Valveが公開した2026年8月の「Steamハードウェア&ソフトウェア 調査」で、Linuxの利用割合が3.90%へ下がった。前月比は0.11ポイント減で、7月の4.01%から再び4%を割ったことになる。もっとも、前年同月の2.64%と比べれば1.26ポイント高い。SteamOS Holoの比率低下と、他のLinux環境の伸びも同時に起きており、1カ月の境界線だけで成長の反転とは判断できない。
前年同月より1.26ポイント高い一方、3月より低い
Linuxの利用割合は2025年8月の2.64%から2026年8月の3.90%へ1.26ポイント増えた一方、2026年3月の5.33%からは1.43ポイント低い。月次ピークと前年同月比較では結論が異なる。
データを表で見る
| Linux (%) | |
|---|---|
| 2025年8月 | 2.64 |
| 2026年3月 | 5.33 |
| 2026年8月 | 3.9 |
3月の5.33%は前月から3.10ポイントも跳ね上がった値である。同じ月にWindowsは4.28ポイント下がり、macOSは1.19ポイント上がった。この動きが利用者のOS移行を反映したのか、回答者構成の変動を反映したのかは、公開情報だけでは切り分けられない。
この振幅の大きさ自体が、境界線をまたいだ1回の値より時系列を優先すべき理由になる。
8月の前月比0.11ポイント減を軽視する必要はない。ただし、2.64%から3.90%への前年同月差を相対値へ直すと47.7%増になる。8月値は前年同月を上回る一方、この1点だけでは持続的な上昇も成長の反転も判定できない。
SteamOSだけを見ればLinuxの広がりを取り違える
Steamの集計には二つの分母がある。全プラットフォームを合算した表示では、SteamOS Holoは全回答者の0.82%で、前月から0.07ポイント下がった。一方、Linuxだけに絞ると21.07%を占め、1.17ポイント減である。どちらも同じ項目だが、前者はSteam全体、後者はLinux回答者内の構成比を表す。
| Linux環境 | 全回答者内 | 前月差 | Linux回答者内 | 前月差 |
|---|---|---|---|---|
| SteamOS Holo | 0.82% | -0.07pt | 21.07% | -1.17pt |
| CachyOS | 0.60% | +0.03pt | 15.47% | +1.16pt |
| Arch Linux | 0.34% | +0.01pt | 8.78% | +0.49pt |
| Linux Mint 22.3 | 0.33% | 0.00pt | 8.38% | +0.26pt |
| Bazzite | 0.30% | -0.01pt | 7.76% | +0.03pt |
SteamOS Holoの低下に対し、CachyOSとArch Linuxは全回答者内でも増えた。Linux内の上位5項目を合計すると61.46%だが、最大のSteamOS Holoでも過半数には届かない。したがって、SteamOS Holoの増減だけでSteam上のLinux環境全体を代表させることはできない。
二つの表示は別々の調査結果ではない。Linuxの3.90%にSteamOS Holoの21.07%を掛けると、全回答者内の0.82%と丸め後に一致する。CachyOSも同じ計算で0.60%になる。内訳の増減を読むときは、全回答者とLinux回答者のどちらを分母にした値かをそろえる必要がある。
2026年8月のSteamOS HoloはLinux回答者内で21.07%だが、全Steam回答者では0.82%である。Linux 3.90%から0.82%を引くと、SteamOS Holo以外のLinux環境は表示値ベースの概算で全回答者の3.08%を占める。
この3.08ポイントは、表示値同士を引いた概算である。SteamOS Holoを使う端末もSteam Deckに限らず、調査表から端末台数や同一利用者の複数端末を分離することはできない。それでも、Linuxの利用割合の大半をSteamOS Holo以外が占めるという規模感は変わらない。
0.11ポイント減を成長反転と決めつけない
8月は全回答者の簡体字中国語が23.97%へ1.45ポイント上がり、英語は38.25%へ1.36ポイント下がった。Linux回答者に限ると、簡体字中国語は1.57%で0.19ポイント増、英語は82.54%で0.68ポイント減だった。全体の言語構成とLinux内の言語構成には大きな差があるため、回答者が増減する地域や言語圏によってOS比率も動き得る。
ただし、同じ月に簡体字中国語が増え、Linuxが下がったという並びは因果を証明しない。Steamの設定言語は国籍や居住地そのものでもない。Valveは調査を毎月実施し、参加は任意かつ匿名だと説明しているが、公開ページには標本数、抽出方法、回答率がなく、誤差幅も示していない。0.11ポイント差が統計的に有意かどうかは判定不能である。
この調査が役立つのは、同じ項目を長く追い、複数月にわたる変化を捉える場面だ。逆に、単月の増減から利用者数や販売台数を計算すると、非公表の母数を古い月間利用者数などで埋めることになる。3.90%はSteamの任意調査への回答内訳であり、PC市場全体のOS市場占有率ではない。
しかも、調査の変化量は小数第2位まで丸められている。前月比と各項目の増減を足しても、丸めの影響で完全には一致しない場合がある。0.11ポイントという見かけの精密さと、調査設計が保証する精度は同じではない。
Protonが広げた選択肢を測るには月次値を積み重ねる
Linuxで遊べるゲームの範囲は、2018年にValveがSteam PlayへProtonを組み込んでから変わった。ProtonはWineを基にした互換レイヤーで、Linux版がないWindows向けゲームもLinuxクライアントから導入して動かせる。Valveは現在、SteamOS上で18,000本を超えるタイトルが動作すると説明している。
SteamOSの公式対応端末は現時点でSteam DeckとLegion Go Sで、Valveは他のAMD搭載携帯型PCにも互換性を広げている。Bazziteのようなゲーム用途を意識したLinux環境も調査上で独立項目になった。ゲーム会社から見れば、Linux向けネイティブ版の販売本数だけを数えても、Proton経由で遊ぶ層やSteamOS端末の需要はつかめない。
とはいえ、Protonや携帯型PCが3.90%への上昇をどれだけ生んだかは、公開調査から切り分けられない。成長の持続性を判断するには、少なくとも前年同月を上回る状態が続くか、SteamOS Holo以外の概算3.08ポイントが保たれるかを追う必要がある。Valveが標本数と端末別内訳を示せば、4%という境界線より、Linuxゲーム環境がどこへ広がっているかを正確に測れるようになる。



