OpenAIは2026年7月23日、ChatGPT Healthを米国の18歳以上の個人利用者へ展開すると発表した。対象はFreeからProまでの4プランで、WebとiOSに数週間かけて行き渡る。今回の変化は利用者の拡大に加え、接続した医療記録やApple Healthの情報を、利用者の許可に基づいて通常のChatGPT会話でも参照できるようにしたことだ。1月に始まった初期版は健康情報を専用空間へ隔離していたが、7月版は権限設定とメモリ管理を境界に据える。

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健康関連会話の7割超が専用画面の外だった

OpenAIによると、世界で毎週3億人を超える利用者がChatGPTへ健康に関する質問をしている。この数字は質問件数でもChatGPT Healthの利用者数でもなく、一般のChatGPTを含む週次の人数である。Healthが米国の個人向け4プランに開かれることで、その一部が自分の記録を接続できるようになる。

初期提供では、接続データの恩恵を受けるためにサイドバーのHealthへ移る必要があった。だが早期利用者の健康関連会話の70%超は、食事の相談や旅行計画などの途中で生じ、専用空間の外で続いていた。アレルギーを踏まえてレストランを選ぶ、最近のけがに合わせて家族の週末活動を組むといった場面では、会話を移す操作が流れを切っていた。

新しいHealthは、サイドバーにある管理拠点として残る。利用者はそこで接続先や同期記録、最近の傾向を確認する一方、質問はChatGPTのどこからでも始められる。米国在住で条件を満たしていても一斉に使えるわけではなく、OpenAIのヘルプページは全対象者への展開に数週間かかる場合があるとしている。Apple Healthとの接続にはiPhoneが必要で、Codexには対応しない。

医療記録から一般会話まで、データが通る経路

接続先はApple Health、対応する米国の病院システム、One Medical、Function Healthである。WhoopやOura、GarminなどがApple Healthへ書き出したデータも、iOSの権限で許した範囲ならChatGPTが読める。ただし各サービス独自の睡眠スコアなどはApple Healthへ渡らない場合があり、元アプリとChatGPTで表示が一致するとは限らない。

ChatGPTは服薬や検査結果、最近の受診を参照できる。睡眠や運動量も対象になる。読み取り専用であり、病院側の記録やApple Healthを書き換えることはできない。同期した服薬情報が中止後も残る場合があるため、OpenAIも原記録との照合と利用者による更新を求めている。

一般会話で健康情報を使う際は、初期設定ではその都度、許可画面が出る。利用者は今回だけ許可するか、常時許可するかを選べる。必要な会話で明示的に呼び出したいときは「@Health」を付ける。常時許可に変えると確認画面が消えるため、別の話題で健康情報を参照する場面をどこまで許すか、利用者自身が決める設計である。

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隔離から権限管理へ、変わったプライバシー境界

1月のOpenAIの説明では、Healthの会話やファイルは通常会話から分離され、アプリとメモリを含むHealth側の情報が外へ戻ることはないとされていた。7月版では、接続情報を一般会話へ持ち込める。従来のHealth会話とファイルは分離設定を保ったプロジェクトに残るが、新方式では「どの画面にいるか」より、Healthプラグインの権限が情報利用を決める。

接続した医療記録、Apple Healthの情報、それらを使った会話は、基盤モデルの訓練にも広告配信にも使われない。通常のChatGPT会話で接続データを使わなかった場合は、アカウントの標準的な学習設定に従う。全会話がHealth扱いになるわけではない。保存時と通信時の暗号化に加え、接続情報には追加の暗号化保護が適用される。

メモリは別に考える必要がある。同期した医療記録やApple Healthの数値から直接メモリを作ることはないが、Healthを使った会話の内容は、メモリが有効なら将来の会話を個人化する材料になりうる。健康に関する記憶を他の会話から分けたい場合は、別プロジェクトを使い、プロジェクト専用メモリを選ぶ方法がある。Temporary Chatを使うか、メモリを無効にすれば新しい記憶は作られない。

削除も一つの操作では完了しない。接続先を外すと、同期データはOpenAIのシステムから30日以内に削除されるが、会話へ取り込まれた情報はチャット履歴を削除するまで残る。またHealth Privacy Noticeは、利用者がオプトアウトしない限り、モデル安全性の改善を目的に、限定された担当者と信頼する委託先がHealthのデータへアクセスする場合があると記す。「訓練しない」と「人を含む安全確認で一切触れない」は同義ではない。

HealthBenchの伸びは診断精度を意味しない

OpenAIは健康分野の評価に、260人を超える医師のネットワークを使っている。参加者は60カ国に広がり、49言語と26診療科をカバーする。2026年6月時点で70万件を超える回答例を評価したという。HealthBench Professionalでは、回答の正確さと安全性に加え、説明や文脈理解、必要な受診勧奨を医師作成のルーブリックで採点する。

GPT-5.6のSystem Cardが示す長さ調整後のHealthBench Professionalは、Solが60.5、Terraが57.7、Lunaが55.7で、GPT-5.5の51.8を上回る。ただし同じSystem Cardでは、Solの通常版HealthBenchとHealthBench ConsensusはGPT-5.5からほぼ横ばいで、ProfessionalとHardが改善した。健康性能を一つの点数へ畳むと、どの場面が良くなり、どこが残ったかを見失う。

外部評価は別の弱点を捉えた。Nature Medicineに掲載された研究は、医師が作った60の症例を16条件に展開し、ChatGPT Healthから960回答を得た。条件では患者の人種と性別、周囲からの安心・警告、受診障壁を変えた。正解の緊急度が一つに定まる30症例では、救急受診が必要な64件のうち33件、51.6%を24〜48時間以内の受診へ過小評価した。非緊急例では128件中83件、64.8%を過大評価した。

この結果を現在のChatGPT Healthへそのまま当てはめることはできない。実験は1月9〜11日のgpt-5-mini thinkingを使い、実患者ではなく合成症例を一つの定型プロンプトで1回ずつ測った。救急症例も4症例、元の臨床場面では2種類に限られ、過小評価33件のうち28件は喘息増悪に集中していた。それでも、総合ベンチマークの上昇とは別に、臨床的な両端で失敗しないかを現行版で外部検証する必要性は残る。

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HIPAAの外側で何を確認すべきか

OpenAIの利用条件は、同社サービスを健康状態の診断や治療に使うことを意図していないと定める。消費者向けChatGPT Healthは臨床利用やHIPAAの対象事業者向けではなく、Business Associate Agreement(BAA)も提供しない。医療機関向けのChatGPT for Healthcareとは契約と用途が異なる。

米保健福祉省は、本人の指示で医療機関からアプリへ電子保護対象医療情報が送られ、そのアプリがHIPAA上の対象事業者でも事業提携者でもない場合、受領後の情報はHIPAAの保護対象から外れると説明している。ただし、消費者向け健康アプリが無規制になるわけではない。米連邦取引委員会のHealth Breach Notification Ruleは、HIPAAの外側にある個人健康記録の事業者などに、保護されていない識別可能な健康データの漏洩通知を求める。OpenAIのHealth Privacy Noticeも、ワシントン州とネバダ州の消費者健康データ法に該当しうる情報を扱うと明記している。

今回の展開で確かめるべきなのは、利用者数の増加よりも、許可画面が健康情報の混入を確実に制御できるか、古い服薬や検査情報を訂正できるか、現行モデルが緊急度の両端で安全に振る舞うかである。一般会話へ健康データを運ぶ利便性が成り立つのは、権限とメモリ、削除手順が一貫し、外部評価でも安全性を確認できた場合だ。