TSMCの2026年7〜9月期の連結売上高が、月次発表の合計で1兆4,942億4,300万台湾ドルに達した。前年同期比50.9%増、前四半期比17.6%増となり、四半期売上高の過去最高を更新した。10月8日に発表された9月の売上高を加えると、7月に示した会社予想の上限も超えている。ただし、売上が大きく伸びても、利益率が同じように上昇するとは限らない。TSMCは2nmプロセスの急速な量産拡大によって、粗利益率が一時的に低下すると予想している。今回の記録的な増収は、先端半導体の需要拡大が売上に反映される一方、製造効率の改善には時間がかかるという、半導体産業の実情を示している。

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9月売上高は過去最高に迫り、四半期では17.6%増収

TSMCが10月8日に発表した2026年9月の連結売上高は、5,118億5,700万台湾ドルだった。前年同月比では54.6%増加している。

過去最高を記録した8月と比べると0.6%減少したものの、2カ月連続で5,000億台湾ドルを超えた。注目すべきなのは、前月からのわずかな減少ではなく、8月に達した高い売上水準を9月もほぼ維持したことだ。

この好調な売上が、7〜9月期全体の過去最高記録につながった。TSMCの9月売上発表と添付資料で確認できる。台積電

TSMCの2026年7〜9月の連結売上高折れ線グラフ。カテゴリ 3 件、系列: 月次売上高(単位: 百万台湾ドル)460,000470,000480,000490,000500,000510,000520,000百万台湾ドル7月7月8月8月9月9月7月 — 月次売上高: 467,580百万台湾ドル8月 — 月次売上高: 514,806百万台湾ドル9月 — 月次売上高: 511,857百万台湾ドル月次売上高: 511,857月次売上…: 511,857
データを表で見る
月次売上高 (百万台湾ドル)
7月467,580
8月514,806
9月511,857
TSMCの2026年7〜9月の連結売上高月次発表に基づく未監査値。9月も8月の過去最高水準に近い売上を維持した。出典: TSMCの2026年月次売上表、2026年9月売上報告

月別に見ると、7月の売上高は4,675億8,000万台湾ドル、8月は5,148億600万台湾ドル、9月は5,118億5,700万台湾ドルだった。

この3カ月を合計した7〜9月期の売上高は1兆4,942億4,300万台湾ドルとなり、4〜6月期の1兆2,703億8,000万台湾ドルを17.6%上回った。前四半期も高水準だったが、そこからさらに大幅な増収を達成したことになる。

前年の2025年7〜9月期の月次売上合計は9,899億1,800万台湾ドルだった。今回の売上高を比較すると、前年同期比の増加率は50.9%となる。

これらは2026年の月次売上表と2025年の月次売上表を基に算出した数値だ。ただし、現時点では月次発表の合計であり、正式な四半期決算の数値とは区別する必要がある。

また、2026年1〜9月の累計売上高は3兆8,987億2,700万台湾ドルとなり、前年同期比41.1%増加した。

これは、2025年通年の売上高3兆8,090億5,400万台湾ドルを、わずか9カ月で上回る規模だ。集計期間が異なるため、両者を使って成長率を比較することはできないが、TSMCの事業規模が急速に拡大していることは明らかだ。

会社予想の上限を約2%上回る売上高

TSMCは7月16日の決算発表で、2026年第3四半期の売上高を446億〜458億米ドルと予想していた。

この見通しは、1米ドル=32台湾ドルという想定為替レートに基づいている。第2四半期の決算発表資料にも、この為替前提が明記されている。TSMC

同じ為替レートで会社予想を台湾ドルに換算すると、実際の売上高が予想をどの程度上回ったのかを比較できる。

比較項目 台湾ドル建て連結売上高 計算条件
会社予想の下限 1兆4,272億台湾ドル 446億米ドル×32
会社予想の上限 1兆4,656億台湾ドル 458億米ドル×32
7〜9月の月次売上合計 1兆4,942億4,300万台湾ドル 7月+8月+9月
予想上限との差額 286億4,300万台湾ドル 月次合計−予想上限

この計算によると、TSMCの第3四半期売上高は、会社予想の上限を約1.95%上回ったことになる。

計算式は次の通りだ。

ただし、この比較はTSMCが7月に設定した想定為替レートを使い、米ドル建ての会社予想を台湾ドルに換算したものだ。正式な四半期決算で発表される米ドル建て売上高を示しているわけではない。

