Steamの2026年9月のゲーム総売上高は推計17億ドルに達し、9月として過去最高を記録した。ゲーム市場分析会社Alinea Analyticsが10月1日に公表した推計で、前年9月を13%上回ったという。7〜9月の第3四半期も推計55億ドルと前年同期比12%増となり、年初から9月までの累計は165億ドルに達した。
ただ、記録更新を支えたのは話題の新作ばかりではない。売上上位作品の内訳を見ると、発売から年数がたったゲームや、継続的な課金で収益を上げる基本無料ゲームの強さも表れている。
上位500作品では、売上の約3分の2を前年以前のゲームが占める
9月の売上上位500作品では、2026年に発売されたゲームが売上に占める割合は33.6%だった。この500作品だけでSteam全体の9月売上の約4分の3を占めるため、市場の上位がどのような作品で構成されているかを見るうえで参考になる。ただし、Steamに存在する全作品の構成比ではない点には注意が必要だ。
Alineaの2026年9月の推計から逆算すると、上位500作品の売上の66.4%を、2025年以前に発売されたゲームが占める。2026年発売作品の33.6%を100%から差し引いた値で、元の割合の丸めによる誤差はあり得るものの、上位作品の売上のおよそ3分の2を旧作が担っていることが分かる。
発売年とは別に、既存シリーズに属するかどうかを分けた集計もある。2026年に発売された新規IPは上位500作品の売上の20.5%を占めた。一方、既存IPは79.5%で、そのうち3.8%がリメイクやリマスターだった。
| 分類の軸 | 対象 | 上位500作品の売上に占める割合 |
|---|---|---|
| 発売年 | 2026年発売 | 33.6% |
| 発売年 | 2025年以前発売 | 66.4%(上記から算出) |
| IP | 2026年発売の新規IP | 20.5% |
| IP | 既存IP | 79.5% |
| 販売方式 | 基本無料ゲーム | 25.6% |
出典はAlineaの9月推計。いずれも上位500作品の売上を分母にしているが、発売年、IP、販売方式という異なる切り口で分類した数字なので、行同士を足すことはできない。例えば、新作の続編は「2026年発売」と「既存IP」の両方に含まれる。新規IPの割合だけを見て、新作全体の比率と考えると実態を取り違えることになる。
新作のヒットに、旧作の大型アップデートが重なる
有料ゲームの9月売上では、『Wardogs』が推計8690万ドルで首位となった。『鬼武者Way of the Sword』の3040万ドル、『The Blood of Dawnwalker』の2690万ドルが続く。Alineaによると、上位には既存シリーズの新作だけでなく、新規IPも入っている。
| ゲーム | 2026年9月のSteam売上推計 | 発売時期・販売方式 |
|---|---|---|
| Wardogs | 8690万ドル | 9月10日に早期アクセス開始 |
| 鬼武者Way of the Sword | 3040万ドル | 9月4日発売 |
| The Blood of Dawnwalker | 2690万ドル | 9月3日発売 |
| Bodycam | 2420万ドル | 2024年に早期アクセス開始 |
| How to Fish | 1930万ドル | 8月下旬発売、本体価格7.99ドル |
出典はAlinea。売上額はいずれも9月にSteamで生じた分で、発売前の購入などを含む累計売上とは異なる。大型新作のすぐ下に、数年前から早期アクセスを続けている作品や、低価格のゲームも並んでいる。高い売上につながるパターンは一つではない。
とりわけ『Bodycam』は、早期アクセスを開始した月の推計1600万ドルを上回り、9月がこれまでで最も売上の大きい月になったという。開発元Reissad Studioの9月2日の更新告知では、装備構成を変更できるロードアウトシステムや塹壕を舞台にした新要素を追加し、アニメーションやサウンドも刷新している。
発売済みのゲームを大幅に更新し、再び遊ぶ理由を増やした時期と売上の伸びが重なった形だ。もちろん、このアップデートだけが増収の原因だと測定されたわけではない。それでも、発売から時間がたったゲームの売上が一方的に減っていくとは限らないことを示す具体例にはなる。
基本無料ゲームも大きな売上を生んでいる。『Counter-Strike 2』『Apex Legends』『PUBG』『Dota 2』の4作品だけで、9月に合計約1億6800万ドルを売り上げたとAlineaは推計している。Steam全体の9月売上の約10%に当たる。上位500作品の集計では、基本無料ゲームは作品数では16%だが、売上では25.6%を占めた。
