Samsungの次期スマートフォン向けチップ「Exynos 2700」が量産段階に入ったと、韓国The Elecが2026年10月2日に報じた。生産量は前世代のExynos 2600より10%以上多く、Galaxy S27シリーズでは自社製チップを搭載するモデルが増える見通しだという。

ただし、最上位のGalaxy S27 Ultraへの採用はまだ決まっていない。今回の量産開始で前進したのは、2027年の主力スマートフォンへ供給するための準備だ。Ultraへの採用には、性能や消費電力、製造コストなどを見極める作業が残っている。The Elecの報道

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量産開始とUltra採用は別の段階

The Elecが伝えたのは、少量の試作品を作る段階から、ウェハー上に回路を形成する前工程の本格量産へ移ったという情報だ。完成したExynos 2700が、すでに大量に出荷されているという意味ではない。

同紙によると、Samsungは前工程を終えたウェハーの検査を外部の半導体組み立て・検査企業へ委託し、その後のパッケージングは自社で行う。工場へウェハーを投入してから完成品になるまでは、通常3〜4カ月かかるという。

2027年のGalaxy S27シリーズへ向けて生産を始める時期としては整合するが、この所要期間だけから端末の正確な発売日まで推測することはできない。

増産の理由として報じられているのは、標準モデルとPlusに加え、新たなProモデルにもExynosを採用する計画だ。The Elecによると、韓国と欧州向けのこれらのモデルにはExynos 2700を搭載し、米国や中国などではQualcomm製チップを採用する見通しだという。

ただし、Proモデルの追加も、地域ごとのチップ構成も、Samsungが正式に発表した計画ではない。

したがって、「前世代より10%以上多く生産する」という数字を、Galaxy S27 UltraにもExynos 2700が採用される証拠と考えるのは早い。報じられているProモデルの追加だけでも、生産量を増やす理由にはなる。

また、チップの生産量が10%増えたとしても、Galaxyシリーズ全体に占めるExynos搭載モデルの割合が10%増えるとは限らない。各モデルの販売台数や地域ごとの構成が分からなければ、実際の搭載比率は計算できない。日本向けモデルにどのチップが採用されるかも、今回の報道からは判断できない。

「9.5%高速」は8月にも報じられていた

聯合ニュースは2026年8月23日、Samsungのスマートフォン事業を担うMX事業部が社内で実施したGeekbench 6.5の試験で、Exynos 2700のマルチコア性能が、当時「Snapdragon 8 Elite Gen 6 Pro」と呼ばれていたQualcommの次期上位チップを9.5%上回ったと報じている。聯合ニュースの8月23日付報道

時系列で整理すると、今回の報道で新たに加わった情報が分かりやすい。

時点 公開された情報 読み取れる範囲
2026年8月23日 聯合ニュースが、開発中のQualcomm上位チップに対してExynos 2700のマルチコア性能が9.5%高かったと報道 Samsung社内のGeekbench 6.5試験とされる情報
2026年9月22日 QualcommがSnapdragon 8 Elite Extreme Gen 6と標準版を正式発表 製品名と2種類のラインアップが正式に判明
2026年10月2日 The ElecがExynos 2700の前工程量産開始を報道し、9.5%差にも言及 生産段階が進んだことと、内部性能評価についての情報

表の根拠は聯合ニュース、Qualcommの9月22日付発表、The Elecの公開日と記載内容である。

つまり、9.5%という性能差そのものは10月に初めて明らかになった数字ではない。今回新たに報じられた重要な情報は、Exynos 2700がウェハーの量産段階へ進んだことだ。

ただし、8月と10月の報道がまったく同じ試験結果を指しているのか、それとも別の測定結果なのかは確認できない。8月の記事では比較対象が発表前の「Pro」という名称だったのに対し、10月の記事では正式発表後の「Extreme」という名称が使われている。

名称が変わったというだけで、比較に使ったチップの仕様や試験条件まで同じだったと判断することはできない。

The ElecはQualcomm側のマルチコアスコアとして12,856点を挙げ、9.5%の差を当てはめればExynos 2700は14,000点を超えると説明している。ただし、これは9.5%という差から計算した推定値であり、Exynos 2700について公開されたGeekbenchの実測記録ではない。

内部試験に使われた端末や消費電力、冷却条件も確認できないため、この数字をそのまま市販スマートフォン同士の性能差と考えることもできない。

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「2nm」だけでは性能も電力効率も決まらない

The Elecによると、Exynos 2700はSamsung Foundryの第2世代2nmプロセス「SF2P」で製造される。

Samsungは公式の製造プロセス紹介で、第1世代のSF2が2025年に量産へ入ったことを公表している。今回の報道は、その2nm世代を改良したSF2Pを次期主力チップに採用するという内容だ。

競合するQualcommも、9月22日の発表でSnapdragon 8 Elite Extreme Gen 6と標準版の双方が2nmプロセスを採用すると説明している。

ただし、どちらも「2nm」と呼ばれているからといって、製造工程やトランジスタの設計が同じになるわけではない。「2nm」という名称だけで性能や電力効率を比較することはできない。

