ICANNは2026年10月7日、新たな汎用トップレベルドメイン(gTLD)の申請一覧を公開した。公開された統計によると、481の申請者から計1,615件の申請が寄せられており、OpenAIとMetaはともに「.agent」の運営権を求めている。新gTLDの募集は2012年以来で、今回はAI関連の一般的な用語に加え、企業名や製品名を使ったドメインも多数申請された。申請者が目指しているのは、単に一つのWebサイトのアドレスを取得することではない。トップレベルドメイン全体を管理・運営する権利だ。どの企業が運営権を獲得するかだけでなく、そのドメインを誰が、どのような条件で利用できるようになるのかも重要な焦点となる。

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「.agent」に13件の申請、OpenAIとMetaなどが競合

ICANNが10月7日に公開した競合一覧を基に、希望するドメイン名ごとの申請件数を集計すると、「.agent」は13件、「.agi」は7件、「.asi」は5件だった。

「.agent」の申請者には、OpenAIのOPENAI OPCO, LLCやMetaのMeta Registry Holdings LLCに加え、RadixやXYZ.COMなど、ドメイン事業を手がける企業も名を連ねている。

AIサービスを開発する企業と、ドメインの登録・運営を事業とする企業が、同じトップレベルドメインの運営権を争う構図だ。

申請されたドメイン 申請件数 主な申請者
.agent 13 OpenAI、Meta、Radix、XYZ.COM
.agi 7 OpenAI、Radix、Zero Gravity Labs
.asi 5 OpenAI、Radix、Link Freedom Group
.mcp 5 OpenAI、Radix、ShortDot

この件数は、ICANNが公開した競合一覧のCSVから、同じ文字列に対する申請IDを数えたものだ。公開申請一覧のCSVでも、申請種別が「New gTLD」となっている項目に限定して照合している。

いずれも10月7日時点での第一希望の申請件数であり、今後の申請取り下げや希望文字列の変更、類似する文字列の評価によって、競合状況が変わる可能性がある。

ここで注意したいのが、第一希望の「主申請」と、あらかじめ提出された第二希望の「代替文字列」の違いだ。

例えば、公開申請一覧で「.asi」を検索すると6件のデータが表示される。しかし、そのうち1件はIpollo Techが提出した代替候補であり、第一希望として申請されているのは5件だ。

また、ICANNの申請公開システム(APS)の統計では、主申請と代替文字列をまとめて1件の申請として集計している。そのため、公開一覧の行数を単純に合計しても、全体の申請件数である1,615件とは一致しない。

今回の1,615件という数字は、新たに承認されたトップレベルドメインの数ではない。

同じ文字列に複数の企業が申請しているほか、審査を通過できない申請が出る可能性もある。

前回の2012年の募集では、1,200以上の新gTLDが導入された。ただし、これは審査を経て実際に導入された数であり、今回の申請件数とは異なる段階の数字である。

「.chatgpt」はブランド専用、「.agent」は一般向けドメイン

OpenAIが提出した15件の主申請のうち、公開一覧でブランド用途に分類されているのは5件だ。

具体的には、「.chatgpt」「.codex」「.gpt」「.oai」「.openai」が該当する。

残る10件には、「.agent」「.agi」「.asi」のほか、「.model」や「.voice」などが含まれている。

Metaも「.facebook」「.instagram」といった自社ブランドに関連するドメインに加え、「.agent」を申請した。

一方、Anthropicが申請したのは「.anthropic」と「.claude」の2件で、いずれもブランド用途に分類されている。

ただし、これらは申請時の分類であり、ブランドTLDとしての適格性が正式に認められたわけではない。

そもそも、今回の申請で各社が取得しようとしているのは、どのような権利なのだろうか。

通常、企業や個人がドメイン名を登録する場合、例えばexample.comであれば、.comの前にあるexampleの部分を取得する。

これに対し、今回の新gTLD申請では、.comに相当するトップレベルドメインそのものの運営権を求めている。

運営権を取得した企業は、そのトップレベルドメインの下に登録されるドメイン名を管理する仕組みを整備し、登録条件などを定める立場になる。

ただし、ブランド名を使ったトップレベルドメインと、一般的な用語を使ったトップレベルドメインでは、登録できる利用者を制限する際のルールが異なる。

ICANNの申請ガイド第3.1.7節では、一般的な商品やサービスの名称を表すgTLDについて、運営者とその関連会社だけが登録できるようにする「一般語の独占利用」を禁止している。