また、前年同期比50.9%増と、会社予想を約2%上回ったという数字は、それぞれ意味が異なる。

前年同期比は、1年間で事業がどれだけ成長したかを示す。一方、会社予想との差は、7月時点でTSMCが見込んでいた成長を、実際の売上がどれだけ上回ったかを表している。

いずれも好調な業績を示す数字だが、約51%という大幅な増収の多くは、すでに会社側の見通しに織り込まれていた。

さらに、売上高の増加だけでは、半導体ウエハーの出荷枚数、販売単価、製品構成の変化が、それぞれどの程度寄与したのかは分からない。

台湾ドル建ての売上高が50.9%増えたからといって、半導体の生産数量も同じ割合で増えたとは限らない。成長の内訳を詳しく把握するには、用途別や製造プロセス別の売上構成を確認する必要がある。

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売上の66%を占めるHPC、2nmは量産拡大の途上

直前の2026年第2四半期を見ると、TSMCの売上を支えていたのは、高性能計算(HPC)向け半導体だった。

同社の決算説明資料によると、HPC向け売上高は全社売上高の66%を占め、前四半期比20%増加した。

一方、スマートフォン向けは売上高の22%で、前四半期比4%減少している。

この構成からは、TSMCの業績拡大において、データセンターを含む高性能計算向けの需要が大きな役割を果たしていることが分かる。

ただし、HPC向け売上高のすべてがAI関連というわけではない。

HPCにはAI向け半導体以外の製品も含まれるため、売上比率66%をそのまま「AI関連売上の比率」と解釈するのは正確ではない。また、これは第2四半期の数値であり、第3四半期にも同じ構成が続いたとは限らない。

AI向け半導体の需要が好調であることと、TSMCが開示しているHPCの売上比率は、分けて考える必要がある。

製造プロセス別の構成にも注目したい。

第2四半期のウエハー売上高に占める各プロセスの比率は、2nmが3%、3nmが30%、5nmが33%だった。7nmを含む先端プロセス全体では77%に達している。

ここで注意したいのは、用途別売上と製造プロセス別売上では、集計の対象が異なることだ。

HPCの66%は全社売上高に占める割合だが、先端プロセスの77%はウエハー売上高に占める割合である。そのため、両者を単純に掛け合わせても、AI向け先端半導体の売上高を求めることはできない。

一方、2nmの売上比率がまだ3%にとどまっていたことは、今後の利益率を考えるうえで重要な手がかりになる。

TSMCは、第3四半期に2nmプロセスの量産を急速に拡大すると見込んでいた。

新しい製造プロセスを立ち上げる際には、設備の稼働率や製造歩留まりを改善しながら生産量を増やしていく必要がある。その過程では、生産能力の拡大に伴う費用が利益率を押し下げることもある。

つまり、新しい製造技術が売上に貢献し始める時期と、その技術を効率よく量産できるようになる時期には、ずれが生じる可能性がある。

需要の見通しについて、魏哲家(C.C. Wei)会長兼CEOは7月の決算説明会で、AIエージェントの普及によって、データセンター向けCPUの重要性が再び高まるとの見方を示した。

AIシステムではGPUだけでなく、CPUや専用アクセラレータも必要になる。TSMCにとっては、こうしたさまざまな半導体の製造需要が、今後の成長を支える可能性がある。

