TrendForceは2026年10月22日、2027年の世界サーバーCPU出荷数量が前年比40%以上増加するとの予測を発表した。2026年の31%増に続く大幅な成長で、AIエージェントの普及に伴うCPU需要の拡大が主な要因になるとみている。同時に、ArmベースのCPUが占める市場シェアは2027年に約30%まで上昇する見通しだ。ただし、市場全体が急速に拡大するなかでは、IntelやAMDが採用するx86アーキテクチャのシェアが低下しても、出荷数量そのものは増える可能性がある。AIの処理内容が変化することでCPUに求められる役割が広がり、Armの成長とx86の出荷増加が両立し得る状況が生まれている。

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AIエージェントの普及でCPUの役割が拡大

TrendForceが注目しているのは、サーバーに搭載されるCPUと、GPUやAI処理専用に設計されたASICの構成比率の変化だ。同社が10月22日に発表した予測によると、CPUとGPU・ASICの比率は、従来の1対8から1対2、さらには1対1へと変化していく見通しだ。この予測は主要事業者が計画するサーバーラックの構成や成長見通しに基づいており、現在稼働しているすべてのデータセンターの平均構成を示したものではない。

こうした変化の背景にあるのが、AIエージェントの普及だ。従来の生成AIでは、ユーザーからの入力に対してモデルが回答を生成する処理が中心だった。一方、AIエージェントは回答を生成するだけでなく、コードの実行や外部ツールの呼び出し、その結果に基づく次の処理など、複数の作業を連続して行う。AIモデル自体の推論をGPUや専用アクセラレーターが担う場合でも、周辺のソフトウェアや実行環境を動かすにはCPUが必要になる。AIエージェントがより複雑で長時間の作業を担うようになれば、アクセラレーターの増設だけでなく、それを支えるCPUの処理能力も重要になる。

Armが10月15日に公開したFuriosaAIとのシステム構成例は、こうした役割分担を具体的に示している。この構成では、Arm AGI CPUがAIエージェントの実行管理やツールの実行、補助サービスを担当し、専用アクセラレーターがAIモデルへの入力処理や出力生成を受け持つ。Arm自身が紹介した構成例ではあるものの、CPU需要が増える理由は、GPUの処理をCPUで代替するためだけではないことが分かる。

NVIDIAも5月31日に発表したVera CPUについて、Pythonの実行環境や隔離された環境でのコード実行などを主要な用途に挙げている。VeraはGPUと組み合わせたシステムだけでなく、CPUを中心とする独立したサーバーにも採用できる設計だ。AIエージェントが利用する実行環境や補助サービスが増えれば、GPUに接続するホストCPU以外にも需要が生まれることになる。

CPUとアクセラレーターの構成比が変わる影響は小さくない。GPUやASICの数を一定と仮定すると、CPUとの比率が1対8から1対2になれば、必要なCPUの数は4倍になる。さらに1対1まで変化すれば8倍だ。ただし、実際には用途やシステム構成、導入時期が異なるため、こうした倍率をそのまま市場全体の出荷成長率に当てはめることはできない。TrendForceが予測する40%超の成長率は、これらの構成変化を含めたサーバーCPU市場全体の見通しである。

Armのシェアは30%へ、x86の出荷数量も増える可能性

2025年のサーバーCPU市場では、x86アーキテクチャが約90%のシェアを占め、ArmベースのCPUは10%を超えた段階だった。TrendForceは、Armのシェアが2026年に20%を超え、2027年には約30%に達すると予測している。ここでいうArmベースのCPUには、AWSやNVIDIAなどが開発・供給する製品も含まれており、Arm自身が販売するCPUだけを対象とした数字ではない。

ただし、シェアの低下と出荷数量の減少は同じ意味ではない。市場シェアは全体の出荷数量に占める割合であるため、市場そのものが急拡大していれば、シェアが下がっても販売数量は増える場合がある。2027年にサーバーCPU市場全体が40%超の成長を遂げるという予測を踏まえると、Armのシェア拡大がそのままx86の出荷減少につながるとは限らない。

また、x86市場にはIntelとAMDの両社が含まれている。Armのシェアが拡大する一方、x86市場内でAMDの存在感が高まれば、IntelとAMDの出荷数量は異なる動きを示す可能性がある。そのため、アーキテクチャ別のシェアだけからIntel単独の販売動向を判断することはできない。個々の企業の成長を評価するには、企業別の出荷数量や供給状況も確認する必要がある。

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Arm陣営の成長を支えるクラウド大手の自社CPU

ArmベースのサーバーCPUが急速に普及する背景には、大手クラウド事業者による独自CPUの開発と、NVIDIAの市場参入がある。TrendForceは、AWSのGravitonシリーズに加え、GoogleのAxionの大量出荷やMicrosoftのCobalt 100の量産を成長要因として挙げている。さらに、ArmのAGI CPUも市場に加わり、2027年にはNVIDIA Veraの出荷拡大がArm全体のシェアを大きく押し上げると予測している。