無料のゲームが売上ランキングの上位に入ることに矛盾はない。ValveはSteamの公式売上ランキングについて、ゲーム本体だけでなく、DLCやゲーム内取引などを含む総売上で順位を決めると説明している。本体の購入額だけを見ていると、基本無料ゲームなどが継続的に生み出す収益を捉えられない。
一方、販売本数の多さが、そのまま売上額の順位につながるわけでもない。Alineaの推計では、『The Blood of Dawnwalker』はSteamで53万5000本以上を販売し、販売本数ではSteamが最大のプラットフォームだった。それでも累計売上は、Steamの3060万ドルに対してPS5が4000万ドルを超え、金額ではPS5が上回った。
Alineaはその理由として、地域別価格と、価格の高い市場にいるコンソール利用者の割合の違いを挙げている。同じ1本の販売でも、どの地域で、どの価格で売れるかによって売上への寄与は変わる。
17億ドルをValveの利益とは読めない
今回の17億ドルはAlineaによる外部推計であり、Valveが公表した決算値ではない。また、Steam上でゲームが生み出した売上額を、そのままValveの利益や開発会社の受取額と考えることもできない。
ValveのSteamworks支払いFAQでは、この違いを具体的に説明している。Steamworksのパートナーサイトで随時確認できる売上情報は総売上であり、返品やチャージバック、税金などはまだ差し引かれていない。月次レポートでは、そこから各種調整額を差し引いて純収益を求め、さらに契約上の収益分配率を適用して、開発側への支払額を算出する。
つまり、Steam上で計上された総売上と、Valveや開発元の最終的な取り分は同じではない。
ただし、このValveの会計処理を、そのままAlineaの推計方法に当てはめることもできない。今回のAlineaの記事では、税金や返金を推計にどのように織り込んでいるかは詳しく説明されておらず、月間総額の誤差幅も示されていない。
Alineaは自社サービスの説明で、自社の推計値とパブリッシャーなどが公表した実績を比較できるとしている。今回の記事でも、『Wardogs』の販売300万本が公表された時点で、Alineaの推計が302万本だったという例を紹介している。
ただし、これは特定作品の販売本数について推計と公表値が近かった事例であり、Steam全体の9月売上17億ドルの精度を保証するものではない。市場の規模や構成を知るための推計として使い、確定した売上高とは分けて考えるのが妥当だ。
市場が伸びても、新作が売りやすくなるとは限らない
2026年のSteam売上ランキングで101〜1000位に入る作品も、必ずしも中小規模の新作ばかりではない。Alineaが9月3日に公表した別の分析では、年初から当時までの売上を基に見ると、この900作品の83%が2026年より前に発売されていた。さらに、Steamでの累計売上が5000万ドルを超える作品が、この集団の2026年売上の51%を占めていた。
集計時点も対象範囲も9月の上位500作品とは異なるため、数字を直接比較することはできない。それでも、ランキングの中位にも過去の大型ヒットが数多く残っているという分析は、新作が実際に何と競争しているのかを考えるうえで重要だ。
発売から時間がたち、値下げされたり、大型アップデートで内容が増えたりした作品も、新作と同じSteamの売り場で利用者に選ばれる。市場全体の売上が伸びたからといって、新しく発売された作品まで売れやすくなったとは限らない。
また、今回の分析だけでは、PC本体やパーツの価格変化が利用者のゲーム支出にどのような影響を与えているかまでは分からない。ソフトウェアの総売上が増えていることと、利用者がPCを買い替えやすい環境にあることは別の問題だ。
今回の推計から見えるのは、買い切り型の新作、更新を続ける旧作、基本無料ゲームの継続課金が、同じSteam市場の中でそれぞれ大きな収益を生み出しているという構図である。
AlineaのRhys Elliott氏は、今後の発売予定も踏まえ、Steamの2026年年間売上が初めて200億ドルを超えると予測している。もちろん、これはまだ年末までの実績ではない。
その行方を見るには、大型新作の発売直後の売上だけでなく、既存作品がアップデート後もどれだけ売れ続けるか、新規IPが初動の後もプレイヤーを維持できるかを追う必要がある。Steam市場の成長が発売直後のヒットだけでなく、長期的な運営によってどこまで支えられているのかが分かれば、開発側にとっても、発売後の更新や運営へどれだけ投資する価値があるのかを判断する材料になる。
