ポーランドのSMR開発会社SGEが、英国で小型モジュール炉を14基並べる計画を打ち出した。対象はGE Vernova Hitachi Nuclear EnergyのBWRX-300で、合計出力は4.2GWに達する。英国政府はすでにRolls-Royce SMRを最初の政府系SMR計画の技術パートナーに選んでいるが、SGEの申請はそこへ別の道筋を持ち込む。国が開発会社を選ぶ段階から、民間側がまとまった炉型、資金、建設チームを持ち込み、政府に市場への入口を求める段階へ移った。
SGEの発表によれば、同社は英国のAdvanced Nuclear Frameworkに基づく申請を提出した。発電規模は現在の英国電力需要の11%に相当し、少なくとも60年にわたり約800万世帯分の電力に当たるという。14基という数より新しいのは、最初から複数サイトに同じ炉型を繰り返し置く構想である。SMRの費用低減は、単機の小ささではなく、設計から建設までの工程を何度も反復できるかにかかる。
14基を三つのサイトへ置く計画
SGEの計画では、最初のサイトに300MW級のBWRX-300を6基置き、続く二つのサイトに4基ずつを配置する。開発チームにはSGEとGE Vernova Hitachiに加え、Samsung C&T、Laing O'Rourke、Aecon Groupが入る。Fermi Development、Etara、経験を持つ原子力事業者も加わり、英国側の事業主体としてSGE SMR UK Limitedが設立された。
日程はかなり先まで引かれている。SGEは2026年11月にAdvanced Nuclear Pipelineへ入ることを狙い、2027年前半にサイト選定と政府支援制度の交渉を終える計画だ。その後、およそ1年以内に主要投資、サイト準備、許認可作業を始め、最初の商業運転を2034年に置く。最初の分岐点は、どのサイトが選ばれ、どの支援制度で収入を安定させるかである。
ただし、サイト名と運転主体はまだ出ていない。SGEは「近く」公表するとしているが、最終交渉が残る。WNNは、申請が1500ページ超に及び、SGEがここまでに5000万ポンドを投じたと伝えている。数字は本気度を示すが、建設許可ではない。英国では原子炉設計の評価に加え、サイト固有の許認可と環境許可が要る。送電網接続や地域合意も別に進む。
BWRX-300は建設中だが、量産の実績はこれから
BWRX-300は沸騰水型の300MWe級SMRで、すでにカナダで建設段階に入っている。Darlington New Nuclear Projectでは2025年5月に建設が始まり、最初の1基は2029年末の完成、2030年末の商業運転が見込まれている。GE Vernova Hitachiによれば、同サイトでは4基で1.2GWを供給する計画だ。
この炉型の売りは、既存の大型炉であるESBWRの設計・許認可基盤を使い、自然循環と受動安全系を組み合わせる点にある。GE Vernova Hitachiは、1基で最大300MWを発電し、およそ30万世帯に電力を供給できるとしている。設計寿命は60年、燃料交換サイクルは12〜24カ月だ。量産時の建設期間については、初回コンクリート打設から燃料装荷準備まで24〜36カ月という目標も掲げる。
英国での規制面では、BWRX-300は2025年12月にGeneric Design AssessmentのStep 2を終えた。GE Vernova Hitachiは、Office for Nuclear Regulation、Environment Agency、Natural Resources Walesの評価で、安全やセキュリティ、保障措置、環境保護に関する根本的な不足は見つからなかったと説明している。とはいえ、Step 2は英国で建てられるという意味ではない。安全上重要な建設に進むには、より詳細な設計評価や、サイト固有の許認可が要る。
資金の争点は建設中に誰が負担するか
SGEは、英国計画を民間資金主導の投資として打ち出している。同社の説明では、Contract for Difference、つまり差額決済契約の枠組みを使い、National Wealth Fundとの関与も想定する。この形なら、運転開始前に消費者へ費用を請求しない、というのがSGEの主張だ。
ここが英国の原子力政策では大きい。GOV.UKの民生原子力ロードマップは、投資家と開発者がCfDとRegulated Asset Baseの両モデルについて政府と協議できるとしている。RABはSizewell Cで使われる方式で、建設中から消費者が費用に寄与する。一方、CfDは発電開始後に、事前に決めた価格と市場価格との差を調整する。WNNによれば、SGE側はHinkley Point C型のCfDを参考にしつつ、民間資金を呼び込みやすくする修正を提案している。
費用の数字も重い。WNNは、艦隊展開の段階で1基あたり22億〜25億ポンドをSGE側が目標としていると伝えた。14基なら単純計算で300億ポンドを超える。SMRは「小さいから安い」と言われがちだが、発電単価を左右するのは、最初の数基でつまずかず、同じ設計を続けて建てられるかどうかである。英国側が支援制度でどこまで価格リスクや政策変更リスクを引き受けるかが、民間資金の入り方を決める。
Rolls-Royceの横に、もう一つの2030年代前半計画
英国政府の本線は、すでに別に走っている。Great British Energy - Nuclearは2026年4月、Rolls-Royce SMRと契約を結び、英国初のSMRに向けた設計、規制当局との協議、計画手続きを始めた。Rolls-Royce SMRは2025年6月に優先技術パートナーに選ばれ、2025年の歳出見直しではこの契約と関連プログラムに26億ポンドが割り当てられている。こちらも将来の最終投資判断を待つ段階だ。
SGE案は、これと競合しながら補完もする。英国政府の民生原子力ロードマップは、2050年までに最大24GWの原子力発電容量を持つ目標を掲げ、2030年から2044年まで5年ごとに3〜7GWの投資判断を得る構想を示している。BWRX-300の14基4.2GWは、その投資判断サイクルに入り得る規模であり、政府本線の横に民間主導の候補が現れたことになる。
SGEにとっても、英国は単独案件ではない。同社はORLENとのポーランド案件を旗艦プロジェクトにしており、三つのサイトで作業を進め、最初の1基を2032年に運転開始する目標を掲げている。カナダのDarlingtonで建設が進み、ポーランドと英国で同じ炉型の艦隊案が並べば、BWRX-300は「各国で一基ずつ試す技術」から「国境を越えて同じ設計を反復する技術」へ近づく。
その絵が実現するかは、2027年前半のサイトと支援制度の決着で見えてくる。SGEが言う通り政府に建設費の直接支援を求めないとしても、長期の収入安定策、許認可の順番、送電網接続、地域との合意は英国側の制度に深く依存する。14基という数字は大きい。だが次の判断材料はもっと地味で、最初の6基を置く場所、誰が運転するか、そしてCfDの条件が投資家に十分な確実性を与えるかである。