米オークリッジ国立研究所(ORNL)は2026年9月22日、カリホルニウム252(Cf-252)の製造過程で生じる希少な放射性核種について、回収・精製工程を改善したと発表した。

アインスタイニウムでは、分離カラムを1回通すごとに対象物の95%を回収し、フェルミウムでは化学的純度約99.93%の試料を得たという。いずれも極微量しか得られない貴重な研究材料を無駄にしないための成果だ。

ただし、「95%」と「99.93%」は同じ性能を示す数字ではない。実際に研究者へ供給できる試料がどれだけ増えるのかを判断するには、工程全体を通した回収量や、次回以降の製造実績を見る必要がある。

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95%と99.93%は何を示す数字なのか

Cf-252は中性子を放出する放射性同位体で、原子炉の起動などに利用される。その製造過程では、目的となるCf-252だけでなく、より重い元素の放射性同位体も生成される。

ORNLの発表で取り上げられているのは、ベルケリウム249(Bk-249)、アインスタイニウム253・254(Es-253/254)、フェルミウム257(Fm-257)だ。

ORNLが示した95%は、アインスタイニウムをカラムで分離する1回の操作における回収率である。一方、約99.93%はフェルミウム試料の化学的純度だ。したがって、両者を同じ指標として比較することはできない。

今回の成果を核種ごとに整理すると、違いが分かりやすい。

核種 1回の製造キャンペーンで得られる量の目安 今回の工程と結果
ベルケリウム249 ミリグラム単位 カラム工程を追加し、不純物を除去。純度や回収率の数値は未公表
アインスタイニウム253・254 マイクログラム単位 Cf-252との分離条件を調整し、キャンペーン終盤にはカラム操作1回当たり95%を回収
フェルミウム257 ピコグラム単位 Es-253/254との分離に使う樹脂を変更し、化学的純度約99.93%の試料を取得

出典はORNLの2026年9月22日付発表。量の欄は実際の採取量ではなく、それぞれの核種がおおむねどの程度の量で得られるかを示したものだ。

ここで、95%を製造開始から研究者への供給までを含む「全工程の回収率」と解釈することはできない。また、99.93%も、生成したフェルミウムのうち何%を回収できたかを示す数字ではなく、Fm-257という同位体が試料中に99.93%含まれるという意味でもない。

ORNLは、これらの値を求めた詳しい分析方法や測定誤差、今回最終的に得られた試料の総量については公表していない。

カリホルニウム製造で生じる希少核種をどう分離したのか

ORNLは、西側諸国でCf-252を生産する唯一の拠点だと説明している。

主目的であるCf-252の製造と、その過程で生じるベルケリウムなどを研究用に分離・精製する取り組みは、いずれも米エネルギー省の同位体事業によって支援されているが、別々のプロジェクトとして進められている。

ここでいう「廃棄される材料からの回収」は、一般的な原子力発電所から出る使用済み燃料を処理したという意味ではない。Cf-252の製造過程で生じ、従来であれば利用されなかった物質から、研究に使える希少核種を取り出す取り組みだ。

難しさは、扱う量が極めて少ないことだけではない。強い放射線の中で作業しなければならないという制約もある。

Cf-252の大部分は、放射線を遮蔽できるホットセル内で分離される。しかし、その後に副産物を処理する溶液にも、放射能の強いCf-252がマイクログラム単位で残ることがある。

副産物の精製はグローブボックス内で行われるため、作業者の被ばく線量を抑えながら、できるだけ短時間で処理する必要がある。工程を簡素化することには、貴重な試料の損失を抑えるだけでなく、作業時間や被ばくを減らす意味もある。

ベルケリウムでは、追加したカラムにBk-249を保持させ、ほかの不純物を通過させる方法を採用した。ORNLによると、黄味を帯びた溶液から緑色の結晶状固体が得られたという。

ただし、研究責任者のCristian Celis-Barrosは、この追加工程をまだ初期段階の手法と位置付けており、現在も改良を続けている。見た目の色の変化だけから、試料の純度を定量的に判断することはできない。

アインスタイニウムでは、同様のカラムを使いながらCf-252との分離条件を調整した。95%という数字は、製造キャンペーン終盤に達成した、カラム操作1回当たりの回収率である。

ORNLは過去の製造キャンペーンより高い回収率だとしているものの、直接比較できる過去の数値は公表していない。また、得られた試料については、その後も不要な物質を取り除き、分析上もCf-252を分離する作業が続く。

