Metaが、日本を含む7カ国でByteDanceの広告掲載を禁止した。TikTok自体の宣伝だけでなく、TikTokなどByteDanceのサービスへ誘導する第三者の広告も対象となる。Bloombergが最初に報じ、MetaはReutersの取材に対し、米国時間10月8日から即時適用したことを認めた。
今回の措置では、広告主が競合企業でなくても、誘導先がMetaの競合サービスであれば広告を拒否される。FacebookやInstagramで集客し、TikTokへ利用者を誘導してきた企業やクリエイターにも影響が及ぶ可能性がある。
両社の対立を理解するには、有料広告の掲載制限、SNSアプリ間の連携機能、一般的なウェブリンクの扱いを区別する必要がある。
日本を含む7カ国で禁止、第三者によるTikTokへの誘導広告も対象
今回の措置は、米国、カナダ、日本、エジプトに加え、東南アジアのインドネシア、タイ、ベトナムの計7カ国に適用される。
MetaがReutersに説明した内容によると、禁止対象にはByteDance自身が出稿する広告や有料の宣伝メッセージだけでなく、同社のサービスへリンクする第三者の広告キャンペーンも含まれる。
Metaは、自社のアプリから競合サービスへ利用者を誘導する広告を掲載する義務はないと説明している。競合他社からの広告出稿を断ることは、一般的な商慣行だというのが同社の立場だ。
今回、Metaが禁止理由として挙げたのは、広告内容の危険性ではなく、自社の利用者を競合サービスへ誘導することだった。
これにより、広告を出稿する企業だけでなく、広告のリンク先も確認する必要が生じる。
例えば、第三者がMetaの広告を使い、TikTok上で展開している自社の活動へ利用者を誘導しようとしても、広告主がByteDanceではないという理由で禁止対象から外れるわけではない。広告代理店を変更すれば解決する問題でもない。
誰が広告費を支払うのかだけでなく、広告をクリックした利用者がどのサービスへ移動するのかが、掲載可否を左右することになる。
ただし、今回確認されたのは有料広告に関する措置であり、一般投稿でTikTokに言及したり、リンクを掲載したりすることまで全面的に禁止されたわけではない。
また、広告から自社サイトへ誘導し、そのサイト内にTikTokへのリンクがある場合まで禁止対象に含まれるのかなど、詳細な判断基準は現時点で明らかになっていない。
TikTokへの直接的な誘導と、別のウェブサイトを経由した間接的な紹介が同じように扱われると考えるのは早計だ。
TikTokも他のSNSへのリンク機能を変更、Metaとは制限の対象が異なる
一方、TikTokも他のSNSへ利用者を誘導する機能を変更している。
10月10日時点で確認できる公式ヘルプでは、他のSNSアプリを直接開いたり、ログインしたりするリンク機能のサポートを終了したと説明されている。
ただし、プロフィール欄に他のSNSのウェブサイトへ移動するリンクを追加することは、引き続き可能だ。
Metaの措置は有料広告の掲載を制限するものだが、TikTokの変更はプロフィールから他のSNSアプリへ移動する機能に関するものだ。同じリンクの制限でも、対象となる機能は異なる。
| 利用者の移動経路 | 現時点で確認できる扱い | 制限・変更の対象 |
|---|---|---|
| Metaの広告からByteDanceのサービスへ | 対象7カ国では第三者による広告も禁止 | 有料広告のリンク先 |
| TikTokのプロフィールから他のSNSアプリを開く・ログインする | サポートを終了 | プロフィールのアプリ連携機能 |
| TikTokのプロフィールから他のSNSのウェブサイトへ | 条件を満たせばリンクを追加可能 | プロフィールのウェブリンク |
Metaによる10月8日の説明と、10月10日時点のTikTok公式ヘルプに基づく比較。TikTokの機能変更の開始日は、公式ヘルプには記載されていない。
TikTokのプロフィールにウェブサイトへのリンクを追加できるのは、フォロワーが1,000人以上いるか、認証済みのビジネスアカウントを持っている場合だ。
そのため、クリエイターがTikTokからInstagramなどへ視聴者を誘導する手段が、すべて失われたわけではない。ただし、従来のアプリ連携機能を前提とした案内は見直す必要がある。
Metaへの広告出稿が認められるかどうかと、TikTokのプロフィールにどのようなリンクを設定できるかは、それぞれ別の条件で判断することになる。
また、米国でTikTokの運営体制が変更されたことも、広告をめぐる競争とは分けて考える必要がある。
1月23日の公式発表によると、米国側が過半数の持分を保有するTikTok USDS Joint Venture LLCでは、ByteDanceの出資比率は19.9%となっている。
この合弁会社が米国のデータやアプリの保護を担う一方、TikTok globalの米国法人は広告や電子商取引などの商業活動を担当する。
米国におけるデータ保護体制が再編されたからといって、ByteDanceとの商業上の競争までなくなったわけではない。
