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Nintendo Switch 2、驚異の耐久性が判明:ディスプレイを工具で50回殴打しても動作、任天堂の「頑丈伝説」に新たな一章

Y Kobayashi

2025年6月15日

発売からわずか4日で350万台以上を売り上げ、初代を凌駕するロケットスタートを切った「Nintendo Switch 2」。その圧倒的な性能や魅力的なローンチタイトルに注目が集まる中、ある意味でそれ以上に衝撃的なニュースが飛び込んできた。人気YouTuberが実施した過酷な耐久性テストにより、そのディスプレイが「ほぼ破壊不可能」と言えるほどの驚異的な頑丈さを備えていることが明らかになったのだ。

この常識外れの耐久性の裏には、携帯ゲーム機という製品カテゴリーを知り尽くした任天堂の、深く、そして徹底した設計思想が隠されている。本記事では、そのテストの詳細を紐解きながら、分解によって見えてきた内部構造と、任天堂がSwitch 2に込めた戦略的意図に迫る。

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プライヤーでの50回殴打に耐える「要塞」としてのディスプレイ

衝撃的なテストを実施したのは、スマートフォンの耐久性テストで世界的に知られるYouTuber、Zack Nelson氏のYouTubeチャンネルJerryRigEverythingだ。彼は自身のYouTubeチャンネルで公開した分解動画の終盤、視聴者の度肝を抜く実験を敢行した。

They told me not to... - Nintendo Switch 2 Teardown

Nelson氏はまず、任天堂が「破損時のガラス飛散防止用」と説明するスクリーン表面のプラスチック保護フィルムを剥がす。これは自動車のフロントガラスにも採用される安全思想(ラミネート加工)に基づいたものだが、Nelson氏はこの安全策さえも取り払った、いわば「素っ裸」の状態でテストを開始した。

保護層が剥がされた後、Nelson氏は大型のプライヤーで画面を直接叩きつけるという衝撃的な耐久テストを行った。

  • 13回の打撃: 最初は13回の打撃でJoy-Conが本体から外れた。この段階でも画面には目立った損傷はなく、彼は「ガラスがない、全体が飛散防止プラスチックなのではないか」と推測するほどだった。
  • さらに14回の打撃: 続けて14回の強烈な打撃を与えたが、Switch 2は「衝撃的にまだ生きている」とNelson氏が驚嘆するほど、その機能は維持された。
  • さらに15回の打撃: さらに15回の打撃を加え、合計42回もの衝撃を与えたが、それでも画面は割れず、機能も健在だった。「これを見てもSwitch 2の耐久性に自信が持てないなら、何を見ても持てないだろう」と、彼はその頑丈さを称賛した。
  • 50回での亀裂と奇跡の生還: 最終的に、プライヤーによる50回目の打撃でディスプレイに薄いガラス層が存在することが確認され、画面に亀裂が入った。この瞬間、画面は一時的にブラックアウトする「ブラックスクリーン・オブ・デス」状態に陥ったものの、電源を入れ直すことで奇跡的に復旧し、マリオカートのゲーム画面が再び表示され、プレイを継続できる状態に戻ったのだ。

この結果は、ディスプレイが単に物理的な衝撃に耐えるだけでなく、内部のLCDパネルやタッチセンサー、そして最も重要なプロセッサが無事であるという、機能的な頑丈さをも証明している。任天堂が「ラミネートされたトップレイヤーがなければ、針のようなガラスの破片が飛散する」と説明していた通り、保護層が剥がれた状態では破片が飛び散る可能性が示唆されたが、それでもディスプレイ自体が基本的な機能を維持し続けたことは、まさに驚異的と言える。

このテストは、Switch 2が日常生活で想定される落下や衝撃をはるかに超える耐久性を備えていることを雄弁に物語っている。小さな子供が扱うことも多い携帯ゲーム機として、これ以上ないほどの安心感をユーザーに与えるものと言えるだろう。