次回のCf-252製造キャンペーンは2027年に予定されている。

フェルミウムでは、Es-253/254との分離に使うカラムの樹脂を、従来のDGA樹脂から別の種類へ変更した。ORNLは新たに使用した樹脂の名称を公表していない。

約99.93%という数字は、得られた試料について担当研究者が示した化学的純度であり、フェルミウム全体の回収率や、研究者へ供給された量を示すものではない。

Cf-252自体の製造工程についても、別の改良が進められている。

ORNLの8月の発表によると、別の研究チームが開発した新しい分離法は2025年に実規模で試験され、従来と同等の品質を維持しながら、処理期間を約1週間短縮した。

ただし、これは今回発表された、Cf-252製造時に生じるEsやFmを分離する工程とは別の技術だ。また、その発表に登場する「95%」も、Cf溶液からアメリシウムなどを除去する割合を示しており、今回のEsの回収率と直接比較することはできない。

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フェルミウムの精製には過去の研究もある

フェルミウムを分離・精製する技術が、今回初めて開発されたわけではない。

ORNLの研究者らは1997年の査読論文で、TEVA樹脂を使い、フェルミウム試料に含まれる希土類元素や核分裂生成物を減らす方法を報告している。

公開されている抄録によると、最終試料にはFm-257が0.5ピコグラム含まれ、残存するイットリウム91は0.07ピコグラムだった。

この研究から、ピコグラム単位のフェルミウムを精製する試みが以前から行われていたことが分かる。一方、1997年の論文と今回の「99.93%」では、対象となる不純物や評価方法が異なるため、数値だけを並べて純度の優劣を判断することはできない。

ORNL主催の2025年の分離科学シンポジウム要旨でも、Es-253/254をCf-252やFm-257から分離する課題や、Bk-249に含まれる放射性・非放射性不純物を除去する課題が挙げられていた。

今回の発表は、そこで示されていた課題に対し、直近の製造キャンペーンで得られた改善結果と見ることができる。

ただし、この要旨には95%や99.93%という今回の測定結果は掲載されておらず、今回の成果を独立に検証した研究でもない。ORNLの9月22日の発表についても、現時点では査読論文や詳細な実験データは示されていない。

極微量でも研究には使える

得られる量が極めて少なくても、こうした核種には具体的な研究用途がある。

日本原子力研究開発機構(JAEA)は2017年、ORNLからアインスタイニウム254を0.5マイクログラム特別に入手すると発表した。

その後の2025年の成果発表では、ORNL由来のEs-254を10ナノグラム使った薄膜標的にヘリウム原子核を衝突させ、さらに重いメンデレビウム258を生成して核分裂を測定している。

励起エネルギーを15MeVから18MeVへ高めると、質量の異なる二つの破片に分かれる「非対称核分裂」が増えた。ごくわずかな量の試料でも、重い原子核の性質を直接調べる実験に利用できることを示す例だ。

ただし、この研究で使用されたのは今回回収された試料ではない。

米エネルギー省の同位体事業は、Fm-257を重元素化学の研究に使われる核種として挙げている。ORNLも研究者からの関心が高まっていると説明し、将来的には医療や産業分野で利用できる可能性にも触れている。

ただし、具体的な新用途が確立されたという発表ではない。まず必要なのは、ピコグラム単位しか得られない試料を十分な純度まで精製し、実験に必要な量を研究者へ安定して供給できるようにすることだ。

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最終的にどれだけ研究者へ供給できるか

ORNLによると、こうした希少核種として供給できる量は、おおむね2年ごとに行われるCf-252の製造キャンペーンで得られる分に限られる。研究者は、実際に材料が製造される前から試料の確保を希望するという。

マイクログラムやピコグラム単位しか得られない核種では、工程中に失われるわずかな量であっても研究計画に影響する。このため、カラム操作1回当たりの高い回収率や、高い化学的純度には大きな意味がある。

ただし、本当に重要なのは、それらが最終的に「必要な量と品質を備えた試料を、研究者へどれだけ供給できるか」につながるかどうかだ。

ORNLは、次回となる2027年の製造キャンペーンで、今回の工程をさらに改善する考えを示している。

そこで、工程全体を通した回収量、残存するCf-252などの不純物、実際に研究者へ供給できた試料量が明らかになれば、今回示された高い回収率や純度が、利用可能な研究試料の増加につながったのかを判断できる。

今回の成果は、希少な放射性核種をこれまで以上に無駄なく研究へ利用するための、一つの前進と位置付けられる。