米中間の貿易摩擦が、再び激化の一途をたどっている。Donald Trump米大統領が中国からの輸入品に対し100%の追加関税を課す可能性を示唆したのに対し、中国商務省は「貿易戦争を恐れない」と断固として応酬。対立の核心には、ハイテク産業の生命線ともいえる「レアアース(希土類)」の輸出規制があり、世界のサプライチェーンを根幹から揺るがす事態へと発展しつつある。

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泥沼化する米中対立、Trump氏「100%関税」の衝撃

事態が急変したのは、Trump氏が自身のSNS「Truth Social」に投稿した fiery なメッセージがきっかけだった。 彼は、中国がレアアースの輸出規制を強化したことを「国際貿易において前代未聞」「他国との取引における道徳的な不名誉」と激しく非難。 これに対し、米国は2025年11月1日(あるいは中国のさらなる行動次第ではそれ以前)から、現在課されている関税に上乗せする形で「100%の関税を中国に課す」と表明したのだ。

この措置は、現行の関税率から劇的な引き上げを意味する。報道によれば、米国はすでに中国製品に対し、平均して54%から55%の高い関税を課している状況にあった。 一時、両国の関税率が100%を超える異常事態となった春先の対立からは沈静化していたものの、今回の表明が実行されれば、米中間の貿易は事実上の停止状態に陥る可能性も否定できない。

さらにTrump氏は、関税だけでなく「あらゆる重要なソフトウェア」の輸出規制も検討していることを示唆しており、その攻撃が多岐にわたることを明確にしている。 市場はこの動きに即座に反応した。Trump氏の発言が報じられた金曜日、米国のS&P 500株価指数は2.7%下落し、4月以来最大の下げ幅を記録。これによりウォール街の株式市場からは約2兆ドルもの価値が一夜にして失われたとされ、投資家がいかにこの事態を深刻に受け止めているかがうかがえる。

中国の冷静かつ断固たる反論――「我々は戦争を恐れない」

Trump氏の強硬な姿勢に対し、中国は即座に反論した。中国商務省の報道官は、国営新華社通信を通じて声明を発表。「我々の立場は一貫している。貿易戦争は望まないが、それを恐れることはない」と述べ、一歩も引かない構えを見せた。

報道官はさらに、「もし米国が一方的な行動を固執するならば、中国は自国の正当な権利と利益を守るため、断固として相応の措置を講じる」と明言。 これは、米国が関税を発動すれば、中国も同等かそれ以上の報復措置を取る用意があることを明確に示したものだ。

中国側が特に問題視しているのは、米国の「ダブルスタンダード(二重基準)」である。 報道官は、米国が長年にわたり「国家安全保障の概念を過度に拡大」し、輸出管理措置を乱用してきたと批判。 特に、高性能な半導体やその製造装置に関して、米国が同盟国にも圧力をかけ、中国への輸出を厳しく制限してきた歴史を指摘している。

中国から見れば、今回のレアアース輸出規制は、米国のこうした一方的な制限措置に対する正当な対抗策に他ならない。商務省は、米国の輸出管理リストには3,000以上の品目が含まれるのに対し、中国のリストは900程度に過ぎないと具体的な数字を挙げ、自国の措置が米国のそれと比較して限定的であることを示唆した。 そして、「高関税の脅しに訴えることは、中国と向き合う正しい方法ではない」と、対話による解決を促しつつも、圧力には屈しないという強い意志を世界に示したのである。

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紛争の核心「レアアース」――中国が握る技術覇権のアキレス腱

今回の米中対立の震源地となっているのが「レアアース」だ。スマートフォンや電気自動車(EV)、風力タービンといった民生品から、戦闘機やミサイル、レーダーシステムなどの軍事技術に至るまで、現代のあらゆるハイテク製品に不可欠な戦略的物資である。

問題は、その供給を中国がほぼ独占しているという現実にある。中国は世界のレアアース採掘の約70%を占め、さらに重要なのは、採掘された鉱石を製品に使える形に分離・精製する加工能力においては、世界の約90%を支配していることだ。 つまり、たとえ他国でレアアースが採掘されたとしても、その多くは最終的に中国で加工されなければ製品にならない。この圧倒的な支配力が、中国にとって最大の交渉カードとなっている。

中国が発表した新たな輸出規制は、このカードの威力を最大限に発揮するものだ。規制は、特定のレアアース鉱物だけでなく、その生産技術や海外での軍事利用、さらには半導体用途までを対象に含んでいる。これは14ナノメートル(nm)プロセスルールまでの先端半導体製造に影響を及ぼす可能性があり、世界の半導体サプライチェーンに深刻な打撃を与えるリスクをはらんでいる。

これは、世界のテクノロジー企業にとって悪夢のようなシナリオだ。半導体不足は、コロナ禍で世界経済が経験したように、自動車から家電まで、あらゆる産業の生産を麻痺させる力を持つ。中国がレアアースの供給を本格的に絞れば、その影響は計り知れない。中国国営メディアが、この規制が「海外の軍事ユーザー」によるレアアース技術へのアクセスを防ぐことを目的の一つとしていると示唆したことは、これが単なる経済問題ではなく、国家安全保障をめぐる地政学的な駆け引きであることを物語っている。

「相互確証破壊」の新たな段階へ

今回の事態は、過去の貿易摩擦とは質的に異なる様相を呈している。ワシントンのシンクタンク、民主主義防衛財団(FDD)のシニアフェロー、Craig Singleton氏はPoliticoに対し、「関税の休戦は公式に終わり、相互確証破壊の新たな力学へと移行した」と分析する。 これは、かつての米ソ冷戦時代の核戦略になぞらえ、米中双方が経済的な相互依存を武器として相手に壊滅的な打撃を与えうる状況に突入したことを意味する。

Trump政権時代に始まった関税合戦は、一時は沈静化していた。しかし、水面下では、米国による半導体技術の輸出規制と、それに対する中国の非関税障壁による報復という静かな戦いが続いていた。今回のレアアース規制と100%関税の脅しは、その戦いが再び火を噴き、全面的な経済戦争へとエスカレートする危険性をはらんでいる。

今後の焦点は、今月下旬に韓国で開催されるAPEC首脳会議に合わせて期待されていた、Trump氏と中国の習近平国家主席による首脳会談が実現するかどうかだ。Trump氏は当初、会談を中止する可能性を示唆したが、その後、出席する意向を改めて示すなど、その態度は揺れ動いている。

しかし、たとえ首脳会談が実現したとしても、両国の溝はあまりに深い。Trump氏はSNSで「心配するな、中国はうまくいく!尊敬されるXi Jinping主席は少し悪い時間を過ごしただけだ」と融和的なメッセージを送る一方で、強硬な関税の脅しは撤回していない。 この硬軟織り交ぜた戦術が、交渉を有利に進めるためのブラフなのか、それとも本気なのか、市場は見極めようと固唾をのんで見守っている。


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