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DNA検査大手23andMe、破産申請と売却へ:データ侵害とビジネスモデルの失敗が要因

Y Kobayashi

2025年3月25日

米国の遺伝子検査企業23andMe米連邦破産法11条を申請し、同時にCEOのAnne Wojcicki氏が辞任した。かつて60億ドルの企業価値を誇った同社は、大規模データ侵害や収益モデル確立の失敗により経営難に陥り、裁判所監督下での資産売却を目指している。

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23andMeの破産申請の詳細と経営陣の変更

23andMeは2024年3月にミズーリ州連邦裁判所に米連邦破産法11条に基づく破産保護を申請した破産申請文書[PDF]によると、同社は1億ドルから5億ドルの資産と同程度の負債を抱えている。特別委員会の議長Mark Jensen氏は「戦略的代替案を徹底的に評価した結果、裁判所監督下での売却プロセスが事業価値を最大化する最善の道である」と声明で述べている。

共同創業者であるAnne Wojcicki氏はCEO職を即時辞任したが、取締役会メンバーとしては残留する。「多くの成功を収めてきたが、今日の課題に対しても同様に責任を負う」とWojcickiはX(旧Twitter)への投稿で述べた米証券取引委員会への提出書類[PDF]によると、最高財務責任者(CFO)のJoseph Selsavage氏が暫定CEOに就任している。

注目すべきは、Wojcicki氏が独立入札者として会社の買収を追求する意向を表明していることだ。「私の入札が却下されたことは残念だが、会社を支持しており、入札者になるつもりだ」と彼女は述べている。特別委員会は彼女による会社の非公開化提案を複数回却下していた。

財政難の背景と事業モデルの限界

23andMeは2006年に設立され、200ドル以下の郵送式唾液検査キットで顧客の遺伝的祖先や健康関連特性を分析するサービスで知られていた。2021年に特別買収目的会社(SPAC)を通じて上場した際、評価額は約35億ドルに達し、最盛期には60億ドルを超えた。

しかし現在、同社の市場価値は約2500万ドルから5000万ドル程度に激減し、株価は過去最高値の320ドル超から1ドル未満にまで暴落した。この急激な下落の背景には複数の要因がある。

主要な問題の一つは、同社のビジネスモデルだ。多くの顧客にとってDNA検査は「一回限り」の体験であり、継続的な収益を生み出すサービスへの移行に失敗した。また、遺伝子チップの汎用化により多くの競合企業が市場に参入し、一部の競合は系図を公的記録にリンクさせるなどより強力な背景を持っていた。

同社は最近、遺伝子データに基づいた食事や運動計画の開発に注力していたが、収益化には不十分だった。2024年11月には40%(約200人)の従業員を解雇し、研究プログラムを停止するなど、コスト削減に取り組んでいた。

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データ侵害と顧客情報に関する懸念

23andMeの財政難を加速させた要因として、2023年に発生した大規模なデータ侵害がある。この侵害は4月から5ヶ月間続き、約700万人の顧客情報が影響を受けた

特に深刻だったのは、「DNA Relatives」機能を使用していた約550万人のユーザーデータが漏洩し、名前、生年、位置情報、写真、健康情報、遺伝的祖先の結果などが含まれていたことだ。さらに140万人のユーザーの家系図データも流出した。ハッカーは顧客の古いパスワードを使用してデータにアクセスしたとされている。

23andMeは規制当局への提出書類で、2023年のデータ侵害に関連する請求の和解のために約3750万ドルを支払うことに合意したと述べている。この訴訟は9月に3000万ドルで和解したという情報もある。

破産申請を受け、カリフォルニア州司法長官Rob Bontaは州民に対して、23andMeのWebサイトから遺伝子情報を削除するよう勧告した。「23andMeの報告された財政的苦境を考慮し、カリフォルニア州民に権利を行使し、23andMeにデータの削除と会社が保有する遺伝物質のサンプルの破棄を指示することを検討するよう促す」と述べている。

顧客データの行方と今後の見通し

破産手続きにより、1500万人に及ぶ顧客の遺伝子データの行方が懸念されている。会社の主要資産である膨大な遺伝子データが、どのような買い手に渡るのかという不安が広がっている。

米国では遺伝情報差別禁止法(Genetic Information Nondiscrimination Act)により、健康保険決定や雇用における遺伝情報の使用は制限されている。しかし、その他の用途については法的に許可される可能性があり、海外の顧客はさらに少ない保護しか受けられない可能性がある。

23andMeは声明で、破産手続き中も「通常通りに事業を運営する」意向であり、顧客データの保存、保護、管理方法に変更はないと述べている。顧客のデータへのアクセスやサブスクリプションも影響を受けないとしている。

裁判所が資産売却計画を承認すれば、45日間のプロセスで「適格な入札」を募集する予定だ。Wojcicki氏が独立入札者として会社の買収を成功させるか、あるいは別の買い手が現れるかは不透明だが、いずれにせよ23andMeの運命と顧客の遺伝子データの行方は今後数ヶ月で決まることになる。


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