Huaweiが、中国の供給網を使って2027年に半導体用ガラス基板を量産するロードマップを組んだとETNewsが7月27日に報じた。協力メーカーがHuaweiの要求に沿って生産を始め、Ascend AIアクセラレータなどの先端チップへ適用する計画だという。
時期はHuaweiがAscend 960を投入する2027年第4四半期と重なる。しかし、Huaweiが公開しているチップロードマップにガラス基板の記載はなく、Ascend 960への採用は確認されていない。見えてきたのは製品仕様ではなく、AIチップを大きなシステムとして成立させる後工程まで中国企業で固めようとする動きである。
BOEなど4社を束ねる2027年ロードマップ
ETNewsが製造協力先として挙げたのは、BOE、Visionox、Yuntian Semiconductor、AKM Meadvilleの4社である。Huaweiと協力各社は中国国内で材料・装置の供給網を組む一方、韓国の材料・部品・装置企業にも協業を打診しているという。AKM Meadvilleも2025年、TGV技術フォーラムでガラスコアABF基板をテーマに講演すると公式に告知しており、候補企業がガラス基板を追っていること自体は確認できる。
別のETNews記事によると、中国勢はすでに試作品を作る段階にあり、Huaweiが求める性能評価を通過すれば量産へ切り替える考えだ。TGV(ガラス貫通ビア)の形成能力は韓国勢と大差ないとの業界評価も紹介された。一方で、ガラスへ形成した穴を金属で安定して覆うめっきと、加工時に生じる微小亀裂の制御は残っている。
つまり2027年は、発表された完成品の発売日ではない。試験線で作ったサンプルをHuaweiの要求仕様へ合わせ、性能評価と量産認定を経て生産を始める目標年だとETNewsは報じている。Huaweiはこの計画を発表しておらず、投資額や量産契約も確認できない。
Ascend 960と重なる「複数ダイを束ねる」時間軸
Huaweiの公式計画では、Ascend 950DTを2026年第4四半期、Ascend 960を2027年第4四半期、Ascend 970を2028年第4四半期に投入する。原則1年周期で新シリーズを出し、演算性能を倍増させる方針だ。
Ascend 950の構造は、後工程の重要性をよく表している。Huaweiは同じAscend 950ダイに、用途の異なる独自HBMを組み合わせて別々にパッケージする。学習とデコード向けのAscend 950DTは、144GB・4TB/sのHiZQ 2.0を載せ、チップ間接続帯域は2TB/sに達する計画である。Ascend 960では演算性能とメモリ性能を950比で2倍にし、接続ポート数も2倍へ増やす。
この伸ばし方では、ロジックダイだけを速くしてもシステム性能は上がらない。ダイとHBMへ電力を届け、高速信号を短い距離で通し、パッケージの反りを抑えながら実装面積を広げる必要がある。2027年のガラス基板計画が事実なら、Ascend 960世代と時間軸を合わせる合理性はある。ただし、両者を結ぶ製品名や基板構造はまだ出ていない。
Huaweiはチップ単体より、NPUを大規模に接続するSuperPoDを前面に出している。7月17日に公開したAtlas 950 SuperPoDの実機は1024カードで構成され、FP8で1 EFLOPS、FP4で2 EFLOPS、256TBの統一メモリ空間を掲げた。3月のグローバル初披露では、同システムを最大8192 NPUまで拡張できると説明している。ガラス基板が担うのは、このラック間接続ではなく、各NPUとメモリを載せるパッケージ内部の密度と安定性である。
ガラス基板はEUV露光の代わりにはならない
ガラス基板が改善するのは半導体のパッケージであり、シリコンダイの回路を描く前工程ではない。有機基板はパッケージが大きくなるほど熱や製造工程で反りやすく、微細な配線を正確に重ねるのが難しくなる。ガラスは平坦性と寸法安定性を取りやすいため、TGVを高密度に配置し、ロジックチップやHBMをより広い面積で接続できる。
Intelは自社のガラス基板技術について、有機基板に比べてパターン歪みを50%減らし、接続密度を最大10倍にできる可能性があると説明している。初期用途として挙げたのも、AI、データセンター、グラフィックス向けの大型パッケージだ。これらはIntelの技術見通しであり、HuaweiやBOEの製品で測った値ではない。
したがって、ガラス基板を導入してもEUV露光装置の不足は解消しない。Ascendのロジックダイを同じ面積で微細化する技術でもない。狙えるのは、利用できるプロセスで作った複数のダイとメモリを高密度に束ね、電力供給と信号品質を改善することだ。前工程の制約を後工程のシステム設計で補う手段にはなり得るが、置き換えではない。
月1000枚の試験線から量産歩留まりへ
Huawei向け候補に挙がったBOEは、準備段階を会社資料でかなり細かく開示している。同社は2020年に技術調査を始め、2022年には3.9億元を投じてウェハ級の実験設備を整えた。2024年には9.93億元でパネル級試験線へ規模を広げ、2025年に主要設備の搬入と調整を終えている。Huaweiの要求は、5年以上続く投資を特定製品の量産認定へ結び付ける可能性がある。
2026年上期には全自動化設備を通線した。設計能力は月1000枚で、20層の大型サンプルを顧客へ送り、一部は概念実証後の技術試験へ進んでいる。
ただし、月1000枚は試験線の設計能力であり、良品の出荷数ではない。BOEは量産歩留まりに達しておらず、量産売上も始まっていないと明記する。Huaweiの要求が加われば、会社開示で具体的な用途・顧客名が示されなかったBOEの顧客試験が、AIアクセラレータ向けの認定作業につながる可能性がある。報道の最大の変化はここにある。
他国の計画と比べても、Huaweiの「1年先行」が確定したとは言いにくい。Samsung Electro-Mechanicsは世宗のパイロットラインで試作品を作り、公式には合弁会社で2027年以降の量産を計画する。DNPは2025年12月にTGVガラスコア基板のパイロットラインを稼働させ、2026年初頭からサンプルを提供し、2028年度の量産開始を目指している。各社のロードマップは、試作から顧客採用までのどの段階を指すかが違う。
製品名と良品数が出て初めて戦略になる
HuaweiのAI戦略は、Ascendダイと独自HBMを組み合わせ、UnifiedBusでSuperPoDへ接続する方向に進んでいる。ガラス基板は、その中でパッケージの大型化と高密度配線を支える候補になる。だが、現時点で公表されたのはAscend側の製品計画であり、ガラス基板側は報道された量産目標である。
次の確認点は日付より具体的だ。HuaweiがAscend 960などの製品名と基板構造を示すか。BOEなどが試験線の投入枚数ではなく良品数と歩留まりを開示するか。さらに、TGV、めっき、微小亀裂の信頼性評価を通り、量産契約と売上へ進めるかである。2027年にこの三つがそろえば、ガラス基板は中国の研究テーマからHuaweiのAIチップ供給網へ移る。