ただし、同氏は価格に敏感な消費者向け市場について、部品価格の上昇などが重荷になる可能性も指摘している。

先端半導体の需要が強いからといって、半導体市場のすべての分野が同じように成長しているわけではない。

2nmの量産拡大が粗利益率を押し下げる理由

TSMCが7月に示した2026年第3四半期の業績予想では、粗利益率が65〜67%、営業利益率が56〜58%とされていた。

いずれも第2四半期の実績である粗利益率67.7%、営業利益率60.3%を下回っている。

つまり、TSMCは売上高の増加を見込む一方で、利益率については前四半期から低下すると予想していた。

その主な要因の一つが、2nmプロセスの急速な量産拡大だ。

黄仁昭(Wendell Huang)CFOは第2四半期の決算説明会で、2nmの量産拡大によって粗利益率が約3〜4パーセントポイント押し下げられると説明している。

ただし、これは粗利益率全体が最終的に3〜4ポイント低下するという予想ではない。

TSMCは、先端プロセスに対する強い需要に加え、生産性の向上やコスト削減によって、2nmの量産拡大に伴う負担を一部相殺できると見込んでいた。

その結果、第3四半期の粗利益率予想の中央値は66%となり、第2四半期の67.7%からの低下幅は1.7ポイントにとどまる計画だった。

ここでは、2nmの量産拡大による利益率の押し下げ幅と、その他の改善効果を織り込んだ最終的な利益率予想を区別する必要がある。

また、海外工場の立ち上げに伴うコストも、TSMCの利益率に影響する要因の一つだ。

同社は海外拠点の拡大が今後数年間の利益率に与える影響についても説明しているが、その長期的な影響を2nmの量産拡大による影響と単純に合算し、第3四半期の利益率低下を予測することはできない。

純利益を見る際にも注意が必要だ。

第2四半期には、Vanguard株の売却益や時価評価益として約630億台湾ドルが計上され、営業外利益を押し上げた。この影響もあり、同四半期の純利益率は55.6%となっている。

そのため、第2四半期の純利益率55.6%を今回の売上高にそのまま掛けても、第3四半期の純利益を適切に予測することはできない。

半導体製造事業そのものの収益性を確認するには、粗利益率や営業利益率を中心に見ながら、営業外損益が純利益に与える影響を分けて考える必要がある。

今回の大幅な増収がどの程度の利益成長につながったのかは、10月15日に予定されている正式な決算発表で明らかになる。

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最大640億ドルの設備投資を、生産能力の拡大につなげられるか

TSMCは7月、2026年の設備投資計画を従来の520億〜560億米ドルから、600億〜640億米ドルへ引き上げた。

このうち70〜80%を、先端製造プロセスに振り向ける計画だ。

また、先端パッケージング、検査、フォトマスク製造などには、全体の10〜20%を配分する方針を示している。これらを含む投資枠の全額が、先端パッケージングだけに使われるわけではない。

ただし、設備投資を増やしても、その資金がすぐに生産能力の拡大につながるとは限らない。

新工場を建設して生産設備を導入する場合と、既存工場の設備を転用して生産能力を増やす場合では、実際に供給量を増やせるまでの時間が異なる。

TSMCは台湾で、5nmプロセス向けの製造装置を3nmプロセス向けに転用し、製造技術の世代をまたいだ生産能力の調整を進めていると説明している。

同社によると、新しい製造技術の開発から生産能力の確保、量産開始までには5年以上かかるという。

そのため、足元の需要増加に対応するには、新工場への投資だけでなく、既存設備をどれだけ効率的に活用できるかも重要になる。

さらにTSMCは、顧客が示す需要予測をそのまま合算して、設備投資を決めているわけではない。

魏哲家CEOは、半導体を直接発注する顧客だけでなく、その先にいるクラウド事業者とも協議していると説明した。

AIデータセンターの建設進捗や設置場所、サーバーラックの準備状況なども確認し、需要が実際の設備投資や利用計画に裏付けられているかを調べているという。

AI向け半導体の注文が増えていても、データセンター側の準備が遅れれば、出荷した半導体がすぐに稼働するとは限らない。場合によっては、顧客側で在庫が積み上がる可能性もある。

TSMCがデータセンターの建設状況まで確認するのは、顧客の強気な需要予測が、実際の半導体需要としてどの程度実現するのかを慎重に見極めるためだ。

TSMCの2026年第3四半期決算説明会は、10月15日の日本時間15時から開催される予定だ。

今回の売上記録を評価するうえでは、2nmプロセスの売上比率がどこまで高まったのか、それに伴う粗利益率への影響が会社予想の範囲に収まったのかが重要になる。

加えて、5nm向け設備の3nmへの転用などを通じて、生産能力をどこまで拡大できたのかも注目される。

TSMCは先端半導体の需要拡大を追い風に、四半期売上高の過去最高を更新した。しかし、今後も高い成長率を維持できるかどうかは、受注を増やすだけでなく、その需要に応えられる生産能力を確保し、製造コストを抑えられるかにかかっている。

今回の記録的な増収は、先端半導体の需要が依然として強いことを示す一方、2nmの量産拡大に伴うコストを吸収し、利益率を維持できるかという次の課題も浮き彫りにしている。