韓国の半導体輸出で、重さと売上が反対方向へ動き始めている。輸出貨物の重量は前年を下回る月が続く一方、輸出額はAI向けメモリの価格上昇と製品ミックスの変化で過去最高圏へ伸びた。輸出重量の拡大ではなく、限られた生産能力を高帯域幅メモリ(HBM)やサーバー向けDDR5へ振り向けることで、同じ重量から得られる輸出価値が跳ね上がっている。
韓国産業通商資源部(MOTIR)によると、2026年5月の韓国輸出は前年同月比53.2%増の878億ドルとなり、月間として過去最高を記録した。半導体輸出は169.4%増の372億ドルで、3カ月連続で300億ドルを超えた。内訳ではDRAMが369.8%増の186億ドル、NANDが206.8%増の17億ドルに達しており、メモリの価格と需要が輸出全体を押し上げた形だ。
この伸びは、単純な出荷量拡大では説明しにくい。韓国貿易協会(KITA)のK-statでは、2026年4月の半導体輸出重量は324万2122kgで、前年同月比11.9%減だった。2月は5.3%減、3月も5.5%減で、重量ベースでは減少が続いていた。ところが同じ4月の半導体輸出額は、Seoul Economic Dailyの集計で318億9536万ドル、前年同月比173.5%増だった。重量が1割以上減っても、輸出額は2.7倍超に膨らんだことになる。
輸出統計は「量」より「中身」を映し始めた
重量と金額のずれは、韓国半導体輸出の中心がメモリであることから生じている。Seoul Economic Dailyは、韓国の半導体輸出に占めるメモリの比率を約75%、システム半導体を約20%、ウェハーや部品を約5%と説明している。メモリ価格が動けば、韓国の半導体輸出統計はその影響を強く受ける。
4月の数字を重量当たりで見ると、変化はさらに明確になる。Seoul Economic Dailyによれば、2025年4月の半導体輸出額は1トン当たり316万ドルだったが、2026年4月には983万ドルへ上がった。1年で約3.1倍である。貨物としての重さは減っても、輸出される中身が高単価品へ寄れば、貿易統計の見え方は大きく変わる。
その象徴がサーバー向けDDR5だ。同紙は、DDR5 16Gb(4800/5600)の固定取引価格が最近42ドルに達し、1年前の6ドルから7倍になったと報じた。1個当たりの重量を約0.2gと置くと、1g当たりの価値は31万5000ウォンとなり、純金1gの約22万ウォンを上回る計算になる。これは公式統計そのものではなく市場価格を使った試算だが、なぜ軽いチップが輸出額を押し上げるのかを直感的に示している。
MOTIRの5月発表でも、半導体を除く輸出は16.0%増にとどまった一方、半導体だけは169.4%増だった。コンピューター輸出も290.7%増の42億ドルとなっており、SSDなど周辺分野にもメモリ需要の波が及んでいる。韓国の5月貿易黒字は270億ドルで、輸出全体の強さはマクロ統計にも表れたが、今回の中心は広い景気回復というより、メモリの単価と配分が輸出構造を変えている点にある。
HBMとDDR5が生産能力の使い道を変える
AIサーバー向け需要は、メモリメーカーに生産能力の使い方を選び直させている。HBMはGPUやAIアクセラレーターの近くに多数のDRAMダイを積層して配置するため、通常のDRAMよりウェハー消費が重い。Seoul Economic Dailyは、HBMのウェハー消費量を一般的なDRAMの約3倍とし、メーカーが限られた生産能力を高収益品へ振り向けていると説明している。
この配分変更は、輸出重量を押し下げる方向にも働く。旧世代の汎用DDR4を多く出荷するより、HBM3EやDDR5を組み合わせた方が、チップの個数や総重量は減っても売上は大きくなる。重量統計だけを見ると「半導体の出荷が弱い」と読めてしまうが、実際には需要不足ではなく、供給制約の中で高単価品を優先する動きが表れている。
