Steam Deck 2向けと噂されるAMDのAPU「Gainsborough」について、6コア12スレッドのCPUと24GBのメモリを備えた開発用サンプルの試験記録が報じられた。CPUコア数は現行Steam Deckの4コアから50%増え、メモリの転送レートも9600 MT/sに達しているという。ただし、これらは次期Steam Deckの正式な仕様を示すものではなく、ゲーム性能が50%向上することを意味するわけでもない。Valveが公開しているSteam Deck LCD版・OLED版の仕様と比較すると、今回の試験記録から読み取れる改良点と、現時点では判断できない性能面の違いが見えてくる。

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6コア・24GBメモリを備えた開発用サンプルの記録が浮上

TechPowerUpの10月20日付記事は、OpenBenchmarkingに掲載されたとされるGainsboroughの試験結果を報じた。それによると、CPUは6コア12スレッドで、ベースクロックは2.4GHz。メモリには24GBのLPDDR5を採用し、転送レートは9600 MT/sだったという。CPUコア数は現行Steam Deckの4コアから50%増えており、次世代APUとされるチップのCPUとメモリ構成について、具体的な情報が明らかになった形だ。

Notebookcheckが試験記録を詳しく調べたところ、結果には「0807gpufull」という名称が付けられ、2026年8月7日にアップロードされていたという。基板名は「AMD GBR-FF6-SKT」、グラフィックス用のvBIOSは「113-GBRGENERIC-001」と記録されている。同誌は、こうした識別情報をGainsboroughに関連するものと判断している。ただし、これらの情報だけでValveが次期Steam Deckに採用するAPUだと断定することはできない。

重要なのは、開発用サンプルの構成と、実際に発売される携帯ゲーム機の仕様を区別することだ。試験環境に24GBのメモリが搭載されていたとしても、製品版でも同じ容量になるとは限らず、CPUコア数だけではGPUの仕様も判断できない。Notebookcheckによると、AMDとValveはGainsboroughを正式発表しておらず、採用予定の製品も確認されていない。また、TechPowerUpとNotebookcheckが取り上げているのは同じOpenBenchmarkingの試験記録であり、両誌の報道によって独立した検証が行われたわけではない点にも注意が必要だ。

CPUとメモリ容量は50%増、転送レートの伸びはモデルによって異なる

Valveの公式仕様によると、Steam DeckのLCD版とOLED版はいずれもZen 2アーキテクチャの4コア8スレッドCPUを採用し、メモリ容量も16GBで共通している。一方、メモリの転送レートはLCD版が5500 MT/s、OLED版が6400 MT/sと異なる。このため、Gainsboroughの報道値と比較する際には、どちらのモデルを基準にするかによって増加率が変わる点を押さえておく必要がある。

項目 Steam Deck LCD(公式仕様) Steam Deck OLED(公式仕様) Gainsborough(報道値)
CPUコア数/スレッド数 4コア/8スレッド 4コア/8スレッド 6コア/12スレッド
メモリ容量 16GB 16GB 24GB
メモリ転送レート 5500 MT/s 6400 MT/s 9600 MT/s
APUの電力 4〜15W 4〜15W 未確認

現行モデルの数値はValveの公式仕様、Gainsboroughの数値はTechPowerUpとNotebookcheckの報道に基づいている。CPUコア数は4コアから6コア、メモリ容量は16GBから24GBとなり、いずれも50%の増加だ。一方、メモリ転送レートはOLED版の6400 MT/sと比較すると50%増だが、LCD版の5500 MT/sを基準にすれば約74.5%増となる。「従来のSteam Deckから50%増」と一括りにすると、LCD版とOLED版の仕様の違いが見落とされてしまう。

また、メモリ容量と転送レート、帯域幅はそれぞれ異なる指標だ。GBで表される容量は保存できるデータ量を示し、MT/sは1秒あたりのデータ転送回数を表す。一方、単位時間あたりに転送できるデータ量を示すメモリ帯域幅は、転送レートだけでなくメモリバス幅にも左右される。したがって、Gainsboroughのメモリバス幅が確認できない段階で、「メモリ帯域幅が1.5倍になった」と断定することはできない。今回の試験記録から読み取れるのは、あくまでメモリ容量と転送レートの報道値である。

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FurMarkのスコアは現行Steam Deckに近いが、描画条件が異なる

TechPowerUpが紹介したGPU負荷テスト「FurMark」の結果では、Gainsboroughが3508点、比較対象のSteam Deckが3323点だった。単純にスコアを比較するとGainsboroughが約5.6%上回るものの、両者は同じ条件で測定されていない。Gainsboroughの描画解像度は1024×768、Steam Deckは1280×800で、NotebookcheckによるとGainsboroughはウィンドウモードでテストされていたという。

それぞれの解像度から描画画素数を計算すると、Gainsboroughは786,432画素、Steam Deckは1,024,000画素となる。つまり、Gainsboroughは約23.2%少ない画素数でテストされていたことになる。GPUへの描画負荷が異なるため、スコアだけを比較して性能差を判断することはできない。

かといって、画素数の違いを使ってスコアを単純に補正し、同一解像度での性能を推定することも適切ではない。描画負荷は解像度だけで決まるものではなく、両者の電力設定やドライバーなどの条件が一致しているかも確認できていないためだ。さらに、TechPowerUpは比較対象をSteam Deckとだけ記しており、LCD版とOLED版のどちらを使用したのかも明らかにしていない。今回のスコア差を根拠にGainsboroughの性能が期待外れだと評価することも、開発途中だから今後大幅に向上すると予測することも、現時点では難しい。

携帯ゲーム機ではCPUコア数よりも消費電力あたりの性能が重要

Steam Deck OLEDの公式仕様では、APUの動作電力は4〜15Wとされている。携帯ゲーム機では、CPUコア数や最大性能だけでなく、限られた電力の範囲内でどれだけ快適にゲームを動かせるかが重要になる。しかし、今回報じられたGainsboroughの試験記録からは、現行Steam Deckと同じ電力条件で動作していたかどうかを確認できない。そのため、6コア12スレッドという構成だけで、現行モデルに対する性能や電力効率の向上を評価することはできない。

CPUコア数が50%増えても、ゲームの処理性能が同じ割合で向上するとは限らない。ゲーム側が追加されたコアを十分に活用できなければ、その効果は限定的になる。また、性能の制約がGPUやメモリにある場合、CPUコア数を増やしてもフレームレートの向上につながらない可能性がある。これはGainsboroughの性能向上を否定するものではなく、CPUコア数の増加と実際のゲーム性能の向上は分けて評価する必要があるということだ。

バッテリー駆動時間についても、APUの構成やベンチマークスコアだけから予測することは難しい。実際のゲームを同じ電力条件で動作させた際の性能に加え、冷却機構や筐体設計、バッテリー容量などを含めた製品全体での検証が必要になる。今回の試験結果は、開発用サンプルの構成や動作状況を知る手掛かりにはなるものの、完成した携帯ゲーム機でどの程度の性能やバッテリー駆動時間が得られるかを示すものではない。

Gainsboroughが次期Steam Deckの性能を判断する材料となるには、まずValveによる採用の確認が必要だ。そのうえで、現行モデルと解像度や描画設定、消費電力などの条件をそろえた実ゲームでの比較が求められる。今回報じられたCPUコア数とメモリ容量の増加が、実際のゲーム体験や電力効率の改善にどこまで結び付くのかが、今後の注目点となる。