AMDは米国時間2026年11月3日、9月26日を期末とする2026年度第3四半期決算を発表した。売上高は前年同期比45%増の133億7,700万ドルとなり、過去最高を更新した。成長を牽引したのはデータセンター事業で、同事業の増収額だけで全社の増収額を上回った。

AMDの決算発表によると、第5世代EPYCプロセッサへの旺盛な需要を背景とするサーバー事業と、AI向けGPU「Instinct MI450」シリーズを投入したデータセンターAI事業は、いずれも過去最高の売上高を記録した。同社は第4四半期に、第6世代EPYC「Venice」とInstinct MI455Xを搭載するAIラック「Helios」の導入が広がると見込んでいる。一方、データセンター需要に備えた大規模な在庫の積み増しは、すでにキャッシュフローを圧迫している。

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全社の増収額を上回ったデータセンター事業

データセンター事業の売上高は前年同期の43億4,100万ドルから85億4,600万ドルへとほぼ倍増し、増収額は42億500万ドルに達した。全社の増収額41億3,100万ドルを上回っており、データセンター以外の事業が合計で減収となったことを意味する。

部門・事業(百万米ドル) 2025年度第3四半期 2026年度第3四半期
データセンター 4,341 8,546
クライアント 2,750 2,949
ゲーム 1,298 773
組み込み 857 1,109
全社合計 9,246 13,377

クライアントとゲームは決算上、同じ部門に属する。クライアント事業はノートPC向けRyzenの好調などで前年同期比7%増加し、組み込み事業も29%増収となった。しかし、ゲーム機向けセミカスタム半導体やグラフィックス製品の販売減少により、ゲーム事業は40%減収となった。その結果、データセンター以外の売上高は合計で7,400万ドル減少した。

データセンター事業が全社売上高に占める割合は、前年同期の約47%から約64%へ上昇した。AMDの決算説明会資料によると、同事業の営業利益は10億7,400万ドルから28億8,200万ドルに増加し、営業利益率も25%から34%へ改善した。全社のGAAP(米国会計基準)営業利益は前年同期比123%増の28億3,200万ドルだった。AMDはEPYCとInstinctの双方で過去最高の売上高を記録したと説明しているが、CPUとGPUそれぞれの増収額は開示していない。

AIエージェントの普及がEPYCの需要を後押し

データセンター事業の成長を支えているのは、AI向けGPUだけではない。AIエージェントを利用するシステムでは、GPUによるモデル推論に加え、データ検索や外部ツールの実行、業務アプリケーションとの連携など、CPUが担う処理も増える。複数のエージェントを並列実行する環境では、こうした周辺処理の能力がシステム全体の性能を左右するため、サーバー向けCPUの重要性も高まっている。Oracleが紹介する次世代EPYC搭載クラウドサービス「OCI Compute E7」も、AIモデルを支える周辺サービスと一般的な企業向けアプリケーションの両方を想定している。

EPYCはAIアクセラレータを制御するホストCPUとしても採用が進む。AMDによると、OpenAIは最初の自社AIアクセラレータ基盤に第5世代EPYC「Turin」を採用した。また、Metaとの戦略的提携では、パーソナルAIエージェント「Muse」向けの専用計算環境をEPYCが支える。GPUを管理するホストCPUと、AIエージェントの周辺処理を実行するCPUでは役割が異なるが、いずれもEPYCの需要拡大につながる分野だ。

AMDによると、第3四半期のサーバー売上高はクラウド向け、企業向けともに前年同期の2倍を超えた。Turinを採用したクラウドインスタンスは主要事業者全体で540種類を超えている。次世代のVeniceは第3四半期に売上計上を伴う出荷を開始しており、搭載サーバーの初期製品は第4四半期、クラウドでのインスタンス展開は2027年初めを予定する。ただし、AIエージェント関連の需要がEPYC全体の増収にどの程度貢献したかは明らかになっていない。

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Instinct MI455Xの量産開始、Heliosは初期稼働段階へ

AMDは第3四半期に、AI向けGPU「Instinct MI455X」の量産出荷を開始した。Oracleの説明によると、AIラック「Helios」は18枚の計算トレイにMI455Xを4基ずつ配置し、合計72基を搭載する。Veniceプロセッサ、Pensandoのネットワーク機器、GPU向けソフトウェア基盤のROCmを組み合わせ、大規模AIモデルの学習や推論をラック単位で処理する設計だ。AMDはさらに、CPUのみの構成とGPUを組み合わせた構成を選択できる、AIエージェント向けラックの参照設計「Helion」も用意している。

決算説明会では、MetaやOpenAIなどの先行顧客が初期のHeliosラックでAIモデルなどを稼働させたことが明らかになった。Metaでは10月27日時点で初期ラックを設置し、本格展開に向けた検証を進めていた。これはMuse向けのEPYC採用とは別の取り組みである。

AMDは第4四半期にHPEやDellなどのパートナー企業がHeliosシステムの出荷を開始すると見込んでいる。ただし、GPU単体の量産出荷、先行顧客による初期稼働、サーバーメーカーからのシステム出荷はそれぞれ異なる段階だ。今後の成長を評価するうえでは、初期導入の実績だけでなく、完成したラックシステムの出荷規模が重要になる。

第4四半期は売上170億ドルを予想、在庫増加がキャッシュフローを圧迫

AMDは第4四半期の売上高を170億ドル(上下3%)と予想している。中央値では前年同期比約66%増、前四半期比約27%増となる見通しだ。事業別ではデータセンターが前四半期比約50%増、組み込みが2桁増収となる一方、クライアント・ゲームは20%超の減収を見込んでいる。クライアント事業は第3四半期にも前四半期比4%減少しており、AMDはメモリ価格の上昇がPC需要を圧迫したと説明した。

売上高の大幅な増加を見込む一方、非GAAP売上総利益率の予想は約55%と、第3四半期実績の56%を下回る。AI関連製品の拡大が売上高を押し上げても、利益率が同じペースで改善するとは限らない。

キャッシュフローにも需要拡大への先行投資の影響が表れている。第3四半期のフリーキャッシュフローは5億5,400万ドルとなり、前四半期の15億5,800万ドルから大幅に減少した。継続事業の営業キャッシュフロー12億200万ドルから、設備投資6億4,800万ドルを差し引いた金額だ。

最高財務責任者(CFO)のJean Huによると、データセンター需要に備えて在庫を前四半期末から約30億ドル積み増し、約115億ドルとした。在庫などに振り向けた資金に加え、供給能力を確保するための設備投資が、フリーキャッシュフローを押し下げたという。在庫の増加は将来の出荷拡大に備える動きだが、その効果は実際の販売と現金回収が進むことで明らかになる。

AMDは2027年にサーバー売上高が前年比で約2倍となり、データセンター事業が全社売上高の8割超を占めると予想している。その実現に向けた最初の重要な節目が2026年度第4四半期だ。Heliosの出荷拡大が実際の売上高にどこまで反映されるか、そして積み増した在庫が売上やキャッシュフローにどうつながるかが、今後の成長を判断する重要な指標となる。