米国半導体工業会(SIA)は11月3日、2026年第3四半期の世界半導体売上高が5177億ドルとなり、前期比24.1%増加したと発表した。9月の売上高は1726億ドル(3か月移動平均)で、前年同月比146.8%増という異例の伸びを記録した。注目すべきは、この実績と世界半導体市場統計(WSTS)が8月に示した2026年通期の計算値1兆6550億ドルとの隔たりだ。上半期と第3四半期の実績を差し引くと、第4四半期の売上高は第3四半期を約16%下回る計算になる。6月時点の成長率を前提とした通期の計算値は、すでに市場の実勢から乖離し始めている可能性がある。

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前期比20%超の成長が3四半期連続、日本市場の存在感は低下

SIAによると、9月の世界半導体売上高は前月比でも7.9%増加した。地域別の前年同月比では、米州が191.7%増、アジア太平洋・その他が141.4%増、中国が124.9%増、欧州が102.5%増、日本が73.4%増となり、すべての地域で大幅な成長を記録した。SIAのMichael Robbins会長兼CEOは、世界半導体市場が3四半期連続で前期比20%超の成長を達成したと説明している。第2四半期についても、8月の発表では売上高4033億ドル、前期比35.1%増と報告されていた。

一方、日本市場の成長は世界全体の勢いに追いついていない。9月の日本向け売上高は前年同月比73.4%増と、主要地域の中で最も低い伸び率だった。ただし、前月比では8.7%増と米州の11.0%増に次ぐ成長を記録しており、日本市場そのものが停滞しているわけではない。

WSTSの2026年春季予測では、日本市場の年間売上高は2025年の447.2億ドルから2026年には570.5億ドルへ増加する見通しだ。しかし、世界市場に占める割合は5.6%から3.8%へ低下すると予測されている。世界市場の拡大が日本市場を大幅に上回るためだ。今回の第3四半期の売上高は、前期比24.1%増から逆算した改定後の第2四半期売上高(約4172億ドル)を約1005億ドル上回る。この増加額だけで、2025年の日本市場の年間売上高447.2億ドルの2倍を超える。

なお、SIAが公表する月次売上高は、WSTSが集計する3か月移動平均である。四半期売上高は四半期末月の移動平均を3倍した金額にほぼ等しく、9月の1726億ドルを3倍すると5178億ドルとなり、今回の第3四半期売上高5177億ドルとほぼ一致する。移動平均は直近3か月の変動を平準化するため、売上高が急増している局面では最新月の実績を下回る。そのため、9月単月の実際の売上高は1726億ドルより高かった可能性がある。

通期1兆6550億ドルに収めるには、第4四半期に約16%の減収が必要

WSTSは8月6日の発表で、2026年通期の世界半導体売上高が1兆6550億ドルに達するという計算結果を示した。前年比では約108%増となり、6月の春季予測で示した1兆5112億ドルから上振れする。ただし、WSTSはこの数値について、新たな市場予測ではないと明記している。6月の春季予測の第2四半期部分を実績値に置き換えただけで、第3四半期以降の成長率には従来の想定をそのまま適用しているためだ。

今回の第3四半期実績を反映すると、通期の計算値との隔たりが明確になる。WSTSが発表した上半期売上高7020億ドルと、第3四半期の5177億ドルを通期1兆6550億ドルから差し引くと、第4四半期に残される売上高は4353億ドルとなる。これは第3四半期から15.9%減少する水準だ。

指標 売上高
2026年上半期実績(WSTS、8月発表) 7020億ドル
2026年第3四半期実績 5177億ドル
8月の通期計算値 1兆6550億ドル
通期計算値に収めるための第4四半期売上高 4353億ドル
第4四半期の必要な前期比変化率 -15.9%
第4四半期が第3四半期と同額だった場合の通期売上高 1兆7374億ドル

