの内部評価である。発表ページには評価に使ったプロンプトの集合、生成本数、評価者の構成、信頼区間が示されていない。Eloは対戦形式の選好結果を相対的な順位へ変換する指標であり、2ポイント差の意味は評価件数やばらつきが分からなければ判断できない。1135という首位は有力な初期結果だが、制作用途ごとの再現性を保証する数字ではない。
一般提供後も残る三つの境界
今回一般提供されたのはFLUX 3の動画生成部分である。BFLは今後、画像・動画・音声の参照を組み合わせる機能、画像生成・編集向けのFLUX 3 Image、オープンウェイト版のFLUX 3 Devを投入する計画を示した。いずれも提供日は公表していない。現状のAPIでは、複数の入力形式を自由に混ぜる段階には達していない。
安全対策では、BFLは第三者企業Cinderと協力し、同意のない性的画像や児童性的虐待コンテンツを含むリスクを一般提供前に評価したという。APIの安全許容度は0〜4で指定し、既定値は2となる。参照画像や動画を渡すリクエストでは上限が2に制限されるため、利用側が設定を最大まで緩めることはできない。
残る実務上の判断材料は、外部評価での品質、FHDアップスケールの効果、実際の生成時間である。BFLは生成速度や待ち時間を公表しておらず、内部Eloの信頼区間も開示していない。まずドラフトで案件固有のプロンプトと言語を試し、同じdraft_cacheをHDとFHDで仕上げて比較すれば、一般提供によって変わった制作条件をコストと納期へ落とし込める。



