Googleは2026年10月28日、公式ブログで、質問を重ねながらAIの回答を得る検索機能「AIモード」の広告を、米国外の10カ国へ拡大すると発表した。米国では、最初の質問に続く追加質問にも広告を表示し始める。今回の海外展開は英語が対象で、日本は含まれていない。
同日発表の決算では、検索関連売上は増えたものの、前年同期比の伸び率はQ2の約17%からQ3の約12%へ鈍化した。一方、Googleは検索件数の伸び率が過去5年で最高だったと説明しており、増える対話を既存の広告につなぐ仕組みと、その成果を広告主がどこまで確かめられるかが問われる。
海外10カ国と米国の追加質問広告
Googleの発表とGoogle Adsヘルプによると、米国外で新たにAIモード広告の対象となるのは、下表の10カ国だ。現時点での対応言語は英語で、パキスタンではテキスト広告だけを配信する。日本は対象一覧に含まれていない。
| 新規対象国 | 新規対象国 |
|---|---|
| 豪州 | カナダ |
| インド | ケニア |
| マレーシア | ニュージーランド |
| ナイジェリア | パキスタン(テキスト広告のみ) |
| フィリピン | シンガポール |
米国で始まる追加質問への広告表示は、海外10カ国への展開とは別の変更である。利用者が最初の回答を受けて質問を重ねた場面にも、広告を表示する機会が広がる。海外の新規対象国でも同じ変更が一斉に始まるという発表ではない。
Googleは2026年Q4に、ブラジル、メキシコ、英国などへ対象を広げる計画も示した。ただし、予定国への導入完了日や全ユーザーへの展開時期、広告の表示頻度は明らかにしていない。単に「世界展開」と捉えるのではなく、対象となる国や言語、対話のどの段階に広告が表示されるのかを区別する必要がある。
検索件数が伸びても、検索売上の伸びは鈍化
Alphabetの2026年Q3決算資料によると、7〜9月期の「Google Search & other」、すなわち検索関連売上は633億5000万ドルだった。前年同期の565億6700万ドルから約12%増えている。一方、Q2決算資料では、検索関連売上は632億7100万ドルで、前年同期の541億9000万ドルに対して約17%増だった。つまり、今回鈍化したのは各四半期の前年同期比の増収率であり、売上そのものが減ったわけではない。
検索関連より範囲が広い広告全体の集計「Google advertising」でも、前年同期比の増収率はQ2の約14.4%からQ3の約10.6%へ低下した。検索関連売上とは集計範囲が異なるものの、広告事業の成長ペースが前四半期より鈍っている点は共通している。
一方、利用量については異なる傾向が示されている。Sundar Pichai CEOは決算に関する説明で、検索件数の前年比の伸び率が過去5年で最高になったと述べた。AIモードへの質問は平均で従来検索の3倍の長さになり、世界のAIモード検索の5分の1では音声、画像、文書が使われているという。短い語句を入力する従来の検索から、事情を詳しく伝えて相談する検索へと利用形態が広がるなか、広告を結びつけられる場面も増えている。
ただし、検索件数の具体的な増加率や総数は公表されていない。そのため、検索関連売上を検索件数で割り、1回の検索が生み出す収益の変化を推計することはできない。検索が増えたという説明だけでは、広告の表示回数や単価、購入につながる割合も分からない。
全社の好調さを、そのままAI検索広告の成果と捉えることもできない。Q3のAlphabet全体の売上は前年同期比約25%増の1275億7700万ドルで、Google Cloudは約103%増の307億900万ドルだった。検索関連とCloudが全社の増収にどれほど貢献したのかを、同じ決算資料の数値から計算すると次のようになる。
| 項目 | 前年同期売上 | 2026年Q3売上 | 前年同期からの増収額 | 全社増収額に占める割合 |
|---|---|---|---|---|
| Alphabet全体 | 1023億4600万ドル | 1275億7700万ドル | 252億3100万ドル | 100% |
| Google Cloud | 151億5700万ドル | 307億900万ドル | 155億5200万ドル | 約61.6% |
| Google Search & other | 565億6700万ドル | 633億5000万ドル | 67億8300万ドル | 約26.9% |
2026年Q3のAlphabet全体の増収額のうち、Google Cloudが約61.6%、Google Search & otherが約26.9%を占める。
計算にはQ3公式決算の2ページ目に掲載された売上表を使用した。原表の百万ドル単位の数値を100で割って億ドルに換算し、各項目の2026年Q3売上から前年同期の売上を引いた。さらに、各部門の増収額を全社の増収額252億3100万ドルで割り、割合を小数第1位に丸めている。Cloudは155億5200万ドル÷252億3100万ドル×100、検索関連は67億8300万ドル÷252億3100万ドル×100となる。