NVIDIAのVeraは、GPUサーバーを制御するホストCPUとしてだけでなく、AIエージェントのコード実行やデータ処理を担う独立したCPUサーバーにも採用できる。これにより、同社はGPUを中心としたAIシステムに加え、CPU主体の計算需要も取り込める可能性がある。ただし、5月の発表時点でAnthropicはVeraの導入を評価している段階だった。導入候補として企業名が挙がっていることと、実際の発注数量が確定していることは区別する必要がある。

一方、x86陣営では、需要の拡大に対応できるだけの製品を供給できるかが課題になっている。TrendForceによると、Intelは新製品の製造プロセスやパッケージングに関する問題によって出荷が遅れ、既存のEmerald RapidsとGranite Rapidsへの依存が続いている。社内の生産能力にも制約があり、顧客からの注文を十分に満たせないことが市場シェアの低下につながっているという。

AMDも供給能力の制約を受けている。同社の主力製品はGenoaとTurinで、次世代のVeniceは2026年に小規模な量産を開始したものの、TSMCの生産能力が逼迫しているため、追加注文への対応が制限されているとTrendForceは分析している。それでも、AMDの2026年のサーバーCPU市場シェアは約27%まで上昇する見通しだ。この27%はサーバーCPU市場全体に占める割合であり、x86市場内だけのシェアではない。

こうした状況を見ると、サーバーCPU市場の競争は、命令セットやプロセッサー単体の性能だけでは決まらなくなっている。クラウド事業者が自社のサービスに適したCPUを設計できるか、半導体メーカーが必要な数量を安定して供給できるかも重要だ。AIエージェントによってCPU需要が拡大するなか、その成長をどの企業が取り込めるかは、製品の競争力と生産能力の両方に左右される。

CPU出荷40%増、AIサーバー36%増、売上90%増の違い

TrendForceは10月14日に発表した別の市場予測で、2027年のAIサーバー出荷台数が前年比約36%増加し、売上高は90%超増の約9,200億ドルに達するとの見通しを示している。今回のサーバーCPU出荷数量の40%超増という予測と似た数字に見えるが、これらはそれぞれ異なる対象を測定したものだ。

サーバーCPUの出荷予測はチップの個数を対象としており、一般的なサーバー向けのCPUも含まれる。一方、AIサーバーの出荷台数はシステム単位、売上高は販売金額を表す。これらを単純に比較したり、成長率の差を計算したりしても、CPUの供給不足や設備投資の過剰を判断することはできない。

2027年の市場予測 前年比 対象・単位 発表日
サーバーCPU出荷数量 40%超増 一般サーバー向けを含むCPUの個数 2026年10月22日
AIサーバー出荷台数 約36%増 AIサーバーのシステム台数 2026年10月14日
AIサーバー売上高 90%超増 AIサーバーの販売金額 2026年10月14日

この表は、TrendForceが公表したサーバーCPUとAIサーバーの市場予測を、集計対象と単位ごとに整理したものだ。いずれも2027年を対象としているが、公表日と集計対象は異なる。また、サーバーに搭載されるCPUの個数は構成によって変わるため、CPUの出荷数量とサーバーの台数が同じ割合で増えるとは限らない。

AIサーバーの出荷台数と売上高の成長率に大きな差がある背景には、システムの販売価格の上昇もある。TrendForceは、メモリなどの部品不足と価格上昇によって、次世代AIサーバーラックの平均販売価格が押し上げられると説明している。したがって、AIサーバーの売上高が90%以上増えたとしても、実際に導入される計算設備が同じ割合で増加するわけではない。クラウド事業者やデータセンター運営企業にとっては、必要な設備の数量だけでなく、その構成をどの程度の費用で確保できるかも重要になる。

設備投資額についても同様の注意が必要だ。TrendForceは、世界の主要クラウド事業者9社による2027年の設備投資額が1兆5,000億ドルを超えると予測し、前年比成長率の見通しを従来の50%から60%へ引き上げた。その背景には、サーバーや部品の価格上昇に加え、供給を確保するための前払いの増加もある。つまり、設備投資額が増えた分だけ、実際に稼働する計算設備が増えるとは限らない。

2027年のサーバー市場では、AIモデルの推論処理だけでなく、AIエージェントによるコード実行やツール操作などを支えるCPUの重要性が一段と高まるとみられる。今後の焦点は、各社が計画するCPUとアクセラレーターの構成が実際の製品出荷につながるか、そして拡大する需要に見合う生産能力を確保できるかという点だ。AIエージェントが一連の作業を完了するまでの処理を効率よく支えるには、CPUとアクセラレーターの適切な組み合わせに加え、必要なハードウェアを安定して調達できる体制が欠かせない。