Western Digital(WD)は2026年10月22日、2027年度第1四半期の売上高が前年同期比55%増の43億8100万ドルになったと発表した。対象は2026年10月2日までの会計四半期で、2027暦年の決算ではない。出荷したHDDに保存できるデータの総量を示す「出荷容量」は約22%増であり、売上高の伸びはそれを大きく上回る。全社売上高を出荷容量で割った集計値も改善しており、容量を多く出荷した効果と、同じ容量から得る売上高が増えた効果を分けると、利益が急増した理由が見えてくる。
出荷容量22%増より速い売上55%増
WDの2027年度第1四半期は、出荷容量が前年同期比約22%増えた一方、出荷容量1EB当たりの売上高は約28%増えた。
これは、WDの決算発表の売上高と、決算説明資料5ページの全HDD出荷容量を組み合わせた計算である。EB(エクサバイト)はデータ容量の単位だ。2025年10月3日終了の前年同期と2026年10月2日終了の当期を、いずれも全社売上高と全HDD出荷容量で比べた。
| 指標 | 前年同期 | 当期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 28億1800万ドル | 43億8100万ドル |
| 全HDD出荷容量 | 204EB | 248EB |
容量の伸びは「248÷204−1」で約21.5686%。売上高を百万ドルにそろえて割ると、1EB当たりは前年同期の「2818÷204=約13.8137百万ドル」から、当期の「4381÷248=約17.6653百万ドル」へ増えた。この比率の伸びが約27.8824%、丸めて約28%となる。
ただし、約28%はHDDの値上げ率ではない。全社の集計値には製品構成なども影響するため、個別製品の販売単価や価格だけの寄与は分離できない。CFOのKris Sennesael氏は、出荷容量の力強い伸びと価格改善が好業績を支えたと説明している。会社説明と集計値は同じ方向を示すが、全製品を一律に28%値上げしたと読む根拠にはならない。
容量の内訳は、ニアラインが183EBから223EB、非ニアラインが21EBから25EBへ増えた。両方を足した248EBが今回の計算の分母となる。出荷台数を数えた数字ではなく、ここから台数や工場の生産能力の伸びを割り出すこともできない。
粗利率58.1%、営業費用は3%増にとどまる
売上高が増えただけでは、利益の伸びは決まらない。売上高から売上原価を引いた粗利益がどれだけ残り、そこから営業費用をいくら差し引くかで営業利益が変わる。今回のWDでは、粗利率が上がり、営業費用の伸びも売上高を下回った。
米国会計基準(GAAP)に基づく数値に、株式報酬など会社指定の項目の調整を加えた非GAAP指標では、粗利率は前年同期の43.9%から58.1%へ14.2ポイント上昇した。一方、非GAAP営業費用は3億8100万ドルから3億9100万ドルへ約3%増にとどまる。55%増えた売上高から、従来より高い割合で粗利益が残り、その後に引く費用は小幅に増えただけだった。
その結果、非GAAP営業利益は8億5600万ドルから21億5300万ドルへ152%増加し、営業利益率は30.4%から49.1%へ上昇した。決算発表と説明資料で確認できる、売上増が営業増益へつながる関係である。営業費用の抑制が押し上げたのは、粗利率ではなく、その先の営業利益率だ。
調整後の数字だけで改善しているわけでもない。GAAP粗利率も前年同期の43.5%から57.8%へ上がり、GAAP営業利益は7億9200万ドルから20億4600万ドルへ158%増えた。GAAP営業利益率は46.7%である。
価格の改善は会社が挙げる要因だが、粗利率の上昇分を価格、製品構成、製造原価へ厳密に割り振る材料は今回の資料にない。確かめられるのは、売上高に対する粗利益の割合が高まり、営業費用の伸びも売上高を大幅に下回ったという二段階の改善だ。
純利益44%減でも本業は増益
直前の四半期と比べても、増収と営業増益は続いた。売上高は前期の37億4700万ドルから17%増え、全HDD出荷容量も231EBから248EBへ伸びている。非GAAP粗利率は54.4%から58.1%へ3.7ポイント上がった。前年同期との比較だけでなく、前期からも事業の収益性は改善したことになる。GAAP純利益は前期の31億9500万ドルから17億7900万ドルへ44%減少し、1株当たり利益(EPS)も8.21ドルから4.63ドルへ下がった。この数字だけなら急減益だが、営業成績とは異なる動きである。
決算発表の調整表によると、前期には20億5000万ドルのSandisk保有持分益があり、当期はゼロだった。保有株式に関するこの利益が、前期の純利益を押し上げていたのである。なお、同日の8-KのItem 2.02と添付99.1でも、発表日、対象期間、同じ決算数値を確認できる。
一方、非GAAP純利益は前期の13億8200万ドルから17億7900万ドルへ29%増え、非GAAP EPSは3.56ドルから4.64ドルへ30%伸びた。非GAAP営業利益も前期の16億5500万ドルから30%増加している。株式関連利益の有無に純利益比較が左右されるなかでも、営業利益は拡大を続けた。
ただし、非GAAPではSandisk保有持分益のほか、株式報酬、事業再編、税金なども調整する。前期のGAAP純利益から持分益20億5000万ドルだけを引き、その残りを本業の利益と呼ぶ計算は成り立たない。営業利益と純利益、GAAPと非GAAPをそれぞれ同じ指標で比べる必要がある。
次期60%台の粗利率と投資をどう見るか
WDが10月22日時点で示した2027年度第2四半期の会社予想は、売上高50億〜52億ドル、非GAAP粗利率60〜61%、非GAAP EPS5.60〜6.00ドルである。売上高の中央値は51億ドルで、予想レンジは前年同期比66〜72%増に当たる。利益率の改善をさらに見込む一方、会社はGAAP見通しへの完全な調整が困難だと明記しており、GAAP実績とそのまま比較することはできない。
利益を現金に変える力も強まった。当期の営業キャッシュフローは16億400万ドルで、そこから有形固定資産の純取得額2億2700万ドルを引いたフリーキャッシュフローは13億7700万ドルとなる。前年比130%増、前期比7%増であり、売上高43億8100万ドルに対する比率は「1377÷4381」で31.4%だ。純取得額は前年同期の7300万ドルから増えたが、それを差し引いても現金が残った。
同社は次世代ePMRプラットフォームの増産を進めると説明資料に記した。ただ、今回の資料から40TB製品の構成比やHAMRの量産時期まで確定することはできない。高容量化の進展を判断するにも、製品計画と、実際の出荷容量や投資支出を分けて追う必要がある。
需要の集中にも目を配りたい。当期売上高の88%はクラウド向けであり、これはAI専用の売上比率ではない。WD自身も、クラウド市場や上位顧客への依存、限られた供給先、新技術製品の導入や製造の遅延などをリスクに挙げている。好調な需要が続いても、新製品を予定どおり供給できるかで実績は変わりうる。
次の決算では、粗利率60〜61%という予想が実現するかに加え、出荷容量を増やしながら容量当たり売上高を保てるかが判断材料となる。設備への支出を差し引いた後のキャッシュ創出も維持できれば、今回の営業増益が次の供給を支える力まで伴っていると確かめられる。



