OpenAIでChatGPTのコンシューマー製品を統括するAdam Fryは2026年11月2日、ChatGPTでWeb検索を伴う問い合わせの件数が、Google検索の約5分の1に達したと明らかにした。Googleが公表した年間5兆回超という検索回数を基準にすると、1日あたり少なくとも約27億4000万回に相当する。これは、2025年7月時点でOpenAIが公表したChatGPT個人向けプランの全メッセージ数、1日25億件超に匹敵する規模だ。

ただし、Fryは比較に用いたGoogleの検索回数の出典や、ChatGPT側の具体的な件数を明らかにしていない。ChatGPTの利用が急速に拡大していることは確かだが、今回の「20%」は検索市場におけるシェアを意味するものではなく、現時点ではOpenAI自身の申告にとどまる。Googleの公式データや外部調査と比較すると、検索の定義や集計時点によって推計結果が大きく変わることが分かる。

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OpenAIが語る「Googleの5分の1」、比較に使ったデータは非公開

11月2日、ニューヨークでOpenAIが開催したディナーで、ChatGPTのコンシューマー製品責任者Adam Fryは、Big TechnologyのAlex Kantrowitzとの対談に応じた。この場でFryは、ChatGPTの検索に近い問い合わせの件数が、Googleの約5分の1に達したと説明した。The Vergeの報道によると、Fryは比較対象としたGoogleの検索回数の出典を示さなかった。

Fryによれば、OpenAIがここでいう「検索」とは、ChatGPTへの質問に伴って実際にWeb検索が行われる場合を指す。単なる用語の定義や簡単な手順の説明は含まず、従来なら検索エンジンを利用して調べていたような質問が対象となる。質問に応じてWeb検索が実行されるたびに1回と数える仕組みだが、具体的な件数や計測方法の詳細は公表されていない。

また、Bingとの規模の比較について質問されたFryは回答を避ける一方、ChatGPTの週間アクティブユーザー数が直近2カ月で10億人から12億人へ増加したと述べた。ただし、こちらもOpenAI側の申告であり、ユーザー数の増加がそのまま検索件数の増加を意味するわけではない。

Googleの公式データで計算すると1日27億回以上

今回の発言を検証するには、まず「検索」という言葉が何を指しているかを整理する必要がある。Googleの検索回数、ChatGPTが実際にWeb検索を実行した回数、情報収集を目的とするChatGPTへの質問は、それぞれ異なる指標だからだ。

Googleは2025年3月の公式ブログで、同社の検索サービスでは年間5兆回を超える検索が行われていると発表した。この数値は2025年1月の社内データに基づくもので、1日あたりに換算すると約137億回となる。

一方、ChatGPTの検索利用については、少なくとも次の2種類の指標がある。

  • Web検索の実行率: Semrushが米国のクリックストリームデータを分析したところ、2026年2月にChatGPTがWeb検索を実行した割合は34.5%だった。2024年後半の46%から低下している。
  • 情報探索を目的とするメッセージの割合: OpenAIの研究論文では、情報探索(Seeking Information)に分類されるメッセージの比率が、2024年7月の14%から2025年7月には24%へ上昇した。論文では、こうした用途をWeb検索に近い代替手段と位置づけている。

前者は実際にWeb検索が行われたかどうか、後者は質問の目的を分類したものだ。情報を尋ねる質問であっても、ChatGPTが必ずWeb検索を実行するとは限らないため、両者を同じ数字として扱うことはできない。

この違いを踏まえ、Googleが公表した年間5兆回を基準にFryの発言を計算すると、次のようになる。

\[ \frac{5兆回}{365日}\times20\% \approx27.4億回/日 \]

Googleの公表値は「5兆回超」であるため、20%を厳密に適用した場合、ChatGPT側には1日約27億4000万回以上の検索相当の問い合わせが必要となる。

ここで比較対象となるのが、OpenAI自身が公表したChatGPTの利用実績だ。2025年9月に発表されたNBER Working Paper(w34255)によると、2025年7月時点でChatGPTの週間利用者は7億人を超え、メッセージ数は週180億件、1日25億件超に達していた。ただし、集計対象はFree、Plus、Proの個人向けプランであり、Business、Enterprise、Educationは含まれていない。

つまり、Googleの検索回数を基準に計算した約27億4000万回は、2025年7月時点のChatGPTの全メッセージ数に匹敵する。さらに、当時の情報探索の割合24%を当てはめると、その件数は1日約6億件であり、27億4000万回とは約4.6倍の開きがある。

もっとも、Fryの発言は「およそ5分の1」であり、厳密な20%を意味するとは限らない。仮に18%なら1日約24億7000万回となり、2025年7月の全メッセージ数とほぼ並ぶ。また、Googleの公表値は2025年1月、ChatGPTの利用実績は同年7月、Fryの発言は2026年11月と時点が異なる。ChatGPTの利用拡大や法人向けプランの扱いによっては数字が整合する可能性もあるが、その判断に必要な最新の実数は公開されていない。

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外部推計は0.27%から20%まで大きな開き

ChatGPTの検索量がGoogleのどの程度に相当するかについては、複数の調査会社が独自の推計を発表している。ただし、その結果には大きな差があり、2024年を対象とした約0.27%から、今回OpenAIが示した約20%まで幅広い。

推計主体 対象時点 ChatGPT側の集計対象 Google側の検索回数 Google比
SparkToro・Datos 2024年(2025年3月公表) 検索相当の利用、最大3750万回/日 140億回超/日 約0.27%
Peec AI 2025年7月(同年10月公表) 情報探索に分類される約6億件/日 約140億回/日 約4.3%
Ahrefs 2025年7月のChatGPTデータ(2026年2月公表) 全プロンプトの65%を検索相当と推計 約137億回/日 12%(全プロンプトでは18%)
OpenAI(Adam Fry) 2026年11月 Web検索を伴う問い合わせ 出典非公開 約20%

