Sandiskは2026年8月13日のInvestor Dayで、初のHigh Bandwidth Flash(HBF)メモリダイをテープアウトしたと明らかにした。2027年には、HBFを組み込んだAI推論製品のサンプルを出す計画も示した。8月初めにSandiskとSK hynixが初の公開仕様を発表したばかりであり、HBFは規格づくりと並行して製造用設計を確定する段階へ進んだことになる。
ただし、2028年の量産開始をSandiskが約束したわけではない。公開されたInvestor Day資料に量産年の記載はなく、みずほ証券は2028年に量産拡大と売上計上が始まる可能性を挙げている。今回の更新が確定させたのは、テープアウトと2027年の製品サンプルまでだ。
テープアウトで何が進み、何が残ったか
テープアウトとは、回路設計を確定して製造用データを工場へ渡す節目を指す。動作する量産品の完成とは違う。この後は試作ウェハーを製造して電気特性を確かめ、積層・パッケージングとコントローラー統合を経て、顧客側のシステムで評価する。
Sandiskが2025年8月に示した計画では、HBFメモリの最初のサンプルを2026年後半、HBFを使う推論デバイスのサンプルを2027年初めに届けるとしていた。今回の資料は「最初のHBFメモリダイをテープアウト」「最初のHBF推論製品サンプルは2027年」と記した。後者の年は維持された一方、メモリサンプルの出荷完了までは明言していない。2026年後半という従来の期間内に、試作ダイから評価用メモリへ移れるかが直近の確認点になる。
Goldman SachsもInvestor Day後のリサーチノートで、初のHBFメモリ製品がテープアウトし、最初のサンプルを2027年に見込むと報告した。量産時期は別の話だ。
512GBと3.0TB/sが狙う推論の隙間
HBFはDRAMではなくNANDフラッシュを積層し、GPUやCPUの近くに置く読み出し重視のメモリである。SandiskはHBMと同等の読み出し帯域を狙いながら、容量を8〜16倍に増やす構想を掲げる。2025年の技術資料では、第1世代の目標を16段積層で512GB、読み出し帯域を1.6TB/sとしていた。
SandiskとSK hynixがOpen Compute Project(OCP)で公開した初期仕様は、8段と16段のNAND積層、最大512GBの容量を定めた。帯域はGrade 1から3までの約0.4TB/s〜3.0TB/sに分かれる。プロセッサーとの接続にはチップレット向けの公開インターフェースであるUCIeを採用し、電気特性、積層パッケージの信頼性、読み書きのソフトウェア指針も規定した。
SK hynixはHBFを、HBMとSSDの間に加わる新しいメモリ層と説明する。SandiskはHBFをHBMと混載する案と、HBFだけで構成する案を示した。演算装置から分離したメモリとして使う構成や、HBMをキャッシュにする階層構成も想定しており、HBMを一律に置き換える設計には絞っていない。
4台対8台、社内シミュレーションの読み方
Investor Dayで最も目を引く数字は、4台のHBF搭載GPUが8台のHBM搭載GPUと同じトークン出力を達成したという社内シミュレーションだ。モデルはQwen3-480B-A35Bで、bfloat16では960GBを必要とする。両構成ともGPU当たりの総帯域を12.8TB/sとし、メモリ容量はHBFが4TB、HBMが192GBに設定された。
この差は、HBFがGPUの演算能力を2倍にしたという意味ではない。960GBのモデルを演算装置の近くへ収める容量があるため、モデルを保持する目的でGPUを増やす必要が減るという比較である。Sandiskは最小構成ならHBFでGPU 1台、HBMで8台が必要になるとも試算した。モデル容量がHBM内に収まる処理や、書き込み性能と低遅延を強く求める学習処理へ、そのまま当てはめることはできない。
結果は量産ハードウェアを第三者が測ったベンチマークでもない。2025年の別の社内シミュレーションでは、Llama 3.1 405Bの8ビット学習済み重みを読む条件で、HBFと容量無制限と仮定したHBMの性能差を2.2%以内としていた。Sandisk自身が、結果は条件によって変わると注記している。今後の製品サンプルでは、レイテンシ、耐久性、熱、エラー処理を含む実機データが必要になる。
2028年量産はまだ会社目標ではない
みずほ証券のノートは、2027年のサンプルに続き、2028年に量産が立ち上がって売上に寄与する可能性を示した。表現は「potentially」であり、Sandiskの確定日程ではない。ゴールドマン・サックスの公開ノートも2027年のサンプルには触れるが、2028年の量産開始を会社計画としては記していない。
量産には、ダイの動作確認に加え、16段積層の歩留まり、発熱、NANDの書き換え耐性を用途に合わせて管理する仕組みが要る。さらに、GPUやAIアクセラレーターの設計者がHBFを採用し、ソフトウェアが新しいメモリ階層を使い分けなければ製品にはならない。GoogleとTenstorrentはOCPのHBFワークストリームに参加したが、特定のアクセラレーターへの搭載は発表されていない。
初期仕様の公開から10日後に明かされたテープアウトは、HBFが構想図だけの段階を抜けた証拠になる。次の判定材料は、2026年後半にメモリサンプルが顧客へ届くか、2027年の推論製品で公称帯域と容量を再現できるか、そして2028年の量産見通しが顧客採用と受注で裏づけられるかである。