耐久性の秘密:安全思想が産んだ「二重構造」という最適解

なぜSwitch 2はこれほどまでに頑丈なのか。その秘密は、Nelson氏が最初に剥がした「プラスチック保護フィルム」の存在にある。

任天堂は公式に、このフィルムはガラスが破損した際に破片が飛び散り、ユーザー(特に子供)が怪我をすることを防ぐためのものだと説明している。テストでも、このフィルムがない状態ではガラス片が鋭い針のように飛散することが確認されており、任天堂の狙いが正しかったことが証明された。

しかし、この構造は単なる安全対策以上の意味を持つと考えられる。

  1. 実用的な耐衝撃性: プラスチック層は、それ自体が衝撃を吸収・分散するクッションの役割を果たす。これにより、下層のガラスへの直接的なダメージを軽減し、結果として全体の耐久性を劇的に向上させている。
  2. 傷への対策とユーザーの選択肢: ソースによれば、このプラスチック層は傷がつきやすいという側面もある。しかし、これはユーザーが市販の安価なガラス製スクリーンプロテクター(例:JSAUX製など)を追加で貼り付けることで容易に解決できる。つまり、任天堂は「飛散防止」と「耐衝撃性」という根源的な安全性を標準で確保しつつ、表面の傷対策はユーザーの選択に委ねるという、非常に合理的でクレバーな設計を選択したのではないだろうか。

高価な強化ガラスを一枚採用するのではなく、プラスチックとガラスの二重構造を採用したことは、コストと実用性、そして安全性を最高次元で両立させるための、任天堂ならではの戦略的判断と言えるだろう。

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分解して見えた「修理しやすさ」への配慮と、残された課題

JerryRigEverything氏の動画は、単なる耐久テストに留まらない。その分解プロセスからは、任天堂が「長く使える製品」を意識していることが垣間見える。

評価すべき点:モジュール化による修理への配慮

  • Joy-Conスティック: 初代Switchで世界的な問題となった「Joy-Conドリフト」。その最大の原因であったスティック部品は、Switch 2では非常に交換しやすいモジュール構造になっている。これは、過去の教訓を活かした明確な改善点であり、ユーザーが比較的容易に、そして安価に修理できる道を残した点で高く評価できる。
  • ヘッドホンジャックやmicroSDカードスロット: これらも摩耗や破損が考えられる部品だが、モジュール化されており、修理のハードルを下げている。

残された課題:コストと修理のトレードオフ

一方で、全ての部品がユーザーフレンドリーというわけではない。

  • バッテリー: 初代とは異なり、本体とJoy-Conのバッテリーは両方とも接着剤で強力に固定されている。交換にはアルコールなどを用いて接着を剥がす必要があり、修理の難易度は上がっている。
  • USB-Cポート、ゲームカードスロット: これらの重要部品はマザーボードに直接はんだ付けされている。もし破損した場合、専門的なはんだ付け技術がなければマザーボードごとの高額な交換になる可能性がある。

この点からは、頻繁な交換が想定される部品(Joy-Conスティック)は修理しやすく、そうでない部品は製造コストや本体の剛性確保を優先するという、任天堂の割り切った設計思想が見て取れる。

スペック競争から「体験価値」へ。任天堂が示す新たな王道

Nintendo Switch 2の驚異的な耐久性と、その分解から見えた内部構造は、現在のテクノロジー業界のトレンドとは一線を画す、任天堂独自の哲学を浮き彫りにする。

スマートフォンやPCが年々スペックを向上させる一方で、物理的な脆さや修理の困難さといった課題を抱え続ける中、任天堂は異なる道を歩んでいるように見える。それは、最先端のスペックを追うのではなく、ユーザーが「毎日、安心して、長く使える」という、より本質的な体験価値(User Experience)を重視する姿勢だ。

プライヤーの50回もの殴打に耐える堅牢なボディ、ドリフト問題への明確な回答である修理しやすいJoy-Conスティック、そして子供たちの安全にまで配慮した飛散防止フィルム。これら一つ一つの設計判断が、Switch 2を単なるゲーム機から、家族の一員として長年愛される「信頼できるパートナー」へと昇華させている。

記録的な販売台数は、多くのユーザーがこのような任天堂の姿勢を支持していることの証左であろう。Nintendo Switch 2は、スペックシートの数字だけでは測れない「価値」を、その驚異的な頑丈さをもって我々に示しているのである。


Sources

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