Metaは米国時間9月28日、企業向けAI事業「Meta Enterprise Platform」を立ち上げると発表した。個人向けエージェント「Muse」に加え、顧客対応用のMeta Business Agent、開発者向けのMuse APIとMuse Codeを企業へ届ける方針だ。責任者にはMongoDBの社長兼CEOだったChirantan「CJ」Desai氏を迎え、Mark Zuckerberg CEOの直属にすると発表した。顧客対応用のMeta Business Agentと個人向けMuseは、先に発表されている。今回変わったのは、Metaがそれらを一つの企業向け事業として扱うと宣言し、専任の経営幹部を置いたことである。

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既にあるものを、どう束ね直すのか

Metaの企業向けAIは、9月28日に突然現れたわけではない。6月には、WhatsAppやMessengerで顧客の質問に答える「Meta Business Agent」を発表している。商品提案や予約、見込み客の選別に使うと説明し、企業がエージェントを構築・調整して運用する「Meta Business Agent Platform」も同時に紹介した。大規模な企業向けには、エージェントの動作規則を設定する管理機能と効果測定を備えるという。ShopifyやZendeskなど、数百のシステムとの接続も掲げた。ただし、これらはMeta自身による製品説明であり、すべての接続先で同じ機能が動くことを独立に確かめた結果ではない。

6月の説明では、事業者は顧客向けエージェントを無料で使い始められ、今後は有料プランでも提供する方針だった。未読の顧客メッセージを朝にまとめて伝えるなど、事業者自身を助ける機能については、一部企業から提供を始めると区別していた。顧客への自動応答と事業者の業務支援では、当時の提供範囲が違う。

同社は当時、WhatsAppとMessengerで100万を超える企業がMeta Business Agentを利用していると公表した。この数字は既存の顧客対応製品に関するMetaの申告である。新しいMeta Enterprise Platformの契約企業数や導入実績を表す数字ではない。名前が似ている「Meta Business Agent Platform」と「Meta Enterprise Platform」も、前者は顧客対応エージェントを構築・運用する基盤、後者はより広い製品群を企業向けに届ける新事業の名称として、発表文では使い分けられている。

有料化も今回が初めてではない。9月15日発表の「Meta One」では、事業者・クリエイター向けのEssentialにWhatsApp上のMeta Business Agentの利用枠が含まれ、米ドル表示の開始価格は月額14.99ドルだ。Advancedは月額49.99ドルからで、エージェントの応答枠がさらに増える。Expertは149ドルから、Maxは499ドルからとなる。Metaは地域、アプリ、アカウントによって料金や利用できる機能が異なるとも明記した。これらはMeta Oneの料金であって、Meta Enterprise Platform全体の価格表ではない。

一方、9月8日に公表されたMuseは、利用者に代わってウェブや接続先アプリで作業する個人向けエージェントだ。米国でiOS、Android、ウェブ向けに段階的に提供され、利用者ごとの専用仮想マシン「Muse Secure VM」で動くとMetaは説明する。今回の発表は、この個人向け製品も企業向けの候補に挙げた。ただし、個人向けMuseの提供地域や仮想マシンの説明を、そのまま企業向け契約や企業データの保護条件に読み替えることはできない。

こうして見ると、Metaは顧客との会話を自動化する既存事業から、従業員の作業や開発者の利用まで射程を広げようとしている。9月28日の公式発表は「当初」の対象として4つの製品名を挙げるが、それらを共通の管理画面、契約、データ基盤でいつ統合するかは説明していない。現時点で確認できるのは、製品群を企業向けに売り出す方針である。

CEO直属の責任者を置く意味

MetaはDesai氏が「企業向けプラットフォーム責任者」に就き、Zuckerberg氏に直接報告すると発表した。同社によると、Desai氏はMongoDB以前にCloudflareで製品とエンジニアリングを率い、ServiceNowでは社長兼COOなどを務めた。モデルの研究だけでなく、製品を企業の業務へ組み込み、顧客との契約を広げる経験を持つ人材を据えた、というのがMetaの人事の説明である。ただし、役職と経歴から新事業の売上規模や製品の提供時期までは分からない。

人事はMongoDB側にも即日の変更をもたらした。同社の9月28日の発表によると、Desai氏は社長兼CEOを同日付で退任し、前CEOのDev Ittycheria氏が暫定の社長兼CEOに就いた。取締役会は正式な後任を探す。ここは人物を取り違えやすい。Metaへ移るのはDesai氏であり、Ittycheria氏はMongoDBへ経営トップとして戻る。

Desai氏をCEO直属に置く判断は、広告主やメッセージアプリの事業者に提供してきたAIを、企業向けソフトウェアとして売る仕事を経営課題に据えたことを示す。ただし、企業が既存のMeta Business Agentから新事業へ移る際の契約変更や、Muse Codeなどをどのように組み合わせて買えるかは、発表されていない。

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企業がまだ判断できない導入条件

9月28日のMeta Enterprise Platform発表はMuseなど4製品を挙げる一方、プラットフォーム独自の料金、提供開始日、対象地域、企業データの取り扱い条件を示していない。この確認は同日付の公式発表文全体を対象にしたもので、別の製品ページや将来の個別契約に条件が存在しないという意味ではない。Desai氏は企業向け製品の設計時からセキュリティとプライバシーを組み込むと述べたが、保存期間、管理者権限、監査記録、学習利用の扱いなどを企業が確認できる具体的な条項は、この発表文にはない。

ここが購入判断を分ける。Meta Oneの月額料金を見れば、小規模な事業者は既存の顧客対応機能の一部について費用を見積もれる。しかし、Museを社内業務で使い、開発者がAPIやMuse Codeを使う計画には、今回の名称だけでは予算も管理方法も決められない。個人向けMuseの米国での提供開始も、日本の企業が同じ条件で導入できることを意味しない。

Metaは顧客対応、個人エージェント、開発者向けツールを一つの企業向け事業へ結び付けようとしている。その構想が企業の購入可能な製品になるかは、各製品の提供範囲と料金に加え、企業データを誰がどう管理し、どの操作を監査できるかを示せるかで決まる。