ロシアのZelenograd Nanotechnology Center(ZNTC)が、130nmの半導体製造を対象とする露光装置の試作機を完成させたと報じられた。ロシアの技術メディアCNewsによると、装置は直径200mmまでのウェハーに対応し、研究開発の第3段階が完了したことを示す文書が2026年8月7日に署名された。回路パターンを光でウェハー上に転写する装置を自ら開発する取り組みが、試作機の製作まで進んだことになる。

ただし、130nmという数字は、ロシアが初めて到達した半導体の製造世代を意味するものではない。同国の半導体メーカーMikronは、既に90nmまでの量産を公表している。今回の前進の意味は、半導体製造を支える露光装置を自ら供給できる体制づくりが進んだ点にある。試作機を完成させた段階から、顧客の工場で安定してチップを生産できる段階へ進めるかが、今後の焦点となる。

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試作機完成、受け入れ試験、量産はそれぞれ別の段階

ZNTCのアナトリー・コワリョフCEOは、8月のCNewsの取材に対し、完成したのはステッパーの試作機であり、予備試験や基本的な製造工程の確立が今後の課題として残っていると説明した。ステッパーとは、ウェハー上の小さな区画を順番に露光し、同じ回路パターンを繰り返し転写する装置である。CEOは、2027年に顧客との契約締結を目指す計画も示している。CNewsの独自報道が伝えたのは、あくまで開発工程の一つの節目である。

9月28日には、ロシア産業貿易相のアントン・アリハノフ氏が、装置の受け入れ試験を秋に開始し、年末までに完了させる方針を明らかにした。光源となるロシア製エキシマレーザーについては、試験を終えているという。TASSの配信記事(Rambler掲載)が伝えたこの説明からも、装置全体の検証はこれからであることが分かる。

2026年8月に試作機が完成し、同年秋から年末にかけて装置の受け入れ試験を行い、2027年に顧客との契約締結を目指す、という流れである。

時点 到達点・目標 状態と根拠
2026年8月7日 研究開発第3段階の完了、試作機の製作 完了したとCNewsが8月12日に報道
2026年秋から年末 装置の受け入れ試験 9月28日に産業貿易相が示した計画
2027年 顧客との契約 ZNTCのCEOが8月に示した計画

表は、同じ130nm装置について、既に完了した作業と今後の目標を分けて示したものだ。8月に完了したのは、CNewsが調達文書に基づいて報じた研究開発上の節目であり、装置全体の試験が終了したことを意味しない。TASSの配信記事が伝えた9月時点の試験予定と、CEOが示した2027年の契約はいずれも将来の計画である。

この時系列には、商用チップの量産開始日は含まれていない。装置メーカーが機械を製造・納入することと、半導体メーカーが自社の工程に組み込み、良品を安定して生産することは別の段階だからだ。10月5日のTom’s Hardwareは、商用ウェハーの処理が始まるのは早くても2029年ごろになると予測した。ただし、これは同媒体による見通しであり、ZNTCやロシア政府が発表した量産日程ではない。

193nm光源と、量産を左右する三つの性能

レーザーを開発するLassardは、2024年9月の公式発表で、「Progress 130」向けに波長193nmと248nmのエキシマレーザーを開発していると説明していた。当時は2台の試作機を製作し、翌年の試験と2026年の量産を目標としていた。今回の装置では193nmの光源を使うと、CNewsが報じている。

光の波長と、装置が転写できる回路パターンの細かさは同じ数字ではない。例えば、ニコンが2023年に発表した液浸露光装置NSR-S636Eは、同じ193nmの光源を使いながら、解像度を38nm以下としている。液浸方式や光学系が異なるため、ZNTC機と直接性能を比較することはできないが、193nmのレーザーを採用しているだけで装置の解像度が決まるわけではないことは分かる。逆に、同じ波長の光源を使っているからといって、ロシアの装置でも先端チップを製造できると考えることもできない。

ニコンの技術解説では、露光装置の主要な性能として、投影レンズの解像度、重ね合わせ精度、処理能力の三つを挙げている。それぞれ、どこまで細かいパターンを描けるか、前の層に対してどこまで正確に位置を合わせられるか、一定時間に何枚のウェハーを処理できるかを示す。

チップは一度の露光で完成するものではない。感光膜にマスクの像を転写し、現像して加工用のパターンを形成する。さらに別の層を作る際にはマスクを交換し、露光を繰り返す。細い線を一本描けたとしても、下の層との位置がずれれば、意図した位置に回路を接続できない。試験パターンで高い解像度を実現することと、多層構造のチップを良品として安定して製造することは別の能力である。

