Intelの次期デスクトップCPU「Nova Lake-S」に、12基のXe3Pコアを備えた統合GPU(iGPU)向けとして65W級の電力供給設計区分を設けるとの暫定情報が出た。Intel製品の情報を継続的に発信するJaykihn氏によると、フルグラフィックス性能を得るにはVCCGTを2フェーズ必要とし、Nova Lake-Sではこの構成だけが該当するという。

65WはiGPUの実測消費電力でも、CPUパッケージ全体のTDPでもない。今回示されたのは、マザーボードがグラフィックス用電源レールへ供給できる能力の区分である。情報が製品版に残れば、同じNova Lake-S対応をうたう基板でも、iGPUのフル性能に対応できるかどうかが分かれる。

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12 Xe3Pと65W級、4月から7月に増えた情報

Jaykihn氏は2026年4月13日、4基のPコア、8基のEコア、4基のLP-Eコアに12基のXe3Pコアを組み合わせたデスクトップSKUを示し、VCCGTを2フェーズ必要とすると投稿した。いずれも「Preliminary」、つまり暫定情報との但し書きが付いていた。

7月28日の投稿は、2フェーズが必要になる理由へ踏み込んだ。Nova Lake-Sの12 Xe SKUは、フルグラフィックス性能を得るために特定の「65W-level PD segment」を必要とし、この区分だけがVCCGTを2フェーズ要求するという。4月時点で見えていた大規模iGPUに、電源供給能力というプラットフォーム側の条件が加わった。

Intelは12 Xe3P版の製品名、コア構成、電力要件を発表していない。一方、同社の2026年6月版「Instruction Set Extensions and Future Features Programming Reference」は、CPUIDの12_01HをNova Lakeのデスクトップ向けハイブリッド・アーキテクチャとして記載し、Coyote Cove PコアとArctic Wolf Eコアにも言及している。Nova Lakeという世代とCPUコアの名称は公式資料に現れたが、12 Xe3Pと65W級電源は未発表情報のままだ。

ここでいうPDは、USB Type-Cの「USB Power Delivery」ではなく、CPUソケット周辺の電力供給を指す。投稿が「full graphics performance」と条件を付けた点も見逃せない。65W級へ届かない基板でCPUそのものが動かないのか、iGPUの上位性能状態だけを使えないのかは示されていない。

65WはiGPUの消費電力なのか

Intelの現行Core Ultra 200S用データシートは、VCCGTをグラフィックス向けの動的SVID電源レール、VCCCOREをIAコア向けの動的SVID電源レールと定義している。つまり、CPUコア群とiGPUはマザーボード上で別の電源系統から供給を受ける。今回の2フェーズという情報は、そのVCCGT側に二つの電力変換経路を用意し、負荷と発熱を分担させる設計を指す。

現行のCore Ultra 200Sでは、多くの125W、65W、35W構成に対してVCCGTの最大電流IccMAXが40Aと定められている。動作電圧範囲の上限は1.52Vだが、この二つは最大値を同時に掛けて実消費電力を求めるための数字ではない。フェーズ当たりの供給能力も、使うパワーステージやインダクター、冷却設計で変わる。

同じデータシートは、IccMAXをストレス用途で見られる最大電流と説明し、電圧レギュレーターが少なくとも10ms維持できることを求める。通常のアプリで流れる電流は、IccMAXより低いIccMAX.Appとして別に定義されている。電源設計値と日常負荷の消費電力は、現行製品でも分けて扱われている。

したがって、リークにある65W級という表現から「iGPUが常時65Wを消費する」「GPUだけで65Wに達する」とは結論できない。基板設計者がフル性能時の負荷変動を受け止めるための供給枠と読むのが妥当だ。最終的な消費電力はGPU周波数と電圧に加え、負荷やIntelが設定する制御値で決まる。

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4 Xeの285K、12 Xeの388H

Intelの現行デスクトップ最上位Core Ultra 9 285Kは、CPU側に24コア、iGPU側に4 Xeコアを持つ。Processor Base Powerは125W、Maximum Turbo Powerは250Wだ。これらはCPUパッケージ全体の電力指標であり、VCCGT専用の上限ではない。Nova Lake-Sの12 Xe3P構成が実在すれば、Xeコア数は現行デスクトップ上位の3倍になる。

12 XeコアのIntel iGPUは、モバイル向けPanther Lakeですでに製品化されている。Core Ultra X9 388HはArc B390に12 Xeコアを備え、4 Pコア、8 Eコア、4 LP-Eコアを組み合わせる。Processor Base Powerは25W、Maximum Turbo Powerは80Wで、後者もCPUパッケージ全体の上限だ。12という規模は既知である。今回の未発表情報で新しいのは、これをソケット型デスクトップへ持ち込み、専用のVCCGT設計をマザーボードへ求める点だ。

IntelはPanther Lakeの発表時、最大12 XeコアのArc GPUについて、自社のリファレンス機による複数ゲームと3DMark Solar Bayの測定で前世代より50%超高速だと説明した。これはXe3Pの性能を保証する比較ではない。それでも、Intelが12 Xe規模のiGPUを製品化し、ドライバを含む実装経験を得ているという先行実績は確認できる。

AMDのデスクトップAPUであるRyzen 7 8700Gも、Radeon 780Mに12基のグラフィックスコアを搭載し、Default TDPは65Wである。ただし、AMDの65Wは8基のCPUコアを含むパッケージ全体のTDPだ。Intelのリークにある65W級VCCGTとは対象範囲が違う。また、Intel XeとAMD Radeonではコアの内部構成が異なるため、同じ「12」から性能の優劣は導けない。

マザーボード対応とメモリ帯域の壁

2フェーズVCCGTが製品要件になれば、マザーボードメーカーは基板設計の初期段階で対応を決める必要がある。電源回路はBIOS更新で追加できない。仮に1フェーズ基板でもCPUを起動できる設計になったとして、GPU周波数を制限するのか、12 Xe3P SKUを非対応にするのかはIntelの正式な電気仕様が出るまで分からない。

フェーズ数だけを見て基板の優劣を決めることもできない。1フェーズ当たりの電流能力、負荷変動への応答、部品温度によって実力は変わる。ただしIntelが2フェーズを必須条件にするなら、強力な1フェーズ回路へ置き換えてよいとは限らない。CPU対応リストに加え、VCCGTの電気仕様を満たすかが製品区分を左右する。

もう一つの条件はメモリである。Core Ultra X9 388HはLPDDR5X-9600、Ryzen 7 8700Gは2チャネルのDDR5-5200に対応する。どちらもiGPUがシステムメモリを使うため、GPUコアを増やして電力を供給しても、帯域が足りなければ演算器を十分に動かせない。Nova Lake-Sの対応メモリ速度とメモリ制御はまだ公表されていない。

65W級VCCGTは、IntelがデスクトップiGPUを表示出力用の小規模回路から、プラットフォーム設計を左右する演算資源へ広げる可能性を示している。正式発表後はCPUの対応表だけで判断せず、各マザーボードのVCCGT対応、GPU負荷時の持続クロックと実消費電力を確かめる必要がある。十分なメモリ帯域まで揃ったとき、12 Xe3PはディスクリートGPUを使わないデスクトップの選択肢を実際に広げられる。