Rocket Labは10月14日、開発中の中型ロケット「Neutron」の初打ち上げを2027年に延期すると発表した。第1段の推進剤タンクを補強するために厚くした部材で、炭素繊維の層間に微小な空隙が見つかったと説明している。新たな打ち上げ月は示しておらず、製造工程の修正と部品の作り直しを経て、第1段全体の試験へ進む。

Neutronは、低軌道へ最大13トンを運び、第1段を再利用して衛星群を継続的に打ち上げる設計のロケットだ。その前提となる、大きく軽い機体を同じ品質で作る工程の確立に苦戦している。

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補強したドームに空隙が生じた

問題が見つかったのは、タンクの前方端を閉じる曲面部材「前部ドーム」である。創業者兼CEOのPeter Beck氏は公式の開発説明動画で、硬化後の検査で層間の空隙を発見し、生産を遅らせて原因を調べたと述べた。空隙は部材の強度や耐久性を損ない得る。ただし、発見されたから必ず飛行中に破損するという意味ではなく、同社が求める安全余裕を確認してから進める判断だという。

この問題には、今年初めの試験失敗への対策が関係している。第1段タンクは1月、水圧試験中に破裂した。Rocket Labが2月26日の決算説明資料21ページで公表した調査結果によると、重要な接合部の製造欠陥が強度を低下させていた。同社は合格を見込んでおり、想定した飛行荷重に達した後の破損は予期していなかった。

当時のタンクは外部業者が手作業で積層していた。炭素繊維を自動で敷き重ねる装置の立ち上げ中も、タンクの製造を進めるために選んだ方法だった。その後は自動積層装置へ移り、Beck氏によると、接合部をなくす設計変更と、一部の厚みを増す補強も加えた。

ところが、今回の空隙はその厚くした部分に生じた。構造を強くする変更に、硬化工程の調整が追いついていなかったというのが同社の説明である。1月と同じ不良を繰り返したとまとめると、この経緯を見落とす。手作業による接合部の問題に対処する過程で、変更後の構造を適切に固めるという別の課題が表面化した。

Rocket Labは試験で問題を再現し、製造工程に対策を加えた。新工程で作った後部ドームについて、Beck氏は問題を解決したと説明し、前部ドームの作り直しに進んでいる。ただし、その説明が裏づけるのは改良した工程での部材製造であり、第1段全体の試験はこの先に残る。

自動積層だけでは解けない大型タンクの難しさ

炭素繊維の部材は、繊維を型に配置しただけでは完成しない。エポキシ樹脂を加熱して化学反応を進め、繊維を結びつける「硬化」が必要になる。Beck氏の説明では、一般的なオートクレーブは容器内で加熱と加圧を行い、繊維の層を締め固める。Neutronの大型部材では、その容器を使わずに硬化させる工程と、部材に合わせた加熱条件を開発してきた。

つまり、繊維を速く正確に敷く自動化と、内部に欠陥を残さず固める工程は、別々に成立させる必要がある。厚みを増して構造を補強しても、硬化後の品質まで自動的に保証されるわけではない。

大型の複合材タンクで製造品質が課題になることは、NASAとBoeingの過去の開発でも確認されている。2015年の会議論文では、直径2.4mと5.5mのタンクを自動積層装置で製造し、オートクレーブを使わずに硬化させた。液体水素を使う圧力・温度サイクル試験を行い、大きい方のタンクでは飛行荷重を模擬した試験も実施した。

論文は、空隙が微小な亀裂や水素の透過に関わること、接合部付近の層間せん断強度を確保するにも空隙を少なくする必要があることを論じている。研究陣は大型タンクの技術的リスクを減らせたとする一方、積層品質と製造速度の改善も今後の課題に挙げた。タンクを一度作って試験することと、工程を磨いて生産することには、それぞれ検証すべき点がある。

NASAのタンクは液体水素向けで、液体酸素とメタンを使うNeutronとは材料や荷重条件も異なる。試験結果をそのままNeutronの合否に当てはめることはできない。Neutronでは、選んだ材料と形状に合う硬化条件を確かめ、その条件で必要な品質を得られることを示す必要がある。

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2027年第1四半期はタンク試験の目標

Rocket Labは8月10日の決算発表で、第1段タンクの製造が2026年第4四半期の射点搬入目標に沿っていると説明していた。10月の動画では、新たな打ち上げ日を示す前に終えるべき作業を具体化した。

2026年8月の目標は年末までの射点搬入だったが、10月の説明では第1段の組み立てとタンク試験の完了見込みが2027年第1四半期へ移った。

公表時点・工程 当時示した目標・見込み 初飛行との関係
8月10日:機体の射点搬入 2026年第4四半期 搬入を目指す計画で、打ち上げ実施とは別
10月14日:前部ドームの製造、硬化、検査 順調なら2027年第1四半期に入る前 超音波などで空隙や別の問題がないかを確認
10月14日:第1段の組み立て、水圧試験、極低温試験 順調なら2027年第1四半期内 機体を構成する第1段全体の検証を進める
10月14日:初打ち上げ 2027年、具体日は未提示 上記工程の進捗を踏まえて新たな目標日を示す想定

出典:Rocket Labの8月10日発表と、10月14日動画の4分30秒〜5分10秒。公表時点の予定を工程別に並べたもので、同じ工程の遅延日数を算出した表ではない。

この第1四半期、すなわち1〜3月という目安を、初飛行の予定と読むことはできない。前部ドームの検査を終えたうえで組み立て、その第1段を加圧時と極低温時に確かめる段取りだ。後部ドームでの改善結果が、作り直した前部ドーム、さらに組み上がった第1段でも成り立つかが次の関門になる。

顧客が待つのは初飛行の先にある

民間顧客のKepler Communicationsは8月10日、Neutronによる同社初の専用打ち上げを2028年以降に計画すると発表した。光通信や軌道上での計算能力を増す次世代衛星を展開する便である。Neutronの初飛行が2027年へ動いたという情報だけでは、この2028年以降のミッションまで遅れたとは断定できない。

一方、米軍向けには成功実績そのものが意味を持つ。米宇宙軍のSpace Systems Commandが2025年に公表したNSSL Phase 3 Lane 1への参加発表は、Rocket LabとStoke Spaceについて、初打ち上げ成功後に個別の打ち上げサービス発注を争う資格を得ると説明していた。枠組みへの選定と、個別ミッションの獲得は別である。この条件では、初飛行の成功が新たな競争へ進む入口になる。

Rocket Labが狙うのは、その後も繰り返し飛ばせる機体だ。公式設計では、全高43m、直径7mのNeutronは、先端のフェアリングを開いて内部の第2段を送り出し、再び閉じた第1段が洋上へ帰還する。フェアリングも第1段と一緒に再利用する構想で、部材の軽量化を衛星の搭載能力へ振り向ける。

Beck氏によると、初号機の完成と並行して工場や設備を整え、2機目と3機目もすでに建造している。延期期間には将来便向けの改良も前倒しする方針だという。こうした先行投資が継続供給につながるには、改良した工程で必要な品質を繰り返し得られることが前提になる。

まずは前部ドームの検査と、組み立てた第1段の水圧・極低温試験が、その前提をどこまで確かめるか。そこで得られる結果が、Neutronを待つ顧客にとって、次の打ち上げ予定を評価する材料となる。