申請者は、こうした独占的な運営を意図していないことを確認する必要がある。

一方、ブランドTLDでは、運営企業やその関連会社、商標の使用許諾を受けた企業などに登録者を限定できる。

つまり、OpenAIが「.agent」の運営権を獲得したとしても、「.chatgpt」と同じように、自社グループだけが利用できるドメインとして独占できるわけではない。

ただし、一般語の独占利用が禁止されているからといって、誰でも無条件に登録できるとは限らない。

具体的な登録資格や利用条件は、各申請者の運営計画や、最終的にICANNと締結する契約によって決まる。

ドメインの販売方法にもルールがある。

申請ガイド第2.10節によると、利用者によるドメイン名の登録は、原則としてICANN認定の登録事業者(レジストラ)を通じて行われる。

トップレベルドメインの運営者(レジストリ)は、ICANNから行動規範の適用免除を受けている場合を除き、所定の契約条件を満たす登録事業者に対して、差別のない条件でサービスを提供する義務を負う。

ただし、登録事業者には、そのトップレベルドメインを必ず販売しなければならないという義務はない。

したがって、運営権を獲得しても、それだけで利用者が新しいドメインを購入できるようになるわけではない。実際に登録できるようにするには、販売を担う登録事業者との連携も必要になる。

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申請料は1件22万7,000ドル、競合企業同士の私的な取引は禁止

2026年の新gTLD募集では、基本評価料が1申請につき22万7,000米ドルに設定されている。

ただし、支援プログラムの対象となる申請者や、一定の異体字ドメインの申請には例外がある。また、追加の評価が必要になった場合は、別途費用が発生することもある。

この22万7,000ドルは、ICANNが申請内容を審査・評価するための料金だ。同じドメインを希望する企業同士の競争で必要になる落札額や、一般利用者がドメイン名を登録する際の料金とは異なる。