最も低い約0.27%と今回の20%を比較すると、約74倍の差になる。ただし、対象期間も集計方法も異なるため、ChatGPTの検索量が実際に74倍へ増加したことを示すものではない。

特に注目したいのがAhrefsの推計だ。同社は2025年7月のChatGPTの全プロンプトの65%を検索相当とみなし、Googleの12%に相当すると計算した。全プロンプトを含めた場合は18%となるが、これはChatGPTの1日25億件をGoogleの約137億回で割った数字だ。

今回Fryが示した20%は、この全プロンプトを対象にした18%さえ上回っている。しかもOpenAIの定義では、実際にWeb検索を伴う質問だけが対象となるため、全プロンプトよりも集計範囲は狭いはずだ。

もっとも、Ahrefsの推計に使われたChatGPTのデータは2025年7月のものであり、Fryの発言とは約1年4カ月の差がある。その間の利用拡大やGoogle側の比較対象の違いによって、数字が変わる可能性は十分にある。外部調査は各社独自の方法による推計であり、OpenAIも計測方法を開示していない以上、現時点でどの数値が最も実態に近いかは判断できない。

利用者は1.7倍に増加、20%が成立する条件とは

Fryの発言を裏づける可能性があるのは、ChatGPTの急速な利用拡大だ。OpenAIの論文では2025年7月の週間利用者が7億人超だったのに対し、Fryは2026年11月時点で12億人に達したと述べている。単純計算では約1.7倍の増加だ。

利用者1人あたりの使用量も増えている可能性がある。Semrushの米国データによると、ChatGPTの1セッションあたりのクエリ数は、2025年の大半の期間における1.16~1.21から、2026年2月には1.75へ増加した。仮にユーザー数の増加と利用頻度の上昇が全体に当てはまるなら、ChatGPTの総メッセージ数は2025年7月から大きく伸びていると考えられる。

ただし、Googleの検索利用も拡大している。Alphabetは2026年10月28日の第3四半期決算で、Google検索およびその他の売上高が前年同期の565億6700万ドルから633億5000万ドルへ12%増加したと発表した。また、検索クエリの前年比成長率が過去5年間で最も高かったと説明しているが、具体的な検索件数は明らかにしていない。

Googleは同日、AI Modeでの広告配信をオーストラリア、カナダ、インドなど10カ国へ拡大したことも発表した。2026年第4四半期にはブラジル、メキシコ、英国などへの展開も予定しているが、発表された対象国に日本は含まれていない。Googleも検索サービスの拡張を進めているものの、OpenAIと直接比較できる最新の検索件数は公表していない。

では、OpenAIが主張する20%が成立するには、ChatGPT全体でどれほどの利用が必要なのか。Semrushが2026年2月に米国で観測したWeb検索実行率34.5%を、仮に全世界のメッセージにも適用できるとすると、必要な総メッセージ数は次のようになる。

\[ \frac{27.4億回}{0.345} \approx79.4億件/日 \]

この仮定では、1日約79億件以上のメッセージが必要となり、2025年7月に公表された25億件超の約3.2倍に相当する。ただし、Semrushの検索実行率は米国の利用データに基づいており、セッション単位の観測値を世界全体のメッセージ数に当てはめた概算にすぎない。したがって、約79億件は20%を成立させるための普遍的な最低条件ではない。

前述の週間利用者数の約1.7倍という増加率と、1セッションあたりクエリ数の約1.5倍という増加率を単純に掛け合わせると、約2.5倍になる。必要とされる約3.2倍に近づくものの、異なる地域や時点のデータを組み合わせた計算であり、実際の総メッセージ数を示すものではない。

さらにSemrushの米国データでは、ChatGPTへのトラフィックは2025年11月ごろから月約10億訪問で横ばいとなり、Web検索を伴うセッション数も2025年11月から2026年2月にかけて毎月減少している。利用者数の増加と検索利用の拡大が、必ずしも同じペースで進むとは限らないことを示す結果だ。

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OpenAIの「Googleの20%」はどこまで信頼できるのか

OpenAIは社内で実際の検索件数を把握していると考えられ、そのデータは外部の推計より正確である可能性がある。ChatGPTの利用者数と利用頻度がともに増えていることを踏まえれば、検索に近い問い合わせがGoogleの20%に相当する規模へ達した可能性は否定できない。一方、現時点ではその根拠となる実数や計測方法が公表されておらず、独立した検証はできない。

判断材料となるのは、まずOpenAIが最新の1日あたり総メッセージ数とWeb検索実行件数を公表するかどうかだ。仮に総メッセージ数が約79億件に達していれば、米国の検索実行率34.5%を使った試算とも整合する余地が生まれる。ただし、それだけで20%が証明されるわけではなく、Web検索の実行率や対象プランの範囲も確認する必要がある。

もう一つの判断材料は、SemrushやDatosなどの第三者が2026年のデータを使い、実際にWeb検索を伴う問い合わせの件数を推計することだ。Google比15%以上という結果が得られれば、今回の発言を支持する材料になるだろう。この15%は編集部が設定した目安であり、全プロンプトを含む推計とは区別する必要がある。

現時点で重要なのは、ChatGPTがGoogleの検索市場の20%を獲得したと解釈しないことだ。Fryが示したのは特定の定義に基づく問い合わせ件数の比較であり、検索市場のシェアや利用者の移行率ではない。OpenAIとGoogleが比較可能な単位で実際の件数を公表するまでは、今回の20%は、ChatGPTの成長を示唆するものの、独立した検証を欠く数値として扱うのが妥当だろう。