全社の増収額の約6割をCloudが占めるが、これは売上構成比でも、利益への寄与率でもない。Cloudには幅広いGCPサービスやTPUシステム販売などが含まれており、AI検索広告とは別の事業である。また、検索関連売上もAIモードの売上を分離していないため、この表からAI広告単独の収益貢献度や採算を読み取ることはできない。Googleが目指しているのは、利用者がAIモードで対話を重ねるなかで生まれる商用意図を、既存の広告事業に結びつけることだ。
キーワードから回答の文脈へ広がる広告
Google Adsヘルプによると、AIモードへの広告配信には、既存の検索広告、ショッピング広告、Performance Maxのキャンペーンを利用する。関連性があると判断された場合に自動で広告オークションへ参加する仕組みで、専用の予算を新たに用意する必要はない。通常検索と同じオークションを使い、クリック単価や購入などの成果に基づいて入札する。参加のための追加料金はかからないが、広告配信そのものが無料になるわけではない。
広告の選び方は、質問の性質によって二つに分かれる。購入したい商品や利用したいサービスが明確な場合は、質問に直接合う広告を選ぶ。一方、まだ解決策を探している質問では、利用者が入力した言葉に加え、AIの回答内容も手掛かりにする。商品名が質問に含まれていなくても、相談の文脈から適切な広告の候補を見つける仕組みだ。
Googleはその例として、「プールが緑色になったので、どう清掃すればよいか」という相談を挙げている。AIが水質検査やブラシ掃除を案内し、さらに吸引による清掃を勧めた場合、清掃機器や藻の処理キットの広告を表示する可能性がある。これは実際の広告効果を測定した事例ではなく、配信の仕組みを説明するための例示だ。それでも、利用者が入力した語句だけでなく、AIの回答で具体化された解決策も広告の選定に使われるという違いが分かる。
ただし、すべての広告設定が同じように機能するわけではない。AI Maxやショッピング広告、Performance Maxは、質問への直接的な一致と、文脈に基づく広告の照合の両方に対応する。これに対し、キーワードの一致方法が「完全一致」または「フレーズ一致」の場合、広告が選ばれるのは、明確な商用意図を持つ質問に直接一致するときに限られる。幅広く解決策を探す質問に対して、回答の文脈を利用した照合には対応しない。
AIモード向けの新しい広告形式については、以前から試験が進められている。Googleは2026年5月20日のGoogle Marketing Liveに関する発表で、具体的な質問に応じる「Conversational Discovery ads」と、AIモードの推薦リストに関連広告を表示する「Highlighted Answers」をテストしていると明らかにした。ただし、今回の対象国拡大は、これらの新形式がすべて世界で一般提供されたことを意味するものではない。
クリック率の先に残る測定と管理の課題
Googleの発表によると、AIモード内の商品項目では、広告と通常の項目のクリック率が近いという。ただし、根拠となるのは2026年8月20日〜9月3日に米国内で収集したGoogleの内部データだ。比較対象は同じAIモード内の商品項目であり、従来の検索広告との比較ではない。クリック率の実数やサンプル数は示されておらず、購入率や売上、費用対効果も公表されていない。
つまり、AIモード内の商品広告が通常の項目と同程度にクリックされるというGoogleの説明と、広告主に利益をもたらすという評価の間には、まだ隔たりがある。また、米国内の短い期間に得られた商品項目の結果を、海外市場やすべての広告形式に当てはめることもできない。
広告主が配信先を選ぶ際にも制約がある。Google Adsヘルプによると、AIモードや、通常の検索結果にAIの要約を表示する「AIによる概要」だけを配信先に指定する設定はない。逆に、それらだけを除外する設定もなく、実績は既存のキャンペーンや検索語句のレポートにまとめられる。除外キーワードやブランド除外など従来の管理機能は利用できるものの、AI検索への配信を個別に選び、その効果を検証したいという広告主の要望に、現在の設定やレポート機能が十分に応えているとはいえない。
広告に付け加えられる文章についても、広告主がすべて管理できるわけではない。一部の広告には、Geminiが作成する「AIが生成する補足説明」が表示される。これは広告主が用意した見出しや説明文とは別に生成されるもので、広告主自身が作成、編集、承認することはできない。また、この補足説明を表示しないよう設定することもできない。
利用者に対しては、広告に「Sponsored」と表示し、通常の回答と視覚的に区別する。Googleは、広告を購入したことが通常のAI回答に影響することはないとも説明している。ただし、これは同社の説明であり、独立した監査によって確認された結果として扱うことはできない。
Pichai CEOはQ3決算に関する説明で、モバイルへの移行時と同様、まず最良の検索体験を作り、その後に収益化に取り組む方針を示した。しかし、Q3の公式決算資料では、AIモードやAIによる概要だけの売上は開示されておらず、粗利や推論にかかる費用も切り分けられていない。
今後は、広告の配信国数やクリック数の増加だけでなく、広告主がAIとの対話内で表示された広告の成果をどこまで詳しく検証できるか、生成された説明文や配信先をどこまで管理できるかが、収益化の進展を測る重要な判断材料となる。こうした条件が整えば、利用者が解決策を探す過程で表示される広告に、継続して費用を投じる価値があるかを広告主自身が判断しやすくなる。