トップレベルドメインの運営を開始した後の維持費も、別に負担する必要がある。

では、「.agent」のように複数の企業が同じ文字列を申請した場合、運営権はどのように決まるのだろうか。

ICANNは、競合を解消する手段として、コミュニティ優先評価や正式な新gTLDオークションを用意している。

コミュニティ優先評価は、特定のコミュニティを対象とする申請について、そのコミュニティとの関係や公益性などを審査し、優先的に扱うかどうかを判断する仕組みだ。

こうした手続きでも競合が解消されない場合は、最終手段としてオークションが行われる。

今回の制度で特に注目されるのが、競合する申請者同士が、私的な取引によって申請を取り下げさせる行為を禁止していることだ。

申請ガイド第5.2.3節では、私的なオークションや、競合解消を目的とした共同事業などを認めていない。

競合相手に申請を取り下げてもらう見返りとして、金銭やその他の経済的利益を提供する交渉も禁止されている。

つまり、競合企業に資金を支払って申請を撤回してもらうといった方法で、運営権を獲得することはできない。

正式なオークションでは、価格を段階的に引き上げ、参加者が順次退出していく方式が採用される。

最終的に残った申請者が落札者となり、原則として2番目に高い入札額に相当する金額を支払う。

同じ文字列を巡る直接的な競合では、最終的に一つの申請が次の手続きへ進む資格を得ることになる。

ただし、オークションで勝利すれば、その時点でトップレベルドメインの運営が認められるわけではない。

その後も申請者や申請内容に関する評価を通過し、ICANNとの契約を締結する必要がある。

資金力によって競合を制したとしても、ドメイン運営者として求められる条件を満たさなければならない。

既存の「.ai」と、新たに申請された「.agent」は制度が異なる

AI関連のドメインとしては、すでに「.ai」が広く利用されている。

しかし、「.ai」と今回申請された「.agent」や「.agi」では、制度上の位置づけが異なる。

IANAの委任記録によると、「.ai」はカリブ海に位置する英領アンギラの国別トップレベルドメイン(ccTLD)だ。

文字列が人工知能(AI)を連想させることから、AI関連企業やサービスでも使われているが、もともとは特定の国・地域に割り当てられたドメインである。

そのため、今回の新gTLD募集で「.ai」の運営権が改めて割り当てられるわけではない。

一方、「.agent」や「.agi」は、新たな汎用トップレベルドメインとして審査を受ける候補だ。

仮にこれらが正式に導入されれば、AI関連のサービスを開発する企業や個人にとって、ドメイン名の選択肢が増える可能性がある。

例えば、AIエージェントを提供するサービスが「.agent」を使うことで、ドメイン名そのものからサービスの分野を伝えやすくなるかもしれない。

ただし、実際に利用できるようになるかどうかは、各申請が審査を通過し、トップレベルドメインとして正式に委任されるかにかかっている。

登録資格や料金なども、現時点では確定していない。

また、「.agent」や「.agi」への申請が多いからといって、既存の「.ai」から利用者が移行すると判断することもできない。

ドメイン名を選ぶ際には、文字列の分かりやすさや短さだけでなく、登録料金、更新費用、利用条件、長期的に使い続けられるかどうかなども重要になる。

新しいトップレベルドメインの価値は、実際の登録条件が明らかになってから判断する必要がある。

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11月17日に申請内容が確定、実際の利用開始はさらに先

ICANNの新gTLD募集は、申請一覧の公開によって次の段階へ進んだ。

申請者は10月8日から21日まで、事前に提出した代替文字列へ申請内容を切り替えられる。

ただし、代替候補が他の申請者の第一希望や代替候補と同一の場合、その文字列には変更できない。

今回の申請一覧公開は、各社が競合相手を確認し、第一希望を維持するか、第二希望へ切り替えるかを判断する機会にもなっている。

今後の主な日程は次の通りだ。

日程 主な手続き
2026年10月7日 申請者と申請文字列の公開
2026年10月8〜21日 条件を満たす代替文字列への変更期間
2026年11月17日 申請文字列の確定、競合グループの更新、意見・異議申し立ての受付開始
2027年3月16日 意見・異議申し立ての受付終了
2027年前半(予定) 文字列評価を経た申請の処理順を決める抽選

これらの日程は、ICANNが9月29日に発表したスケジュールに基づく。

文字列の評価には約180日を見込んでおり、その後の申請者・申請内容の評価や競合解消手続きの開始日は、今後確定する予定だ。

また、ICANNの申請公開システムに掲載された一覧は、11月17日の文字列確定日までは更新されない。

したがって、公開一覧を確認する際には、その時点で行われた申請の取り下げや代替文字列への変更が、すぐに反映されるわけではない点に注意が必要だ。

申請ガイドでは、今回の募集全体について、審査から契約締結、トップレベルドメインの委任までの手続きを2030年6月ごろまでに進める計画が示されている。

ただし、これはすべての新gTLDが2030年6月まで利用できないという意味ではない。個々の申請がどの程度の時間を要するかは、審査や競合の状況によって異なる。

ICANNも10月7日の公式発表で、最終的な申請件数と種類は11月17日に確定すると説明している。

そのため、「.agent」に13件の申請が集まったという事実から、実際の提供開始時期を予測することはできない。

今回の申請一覧からは、OpenAIやMetaなどのAI企業が、自社のブランド名だけでなく、AI業界を象徴する一般的な用語のドメインにも関心を示していることが分かる。

ただし、「.agi」というトップレベルドメインが導入されたとしても、それが汎用人工知能(AGI)の実現を認定するものではない。

今後注目すべきなのは、11月17日の確定後にどの申請が残り、最終的に誰が運営権を獲得するのかという点だ。

さらに、運営企業がどのような登録資格や利用条件を設定し、いくらでドメイン名を提供するのかも重要になる。

新gTLDの申請は、AI企業がインターネット上の新たな名前空間を確保しようとする動きでもある。しかし、その名前空間が幅広い利用者に開かれるのか、利用条件の厳しいものになるのかは、今後の審査と運営方針によって決まる。

申請件数だけで各ドメインの将来性を判断するのではなく、実際に登録できる条件が整い、サービスとして提供されるまでの動向を見極める必要がある。