130nm世代の装置がどの程度以前から存在していたかは、装置メーカーの資料からも確認できる。ASMLは2001年8月の発表で、KrF方式のPAS 5500/800について、解像度120nm、200mmウェハーで毎時115枚の処理能力、単一装置で20nm未満の重ね合わせ精度をうたっていた。光源は248nmであり、ZNTC機とは方式も仕様も異なる。それでも、130nmに近い寸法を扱う装置が約四半世紀前から存在し、その時点ですでに位置精度や生産性も重要な評価指標となっていたことは分かる。

CNewsによる試作機の報道や、TASSが伝えた試験計画には、130nm機の重ね合わせ精度や処理能力、長時間運転時の性能に関する実測値は示されていない。130nmという対象寸法は開発の前進を示す一つの指標ではあるが、工場で実用できる装置かどうかを判断するには、こうした性能値が必要になる。

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既存の90nm製造と、露光装置を自ら供給する意味

Mikronは、自社の公式発表で90nmまでの量産を行っていると説明し、電源管理用チップやRFIDなどの製品を挙げている。この既存能力を踏まえると、130nm露光装置の開発を「ロシアのチップ製造が初めて130nmに到達した」と受け止めるのは適切ではない。チップを製造する工程を持つことと、その工程で使用する装置を自ら開発・供給することは別だからだ。

装置開発には、既存の製造ラインを維持・更新する意味もある。ASMLもDUV露光装置の説明で、200mm向け装置が既存工場の老朽化した露光装置の置き換えに使われると説明している。新しい装置の価値は、最小寸法をどこまで縮められるかだけで決まるものではない。必要な製造工程を継続して稼働させられることも、半導体メーカーにとって重要な実用価値となる。

RFIDは物品の識別や管理に使われ、電源管理用チップは機器内で電力を適切に配分する役割を担う。こうした製品には、先端CPUとは異なる需要がある。ニコンも、アナログ半導体やパワー半導体では、比較的大きな回路パターンに対応する露光装置が使われると説明している。130nmや350nmの装置を、最新プロセッサーとの世代差だけで評価すると、工場が実際に必要としている製造工程を見落としかねない。

もっとも、用途があるからといって、新しい装置が採用されるとは限らない。顧客が既に使用している材料や製造工程に適合し、求められる品質と処理能力を満たす必要がある。国産装置を導入する政策的・供給面での理由があったとしても、実際の製造工程との適合確認を省くことはできない。

「国産化」を支えるベラルーシとの分業

ZNTCの装置開発は、ロシア一国だけで進められている事業ではない。CNewsが確認した文書によると、ベラルーシのPlanarが装置開発や機械部品の製作、試作機の調整を担い、Lassardがレーザーを開発した。ZNTCは全体設計に加え、試験設備の整備、投影レンズの設計計算、製造工程の開発を担当するとCEOが説明している。こうした分担が確認されている以上、すべての部品をロシア国内だけで製造した装置とみなすことはできない。

Planarとの協力は、先行する350nm機でも見られる。Rusnanoは2025年3月の発表で、Planarが共同開発に参加したことに加え、130nm機の開発を2026年に完了する予定であることを明らかにしていた。光源、光学系、精密機構を組み合わせる露光装置の開発では、複数企業が持つ技術を一つのシステムとして成立させること自体が大きな課題となる。

350nm機は、顧客の製造工程への導入を考える上でも参考になる。Mikronは2025年9月、ZNTCとElement傘下の「Otraslevye Resheniya」が供給契約を結んだと発表した。契約には据え付けと立ち上げが含まれ、MikronのCEOは、研究開発仕様書に定められたすべてのパラメータへの適合を確認したと説明している。ZNTCのCEOも、生産拠点で装置の各種パラメータを確認したと述べた。ただし、これは350nm機についての発表であり、130nm機でも同様の確認が済んでいるわけではない。

また、CNewsが報じた130nm機の開発費は57億ルーブルである。この金額は装置1台の量産時の販売価格とは異なり、それだけで国産装置の採算性や競争力を判断することはできない。試験を通過した後も、継続的に装置を供給できる体制を整え、顧客側での立ち上げ実績を積み重ねる必要がある。

130nm機の受け入れ試験が終わった段階で、重ね合わせ精度や処理能力がどのような条件で確認されたのか、さらに顧客の製造拠点でどの工程に使われたのかが、次の判断材料になる。そうした実績が積み上がれば、今回の試作機完成は、ロシアの半導体工場が必要な装置を継続的に確保するための新たな選択肢につながる可能性がある。