第4四半期の売上高4353億ドルは、12月の3か月移動平均に換算すると1451億ドルとなる。つまり、9月の1726億ドルから3か月間で15.9%減少しなければならない。しかし、9月時点の月次売上高は前月比7.9%増と拡大を続けており、現時点で急減速の兆候は確認できない。仮に第4四半期の売上高が第3四半期と同じ5177億ドルにとどまった場合でも、通期売上高は1兆7374億ドルに達する。これは8月の計算値を5.0%、6月の春季予測を約15.0%上回る水準だ。

さらに、この試算には上半期の売上高がその後に上方修正された影響を反映していない。SIAは当初、6月の売上高を1345億ドルと発表したが、9月に公表した7月分の統計では1379億ドルへ修正している。今回発表された第3四半期の5177億ドルと前期比24.1%増という数字から逆算すると、第2四半期の売上高は当初の4033億ドルではなく約4172億ドルとなる。

この差額約139億ドルが上半期の売上高にそのまま上乗せされると仮定すれば、通期1兆6550億ドルに収めるための第4四半期売上高は約4214億ドルまで縮小する。12月の3か月移動平均に換算すると約1405億ドルであり、必要な減少幅はさらに大きくなる。なお、6月の春季予測1兆5112億ドルを基準に同じ計算を行うと、第4四半期に残る売上高は2915億ドルにすぎず、第3四半期比で43.7%の減少が必要になる。

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最大の不確定要素はメモリー市場の急変

もっとも、半導体市場の急成長が第4四半期にも続くとは限らない。最大の不確定要素は、現在の市場拡大を牽引するメモリー需要と価格の動向だ。

WSTSの春季予測では、2026年のメモリー市場は前年比約250%増加し、売上高が8000億ドルを超えると見込まれていた。これは世界半導体市場全体の予測値1兆5112億ドルの半分以上に相当する。上半期の実績でも、メモリーの売上高は前年同期比305%増と、ロジックの45%増を大きく上回った。AI向けデータセンター投資の減速やメモリー価格の反落が起きれば、半導体市場全体の売上高が短期間で大きく減少する可能性はある。

また、3か月移動平均には市場の転換点が遅れて反映されるという問題もある。実際の単月売上高が減少に転じても、その影響が移動平均に十分表れるまでには時間がかかる。9月までの統計で成長が続いているからといって、第4四半期に減収が起きないとは断定できない。

ただし、今回の分析で問題にしているのは、第4四半期の売上高が増えるか減るかではない。WSTSが8月に示した1兆6550億ドルという数字が、第3四半期までの実績を反映した新たな予測ではないという点だ。WSTS自身も6月時点の成長率を引き継いだ計算結果であると明記しており、第4四半期に約16%の減収が起きると予測したわけではない。実際に市場が急減速すれば通期売上高はこの計算値に近づくが、それだけで6月時点の予測前提が妥当だったと証明されるわけではない。

焦点は12月の3か月移動平均とWSTSの次期予測

今後の判断材料となるのは、SIAが毎月発表する売上高の推移だ。8月時点の通期計算値と整合する目安は、12月の3か月移動平均が1450億ドル前後まで低下することである。上半期の修正前の数値を用いた場合は1451億ドル、前述の約139億ドルの改定分を上半期に反映した場合は約1405億ドルとなる。この水準まで下がれば、2026年通期の売上高が1兆6550億ドル付近に収まる可能性が高まり、従来の計算値を大きく上回るという見方は弱まる。

それより早く市場の変化を捉えるには、10月分の月次発表が重要になる。3か月移動平均の仕組み上、10月の移動平均が9月の1726億ドルを下回るのは、10月単月の売上高が集計対象から外れる7月単月の売上高を下回った場合に限られる。月次統計の改定がないことを前提に、この条件が満たされれば、直近の売上高が夏場の水準を割り込んだことを意味し、市場の転換点を判断する重要な手掛かりとなる。

現時点では、6月の成長率を前提とした通期の計算値より、毎月更新されるSIAの売上統計の方が市場の変化を捉えるうえで有用だ。WSTSが次に公表する新たな市場予測では、第3四半期までの急成長をどこまで織り込み、メモリー需要や第4四半期の成長率をどう評価するかが注目される。