Marvell Technologyは2026年8月19日、Google向けカスタム半導体製品を開発する商業契約と、Googleに株式購入権を与えるワラント契約をSECへ開示した。商業契約の締結日は7月29日、ワラントの発行日は8月18日である。今回は両社名と対象製品の範囲に加え、購入実績に連動する経済条件まで開示された。

もっとも、数字だけを見ると読み違えやすい。Googleが全株を行使する際の価格は約122億ドルだが、これはGoogleがすでに投じた金額でも、Marvellが受け取った売上でもない。対象製品の購入はGoogleの裁量であり、大半の権利はその累計売上に結び付く。今回の契約は、TPU供給網で誰が中核製品を担うのかという問いを、半導体の機能と契約条件に分けて読む必要を示す。

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「122億ドル」より重い1200億ドルの売上条件

GoogleはMarvell株58,970,907株を1株206.58ドルで取得できるワラントを得た。全株を行使した場合の支払額は12,182,209,968.06ドル、約121.82億ドルとなる。したがって、これを「122億ドル出資」と呼ぶことはできない。株式購入権の行使価格総額であり、行使自体もGoogleの裁量に委ねられている。

株数の内訳が契約の実態をさらに明確にする。1,360,867株、全体の約2.3%は、発行から1年間に3カ月ごと、時間の経過に応じて権利が確定する。残る57,610,040株、約97.7%は、Marvellの「対象売上」が5億ドル増えるごとに240分の1ずつ確定する仕組みだ。

240回すべての条件を満たすには、累計1200億ドルの対象売上が必要になる。測定期間は2026年8月1日から2033年1月29日までで、通常の満了は2033年8月18日午後5時(カリフォルニア時間)である。1200億ドルはGoogleの発注確約でもMarvellの売上予想でもなく、最大の権利確定に必要な累計額にすぎない。

さらに、GoogleのMarvell株保有には当初4.999%以下という上限が置かれた。Googleは61日前に書面で通知すれば上限を変更できるが、契約締結時点で58,970,907株を即座に保有するわけではない。ワラントは、将来の対象売上と連動して両社の利害を結ぶ設計である。

ここでいう対象売上は、MarvellのGoogle向け売上すべてではない。対象製品は、個別の作業範囲記述書などに基づいてカスタム開発され、Googleが製品全体を第三者へ販売できるか決める権利を持つ半導体に限られる。契約時点の対象品一覧は公開資料から省かれており、将来の製品は両社が書面で追加する。1200億ドルへ近づく速さは、Googleの調達額に加え、どの製品がこの定義へ入るかでも変わる。

TPU本体の全面移管とは読めない契約範囲

Marvellの8-Kが対象に挙げたのは、「TPUエコシステムに付随する」カスタムシリコンである。具体的にはAI推論アクセラレータ、ストレージコントローラー、ネットワークインターフェースコントローラー、メモリーインターフェースコントローラー、ニアメモリーコンピュートを含む。列挙の範囲は広いが、Google TPU本体の設計をMarvellへ移すとは開示していない。

ワラント契約は「Kestrel」の最終量産版をGoogleが製品認定した日を「製品ローンチ」と定義する。ただし、KestrelがTPU、推論アクセラレータ、周辺コントローラーのいずれなのかは開示されていない。製品名から役割や量産時期を補うことはできない。

Googleが4月に公式発表した最新世代は第8世代TPUの8tと8iである。8iは推論と強化学習を対象に288GBのHBMと384MBのSRAMを搭載し、サーバー当たりの物理CPUホスト数を2倍にしてAxionへ移行する。両製品は2026年後半の一般提供予定だ。Googleの公式仕様とMarvellの開示を並べると、製品名をTPUに限定せず、推論からネットワーク、メモリー周辺までシステム全体を分担する契約だと分かる。一方で、Kestrelと8t/8iの対応関係は確認されていない。

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Broadcomは2031年までGoogleの将来世代TPUを担う

Marvellとの契約は、Broadcomの置き換えを意味しない。Broadcomは4月6日の8-Kで、Googleの将来世代TPUを開発・供給する長期契約と、次世代AIラック向けネットワークなどを最長2031年まで供給する契約を開示している。Marvellの対象範囲とBroadcomの契約範囲は重なる部分があり得るが、開示上は同じ製品を同じ条件で分け合う関係とは限らない。

Broadcomの開示には、Anthropicが2027年からBroadcom経由で約3.5GWの次世代TPU計算能力へアクセスする計画も含まれる。ただし利用はAnthropicの商業的成功に依存する。ここでも、計画されたアクセスと実際の利用量を同一視してはいけない。

むしろGoogleの供給網は、機能ごとに契約相手を分ける構成として読む方が無理がない。TPU本体と推論アクセラレータを分け、ネットワークやメモリー周辺にも別の担当を置ける。Marvellの新しい開示は、その分担に売上連動型のワラントという経済条件を加えた。Broadcomの長期契約が残る以上、受注喪失や独占の変化まで結論付ける根拠はない。

MediaTekの量産計画とAMD観測は確度が違う

MediaTekは7月31日の決算説明会で、米国の大手クラウドサービス事業者向けとして初のAIアクセラレータASICを2026年第4四半期に生産開始する予定だと説明した。顧客名は公表していない。同社は2026年のデータセンター売上を20億ドル超と見込み、2027年に自社が獲得可能とみる市場規模(SAM)を80,000,000,000ドル800億ドル)、シェア目標を15〜20%に引き上げた。第2のAIアクセラレータASICも2028年量産に向け、歩留まりと信頼性は計画通りとしている。

これらはMediaTek自身の公式説明だが、顧客がGoogleであることや、特定のTPU世代に採用されることは示していない。Marvellの契約、Broadcomの長期契約、MediaTekの量産見通しを一列に置いても、それぞれの対象製品と顧客開示の水準は異なる。

一方、SemiAnalysisの顧客向けメモの抜粋では、市場観測としてGoogleがAMDと第10世代TPUプロジェクトに取り組んでいるとされる。AMDのCPU IPや先端パッケージを候補理由に挙げる分析もあるが、Google、AMD、Broadcomはいずれも公式に確認していない。Googleが公表した最新世代は8tと8iであり、AMDに関する話は契約開示と同じ確度では扱えない。

判断材料は株価の反応ではない。GoogleがKestrelをどの製品として認定するか、Marvellの対象売上がいつからどの範囲で積み上がるか、MediaTekが顧客名を明かすか、そしてGoogleかAMDが協業を公式に認めるかである。これらを確認できて初めて、GoogleのAI半導体供給網でどの役割が動いたのかを製品単位で判断できる。