未成年者保護をめぐる対立、Meta自身の競争条件にも関係
Metaは、未成年者を保護するための対策について、TikTokとYouTubeにも同様の取り組みを求めている。
その背景にあるのが、8月26日に公表された、米国の州・地域などの司法長官との和解だ。
Metaの公式説明によると、この和解では、競合他社が対策に参加するかどうかによって、Metaが実施する利用制限の期間や条件も変わる仕組みになっている。
Metaの和解条件には、競合他社の参加状況に応じて、利用制限の内容や支払額の一部が変わる規定が設けられている。
| Metaの約束・支払い | 当初の条件 | 競合他社の参加などによる変更 |
|---|---|---|
| 利用時間制限と夜間利用制限の実施期間 | 5年間 | 競合他社が合意に加われば10年間 |
| 夜間の利用制限 | 午前0時〜6時 | 午後10時〜午前7時に拡大 |
| 和解に伴う支払い | 約180億ドルのうち、約70%に当たる約127億ドルを10年間で分割払い | 残り約30%の約53億ドルは、TikTokとYouTubeによる対策の実施と支払いを条件に拠出 |
Metaが8月27日に更新した公式説明に基づく比較。残り約53億ドルの拠出条件には、TikTokとYouTubeによる利用時間制限や年齢確認などの導入に加え、対応する金額の支払いも含まれる。夜間・利用時間の制限は、和解に参加する米国の州・地域の未成年者が対象で、ダイレクトメッセージは除外される。
こうした条件からは、Metaが競合他社にも未成年者保護への参加を求める理由が見えてくる。
Metaだけが利用時間を制限しても、利用者がTikTokやYouTubeなど別のサービスへ移れば、対策の効果は限定的になる。
Meta自身も、あるアプリで利用を制限された未成年者は別のアプリへ移る可能性があるとして、業界全体で共通の対策を導入するよう求めている。
未成年者保護の観点から対策を統一することは、各社が利用者の可処分時間を奪い合う競争において、条件をそろえることにもつながる。
Axiosは9月11日、TikTokがMetaとの和解への参加をTikTok側に促す広告について、政治的な内容に当たるとして掲載を拒否したと報じた。
TikTokの広告ポリシーでは、有料の政治広告が禁止されており、司法・行政上の決定を支持または反対する広告も対象に含まれている。
ただし、こうした一般的な規則が存在するからといって、個別の広告掲載を拒否した判断が妥当だったと結論づけることはできない。
報道によると、TikTokが広告掲載を拒否した理由は政治的な内容であることだった。一方、Metaが今回の措置で示した理由は、競合サービスへの利用者の誘導だ。
どちらも広告掲載を拒否したという点では共通するが、その根拠は異なる。
未成年者保護をめぐる和解問題は、両社の対立を理解するうえで重要な背景となる。しかし、今回の広告禁止がTikTokへの報復として実施された、あるいは和解によって義務付けられたと断定できる証拠はない。
日本でも問われる広告禁止の範囲と、広告主への説明責任
日本では、FacebookとInstagramの広告事業も、デジタルプラットフォーム取引透明化法の対象となっている。
経済産業省が公表した評価対象一覧には、Meta Platforms, Inc.が掲載されており、FacebookとInstagramへの広告表示が対象サービスとして明記されている。
同省の制度に関する説明によると、対象事業者には、サービス提供条件を変更する際の内容や理由の事前通知、サービスの提供を拒否する場合の内容や理由の開示などが求められる。
また、苦情や紛争に対応するための体制整備も必要とされている。
ただし、理由の通知などには例外を定める規則もあるため、この法律の対象になっているというだけで、今回のMetaの措置が違法だと判断することはできない。
一方、広告を出稿する第三者にとっては、Metaが「競合他社には広告枠を提供しない」と説明するだけでは、具体的な対応を判断しにくい。
例えば、自社のTikTokアカウントへ利用者を誘導する広告が禁止されるのか、どの国や地域への配信が対象になるのかが分からなければ、広告キャンペーンを適切に見直すことは難しい。
広告の掲載を拒否された際に、その理由を確認できることや、誤って禁止対象と判断された場合に異議を申し立てられることも重要になる。
現時点では、Metaが広告主にどのような事前案内を行ったのか、個々の広告をどのような基準で審査しているのかは確認できていない。
国ごとの適用条件や間接的なリンクの扱いが明確になれば、広告主は停止すべきキャンペーンと継続可能なキャンペーンを区別しやすくなる。
今回の措置によって、Metaは自社の広告サービスから競合へ利用者を誘導することを制限した。しかし、その制限が競合企業以外の広告主にも及ぶ以上、どこまでを禁止対象とし、どのような理由で掲載を拒否するのかを明確にする必要がある。
競合サービスへの誘導を制限するというMetaの判断が、第三者の広告活動にどこまで影響するのか。そして、その判断基準や異議申し立ての仕組みが広告主に十分説明されるのかが、今後の焦点となる。