CPUの構成も性能を大きく左右する。

前世代のExynos 2600の公式仕様では、最大3.8GHzのC1-Ultraを1コア、3.25GHzのC1-Proを3コア、2.75GHzのC1-Proを6コア搭載する10コア構成となっている。

Geekbenchのようなマルチコア性能には、製造プロセスだけでなく、何個のCPUコアをどのクロックで動かすかも影響する。Exynos 2700の正式なCPU構成はまだ明らかになっておらず、前世代の仕様から推測して確定することはできない。

スマートフォンで重要なのは、短時間のベンチマークスコアだけではない。同じ処理をどれだけ少ない電力で終えられるか、長時間負荷をかけたときにどの程度の性能を維持できるかも重要になる。

高いクロックで短時間だけ性能を引き上げられても、薄いスマートフォンの中で発熱を抑えながら同じ速度を維持できるとは限らない。GPUやAI処理の性能についても、CPUのマルチコアスコアだけでは判断できない。

前世代では、チップ内部から熱の逃げ道を見直した

Samsungは前世代のExynos 2600で、チップ上に銅製の「Heat Path Block(HPB)」を置く新しい放熱構造を採用した。

Samsungの技術解説によると、従来の構造では、演算を担うチップの上に重ねたDRAMパッケージが、発生した熱を端末側の冷却部品へ逃がす経路の妨げになっていた。

熱がDRAM側の基板や接着層、樹脂などを通る必要があり、金属と比べて熱を伝えにくかったためだ。

そこでSamsungはDRAMの配置をずらし、主な発熱源の上に銅製のブロックを配置した。プロセッサーから端末内部の冷却部品まで、熱をより直接的に逃がせる経路を作る狙いだ。

CPUそのものの性能を高めることと、そこで発生した熱を効率よく外へ逃がすことは、スマートフォンでは同時に解決する必要がある。

SamsungがExynos 2600の製品ページで示している改善幅は、熱抵抗を最大16%低減したというものだ。熱抵抗は、熱がどれだけ伝わりにくいかを表す指標で、低いほど熱を逃がしやすい。

ただし、脚注ではExynos 2500との社内試験による比較であり、動作条件などによって結果が変わると明記されている。「端末温度が16%下がる」「バッテリー持続時間が16%延びる」という意味ではない。

前世代で放熱経路を変更したことは、Samsungがスマートフォンで長時間性能を維持するため、チップのパッケージ構造から改善を進めていることを示している。

一方、この前世代の技術から、Exynos 2700がどのようなパッケージを採用し、どの程度放熱性能が改善するのかまで推測することはできない。

MX事業部が熱に関する検証を続けているという報道も、チップ単体の設計だけでなく、最終的なスマートフォンの厚さや冷却機構まで含めて評価する必要があることを示している。

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Ultraへの採用は、設計・製造・端末の三つの条件で決まる

The Elecによると、Exynosを設計・供給するSystem LSI事業部は、Galaxy S27 Ultraにも自社製チップを搭載したい意向を持っている。

一方、実際にGalaxyへどのチップを搭載するかを決めるMX事業部は、発熱を含む性能や、Qualcomm製チップとの価格差を評価しているという。さらに、Samsung Foundryが必要な数を安定して製造できるかも判断材料になる。

同じSamsungの中でも、各部門が重視する条件は異なる。

System LSIにとっては、Exynosの採用機種を増やし、設計したチップの事業規模を拡大できるかが重要になる。Foundryには、必要な数量の良品を安定して生産できるかという課題がある。そしてMXが最終的に販売するのは、半導体単体ではなく、性能や発熱、電池持ちまで含めたGalaxyスマートフォンだ。

そのため、社内ベンチマークでQualcomm製チップを上回ったという情報があっても、それだけでUltraへの採用が決まるわけではない。

コストについても、「Samsungが自社で作るから安い」と単純には言えない。

外部メーカーからチップを購入する費用を減らせる一方、Exynos自身の設計費や製造費がかかり、ウェハー検査やパッケージングにも費用が発生する。

さらに、製造したチップのうち正常に使える割合である「歩留まり」が低ければ、実際に使えるチップ1個あたりのコストは高くなる。今回の報道では具体的な歩留まりや良品1個あたりの製造費は示されていないため、10%以上の増産という数字だけから採算性がどの程度改善したかを計算することはできない。

それでも、標準モデル、Plus、Pro向けに必要な数量を見込んでウェハーの本格量産を始めたという報道が正しければ、SamsungがExynos 2700を2027年の主力スマートフォンへ供給する準備を具体的に進め始めたことになる。

Ultraへの採用判断が残っていても、Galaxy S27シリーズで自社設計チップの採用範囲を広げるための生産体制は動き始めている。

Galaxy S27世代でExynos 2700の実力を評価できるのは、地域ごとの正式な搭載モデルが明らかになり、市販端末を同じ条件で比較した消費電力や持続性能がそろってからだ。

必要な性能を持つチップを、十分な歩留まりで必要な数量だけ供給できれば、Samsungは自社設計のExynosをGalaxyの競争力へつなげながら、Qualcomm製チップへの依存を減らせる可能性がある。