TrendForceの別調査も、この構造を裏づける。主要3サプライヤーのDRAMウェハー投入量に占めるHBMの比率は、2025年末に約18%、2026年末に約22%、2027年末に約30%へ上がる見通しだ。ビット供給量の比率では同じ期間に約8%、9%、13%とされており、ウェハー投入に比べてビット供給の割合が小さい。HBMが大きなダイ面積と複雑な実装を必要とするため、同じウェハーから得られる通常DRAMの量を圧迫しやすいことが読み取れる。
焦点は、HBMそのものの価格にとどまらない。TrendForceは、2026年第2四半期に入って2027年向けHBM4供給契約の交渉が進み、HBM4が主流世代になると見ている。一方で、DDR5 64GB RDIMMの収益性がHBMを上回る局面も出ていると分析している。メーカーはAI向けHBMを増やせばよいだけではなく、HBM、RDIMM、従来型DRAMのどこにウェハーを割くかを価格交渉と需要の強さで決める必要がある。
収益急増は韓国メーカーの交渉力にもつながる
この輸出構造は、Samsung ElectronicsとSK hynixの収益環境にも直結する。韓国の半導体輸出は両社のメモリ事業に大きく依存しており、AIサーバー向けの高付加価値メモリへ配分を寄せられるほど、国全体の輸出額も押し上げられる。5月のDRAM輸出が186億ドルへ膨らんだことは、メモリ価格の回復だけでなく、AIインフラ投資が韓国の貿易収支へ直接流れ込んでいることを示す。
MOTIRの地域別統計では、5月の対中輸出が80.9%増の189億ドル、対米輸出が59.1%増の160億ドル、対ASEAN輸出が58.4%増の159億ドルだった。半導体は国・地域別の個別内訳までこの発表だけで分解できないが、メモリ需要の回復が特定市場だけではなく広い輸出先の伸びと同時に起きている点は大きい。AIサーバー、データセンター、SSD、PC・サーバー更新需要が重なれば、韓国の輸出統計は引き続きメモリ価格に敏感になる。
ただし、輸出額の急増をそのまま安定成長と読むには早い。価格上昇と供給制約が同時に起きている局面では、メーカーの利益率は改善しやすいが、顧客側には調達コストの上昇が及ぶ。TrendForceは、HBM世代の進化とダイサイズ拡大、需要増によって、2027年には従来型DRAMの供給を押しのける効果がさらに強まると見ている。これは韓国メーカーに価格交渉力を与える一方、AIサーバーや企業向けメモリの調達競争を長引かせる要因にもなる。
6月序盤の数字は勢いの継続を示す
6月に入っても、半導体輸出の強さは続いている。Maeil Business Newspaperが韓国関税庁のデータとして伝えたところによると、2026年6月1日から10日までの韓国輸出額は286億ドルで、前年同期比85.9%増だった。過去最高だった4月の252億ドルを上回る水準だ。同期間の半導体輸出は110億6800万ドルで前年同期比205.8%増、前月同期間比でも約30%増えた。全輸出に占める半導体の比率は38.7%に達している。
地域別にも強い。6月1日から10日までの輸出は、中国向けが101.4%増、米国向けが54.4%増、ベトナム向けが102.9%増、EU向けが46%増、台湾向けが134%増だった。10日間の速報値は月全体の結果を保証するものではないが、序盤時点では5月からの勢いが続いている。
次に見るべきなのは、重量減と金額増の組み合わせがどこまで続くかだ。HBMとDDR5への配分が進むほど、韓国半導体輸出は「何トン出したか」より「どのメモリをどの価格で出したか」に左右される。供給制約が緩めば価格上昇の勢いは変わるが、AI向けメモリの要求容量は2026年から2027年にかけてさらに増える。韓国の輸出統計は、メモリ市場の需給とAIインフラ投資の強さを映す先行指標になりつつある。