Samsung Foundryの先端プロセス競争は、1.4nmへ一気に飛ぶ局面から、2nm世代を段階的に使いこなす局面に移っている。7月1日に開かれたSAFE Forum 2026での説明として、同社は2nmファミリーをSF2、SF2P、SF2P+、SF2Xへ広げ、SF2P+を2027〜28年の量産目標に置く方針を示したと伝えられた。SF1.4はリード顧客向けに2029年量産、改良版のSF1.4+は2030年という位置づけである。

焦点は、Samsungが1.4nmの量産時期をどう語り直したかより、その間を埋める採用条件にある。顧客が設計を始めるには、プロセス名よりもPDK、IP、設計ルール、歩留まり、パッケージングまで含む採用条件がそろわなければならない。SF1.4が2029年の量産目標なら、2027〜28年に次期チップの設計判断を進める顧客には2nm世代の成熟度が先に問われる。Samsungは2nm世代の中に性能改良版とAI/HPC向け派生を用意し、顧客が既存の設計資産を使いながら次の製品を組める道筋を前面に出している。

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2027年目標の1.4nmから、2029年量産の1.4nmへ

Samsungは2022年のFoundry Forumで、2nmプロセスを2025年、1.4nmプロセスを2027年に量産する計画を掲げていた。同じ発表では、2027年までに先端ノードの生産能力を当時比で3倍超へ広げ、HPC、自動車、5Gなど非モバイル用途をファウンドリ事業の50%超にする構想も示していた。当時の計画は、微細化の前倒しと用途の拡大を同時に進めるものだった。

今回伝えられたSF1.4の2029年量産目標は、初期計画から見ると2年後ろへ動いた形になる。これを単純な後退と読むと、Samsungがいま強調している実務上の狙いを見落とす。Samsungの現行ロジックノードページでは、SF2は2025年後半から安定した量産に入った第2世代MBCFET、つまりGAAベースの2nm技術として説明されている。SF2Pは低抵抗RDLとHyper Cellアーキテクチャを使うHPC向けの性能最適化ノードで、2026年後半の量産予定とされている。

この土台の上にSF2P+が2027〜28年に入るなら、Samsungの近い勝負どころはSF1.4そのものではなく、SF2からSF2P、SF2P+へ進む間にどれだけ設計移行の負担を抑えられるかになる。先端ロジックでは、微細化が進むほど標準セル、配線、電源、SRAM、パッケージングの制約が強くなる。顧客は新しいノードの理論上の性能だけで採用を決められない。既存IPをどこまで再利用できるか、検証期間をどれだけ短くできるか、量産時の歩留まりが製品価格に耐えるかが採用判断を左右する。

SF2P+の意味は、性能向上より設計資産の継続にある

SAFE Forum 2026での説明として伝えられたロードマップでは、2nmプラットフォームはSF2、SF2P、SF2P+、SF2Xの順に進む。SF2XはAIとHPCに最適化された後続プロセスとされ、将来世代でも既存IPとの互換性をできるだけ維持する方針が示された。SF2P+は単発の高性能ノードではなく、SF2Xへつなぐ中間の設計環境として置かれている。

Samsung幹部の説明として、SF2からSF2Pへの移行では消費電力が26%改善し、動作周波数が15%向上し、その改善の半分超をDTCOが担うと伝えられている。DTCOは、チップ設計と製造プロセスを別々に最適化するのではなく、配線、セル、電源、トランジスタ構造を合わせて調整する考え方である。Samsungは3nm GAAの量産発表でも、MBCFETのナノシート幅を調整できることが電力と性能の最適化に有利で、GAAの設計自由度がDTCOに寄与すると説明していた。

この数字はSF2P+そのものの性能を示すものではないが、SF2P+を読むうえでの前提になる。微細化だけで性能を伸ばしにくくなるほど、顧客はプロセス変更のたびにIPを作り直すより、既存の設計資産を使える範囲で電力、周波数、面積を詰めたい。SamsungがPlusノードを増やすのは、1.4nmまでの時間稼ぎではなく、顧客が次期チップの設計を止めずに進めるための選択肢を増やす動きといえる。

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AIチップでは、パッケージとメモリ接続まで採用条件になる

SamsungがこのロードマップをSAFE Forumで示したことにも意味がある。SAFEは、EDA、IP、クラウド、デザインサービス、OSAT、マルチダイ統合を含む同社の設計支援エコシステムである。AI/HPCチップでは、ロジックの微細化だけで製品は完成しない。大規模な演算ダイ、HBM、I/Oダイ、電源供給、チップレット間接続をまとめ、検証可能な設計フローに落とし込む必要がある。

Samsung FoundryのHPC/AI向けページは、同社がGAAをAI時代の電力・性能要求に必要な構造と位置づけ、計算・グラフィックス、データセンター訓練、推論向けに5nm4nm3nm GAA、2nm GAAを推奨プロセスとして並べている。同じページでは、チップレット、高度なパッケージング、ロジックとメモリの統合、SerDes、Ethernet、PCIe、UCIe、BoW、HBMなどのIPを同じ文脈で扱う。SamsungにとってSF2P+やSF2Xは、製造ノード名であると同時に、AI/HPC向け設計資産を呼び込むための看板でもある。

この文脈では、HBM4との接続も無視できない。7月1日のSAFE Forumでは、SamsungがHBM4のベースダイを自社4nmプロセスで作り、10Gbpsでの信号品質を確認し、最大11.7Gbpsまで速度を上げられる技術余地を確保したとの説明があったと伝えられている。これは2nmロジックそのものの仕様ではないが、AIチップを採用する顧客にとっては、ロジック、メモリ、パッケージングを同じ設計計画の中で扱えるかどうかが重要になる。

TSMCも2nm派生を増やし、競争は「移行のしやすさ」に広がる

Samsungの2nm派生強化は、競合の動きとも重なる。TSMCは自社サイトで、2nmのN2が2025年第4四半期に予定通り量産を始めたとしている。2026年4月のNorth America Technology Symposiumでは、A14の直接縮小版であるA13を2029年に投入し、A12も2029年に予定すると発表した。2nmプラットフォームでは、N2Pから3〜4%の速度向上、または8〜10%の消費電力削減、1.02〜1.03倍のロジック密度改善を狙うN2Uを2028年に生産予定としている。

この比較から見えるのは、先端ファウンドリの競争がノード番号の早さだけで決まらなくなっていることだ。TSMCもSamsungも、基本ノードを出した後に用途別の派生を増やし、AI/HPC、モバイル、自動車、パッケージングを分けて顧客の移行コストを下げようとしている。顧客側から見れば、最先端ノードに一度で飛び移るより、成熟した2nmファミリーの中で設計資産を保ちながら性能を積み上げるほうが、製品投入のリスクを抑えやすい。

Samsungにとっての課題は明確である。SF2が2025年後半に量産へ入り、SF2Pが2026年後半に続くとしても、SF2P+とSF2Xが顧客に選ばれるには、性能向上の説明だけでは足りない。IP互換、PDKの完成度、SRAMや配線の実効密度、HBMを含むパッケージング、量産時の歩留まりまで、採用判断に必要な情報を段階的に示す必要がある。

1.4nmの2029年量産目標は、Samsungが将来の先端ノード競争から退いたという意味ではない。むしろ、SF1.4までの時間を2nm世代の派生で埋め、顧客がAI/HPC向けチップを設計できる現実的な足場を作れるかが、同社のファウンドリ事業にとって次の試金石になる。