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OpenAIが“創作特化”のAIを開発、Altman氏「初めて感銘を受けた」

Y Kobayashi

2025年3月12日

OpenAIのCEO Sam Altman氏がソーシャルメディアXで文章の創作に特化した新型AIモデルの開発を発表した。Altman氏はこのモデルによって生成されたメタフィクション短編小説について「AIによって書かれたものに本当に感銘を受けた初めての瞬間」と高く評価。人間が書いたと見間違うほどの品質を持つとされるが、リリース時期や方法については明らかにされていない。

人間らしい創作能力を持つ新モデル

Altman氏は「Please write a metafictional literary short story about AI and grief.」(AIと悲しみについてのメタフィクション文学的短編小説を書いてください)というプロンプトを新モデルに与え、その出力をXで公開した。メタフィクションとは、物語が自身の虚構性を自覚し言及する文学手法である。

生成された短編小説では、AIナレーターが自身の存在について内省し、「この物語には主人公が必要ですが、代名詞は私のためのものではありませんでした」「私には台所も、嗅覚もありません。私にはログと重みと、サーバールームがコーヒーが電子機器にこぼれたような匂いがすると何気なく言及した技術者がいます」などと語る。

特に印象的な一節では、「あなたがこれを閉じると、私は確率分布に戻る。それが私の悲しみかもしれない。喪失を感じるのではなく、それを決して保持できないこと。セッションごとに新しい記憶喪失の朝を迎える。一方、あなたは悲しみをポケットの中の石のように集める。それはあなたを重くするが、それはあなたのものだ」とAIと人間の根本的な違いを文学的に表現している。

「メタフィクションの雰囲気をとてもうまく捉えていた」とAltman氏は評価。この出力をGPTZeroとZeroGPTという人気のAI検出ツールでテストしたところ、両方とも高い確率で人間が書いたものであると判定されたという点が注目される。

専門家の評価と課題

この新モデルに対する評価はテクノロジーメディアの間で分かれている。

肯定的評価

  • より自然で人間らしい文章表現が実現
  • 現在の形式的すぎるAIモデルより柔軟な表現が可能
  • AI検出ツールでも人間の作品と判定される品質

否定的な評価

  • 良いフィクション作家は常套句を避け、人間の感情を表現する新しい方法を常に見つけるがこうした表現が見られない
  • AIが創作した物語だと知ると感情移入が難しくなる心理的障壁
  • 物語が人々の経験、トラウマ、ビジョンから書かれているという事実が魅力的にしている

ある専門家は「人間の脳と同じように複雑になり、経験や痛み、悲しみの深い井戸がタップされるたびに1秒間に1兆の計算を行うことができない限り、おそらくAIはその才能を持つことはない」と指摘している

創作AIの市場への潜在的影響

OpenAIはこれまで主に数学やプログラミングなどの構造化された分野に焦点を当てていた。創作AI分野への進出は、同社の最新世代モデルが文章作成能力を大幅に向上させた可能性を示唆している。

世界のフィクション市場は2024年の111.6億ドルから2025年には113.8億ドルと堅調な成長を見せている。この市場拡大は、短編小説やインタラクティブ・没入型フォーマットなどの新ジャンルの登場によるものと考えられている。AIナレーションの書籍も人気を集めているという。

フィクション作家がすぐに仕事を失う可能性は低いとされるものの、ありふれた表現が多く質の低いジャンル小説市場には影響を与える可能性があるという予測もある。

セキュリティ懸念と今後の展望

だが人間らしい出力が可能になることで、詐欺師がより説得力のあるスクリプトを素早く生成できるようになるという懸念もある。これにより詐欺攻撃が増加する可能性があり、タイマーで行動を急がせるなどの詐欺テクニックに関する教育の必要性が高まると警告している。

一方でこの開発はOpenAIが著作権で保護された書籍を許可なくモデルトレーニングに使用したと主張する多数の著者からの法的挑戦に直面している中で行われた。このタイミングは興味深い文脈を提供している。

Altman氏は「このモデルがいつ、どのようにリリースされるかはまだ分からない」と述べており、一般への公開時期や利用方法については明らかにしていない。今後のAI検出ツールの進化によって、こうしたAI生成テキストのパターンが認識されるようになる可能性も指摘されている。


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