AppleのA20 Proを搭載するとみられる端末のベンチマーク結果が、Geekbench Browserに掲載された。2026年9月10日付の記録は、シングルコアが4,719ポイント、マルチコアが12,677ポイントで、発表されたばかりの新チップのCPU性能をうかがわせる。前世代のA19 Proや発売済みのAndroid旗艦機の投稿例と比べても高い値だが、製品版の実機による結果かは確認されていない。M5を搭載するMacBook AirやiPad Proの測定例まで視野を広げると、シングルとマルチで順位が逆転する。スマートフォンのCPUがどこまで届いたのかを、測定条件と処理別の内訳から読み解きたい。
4,719ポイントを記録したiPhone19,2
今回の投稿にある端末名は「iPhone19,2」で、マザーボード名は「V63AP」。iOS 27.0上でGeekbench 6.7.0のCPUテストを実行している。CPUは6コアで、2コアと4コアの組に分かれ、周波数欄には4.93GHz、メモリ欄には11.27GBと表示されている。
Appleが発表したA20 Proも6コアCPUを搭載する。ただし、投稿のCPU名は「ARM」であり、「A20 Pro」と明記されているわけではない。端末識別子からiPhone 18 ProとPro Maxのどちらかを断定することも避けたい。ここで確認できるのは、こうした構成とスコアを持つ記録が公開されたことだ。
投稿者や実機の状態に加え、室温や外部冷却の有無も分からない。メモリの11.27GBという表示も、そのまま製品の公称容量とは扱えない。それでも、発売前のCPU性能を検討する具体的な材料にはなる。Appleが公表した性能向上率に対して、条件付きながら絶対スコアを置けるようになったためだ。
A19 Proとの差は、比較する記録で変わる
A19 Proを搭載するiPhone 17 Proの9月9日付の投稿は、シングル3,763ポイント、マルチ9,637ポイントだった。今回の記録は、この比較例に対してそれぞれ25.4%、31.5%高い。前世代とOSの表示、Geekbenchの版がそろう比較であり、性能向上への期待を持たせる差である。
ただし、同じA19 Proでも9月7日付の別の投稿には4,053ポイント、10,532ポイントという値がある。こちらを基準にすると差は16.4%、20.4%に縮む。A19 Proから何%伸びたかは、分母にする測定値で変わる。
| チップ/端末の比較例 | 投稿の表示日 | Geekbench/OS | シングルコア | マルチコア |
|---|---|---|---|---|
| A20 Pro搭載とみられるiPhone19,2 | 9月10日 | 6.7.0/iOS 27.0 | 4,719 | 12,677 |
| A19 Pro/iPhone 17 Pro | 9月9日 | 6.7.0/iOS 27.0 | 3,763 | 9,637 |
| A19 Pro/iPhone 17 Proの別投稿 | 9月7日 | 6.7.0/iOS 27.0 | 4,053 | 10,532 |
| A18 Pro/iPhone 16 Pro | 9月9日 | 6.7.0/iOS 27.0 | 3,496 | 8,841 |
| Snapdragon 8 Elite Gen 5 for Galaxy/Galaxy S26 Ultra | 9月5日 | 6.7.1/Android 16 | 3,660 | 11,086 |
| Dimensity 9500/vivo X300 Pro | 9月8日 | 6.7.1/Android 16 | 3,392 | 10,582 |
スコアの単位はポイント。数値は2026年9月10日に確認した個別の公開投稿。9月5〜10日の記録から版とOSを確認できた比較例を選んでおり、全投稿の平均値や最高値ではない。日付は各ページの表示を使用した。差は「(今回のスコア÷比較例のスコア−1)×100」で計算し、小数第1位に丸めている。端末の冷却・電力設定を統一した試験ではない。
比較は同じGeekbench 6.7系でそろえている。ただし、iOSとAndroidの違いや、端末の状態までそろうわけではない。
A18 Proの比較例からはシングル35.0%、マルチ43.4%高い。2世代前の端末を使っている人には、CPUに重い仕事をさせたときの差を期待させる数字だ。一方、日常の画面操作が同じ割合で速くなると考えるのは早い。待ち時間が通信やストレージ、アプリ側の処理に左右される場面では、CPUスコアの差がそのまま表れない。
Android側では、Snapdragon 8 Elite Gen 5 for Galaxyを搭載するGalaxy S26 Ultraの比較例に対して、シングル28.9%、マルチ14.4%高かった。Dimensity 9500を搭載するvivo X300 Proに対しては39.1%、19.8%高い。今回選んだ記録では、競合に対する差がマルチよりシングルで大きい。
M5のMacBook AirやiPad Proと比べると
M5を搭載するMacBook AirやiPad Proの測定例と並べると、シングルコアとマルチコアで順位が逆転する。今回のiPhone19,2は、シングルでは両機種の投稿を上回り、マルチでは下回った。
スコアの単位はポイント。いずれも2026年9月の個別投稿で、製品全体の平均ではない。iPadのOS欄も投稿にある「iOS」表記を用いた。Geekbenchは同じ6.7系だが、OSや冷却条件を統一した試験ではない。
M5搭載機の各スコアを分母にすると、今回の記録はMacBook Airに対してシングルが14.4%高く、マルチが25.5%低い。iPad Proに対しては、シングルが13.2%高く、マルチが20.8%低かった。スマートフォン同士の比較では両方のスコアで優位だったが、MacやiPadまで対象を広げると、全コアを使う処理には差が残る。
CPU欄のコア構成は、iPhone19,2が2+4、MacBook Airが4+6、iPad Proが3+6だった。同じM5でも、ここで比較するMacBook AirとiPad Proはコア数が異なる。マルチコアの差をコア数だけで説明することはできないものの、チップ名に加えて構成をそろえなければ、性能差の読み方も変わってくる。
単一コアで進める処理の速さと、複数コアで仕事を終える速さは分けて見る必要がある。今回の記録は、A20 Pro搭載とみられる端末がシングルではM5機の測定例を超える一方、マルチでは届いていないことを示す。MacやiPadと同じアプリを同じ条件で動かした試験ではなく、消費電力の測定もないため、この比較から端末全体の作業速度や電力効率まで順位を付けることはできない。
総合スコアで勝っても、処理ごとの得意分野は異なる
Galaxy S26 Ultraとのマルチコア比較を内訳まで見ると、順位が逆転する処理がある。今回のiPhone19,2は写真フィルターや物体検出で高い値を記録する一方、プログラムをコンパイルするClangと、CPUによるレイトレーシングではGalaxyの比較例を下回った。
| マルチコアの個別テスト | iPhone19,2(A20 Proと推定) | Galaxy S26 Ultra |
|---|---|---|
| 写真フィルター(Photo Filter) | 15,294 | 10,693 |
| 物体検出(Object Detection) | 14,305 | 11,712 |
| コンパイル(Clang) | 17,279 | 17,378 |
| CPUレイトレーシング(Ray Tracer) | 13,005 | 14,428 |
出典は上表と同じiPhone19,2の投稿とGalaxy S26 Ultraの投稿の「Multi-Core Performance」。比較条件も同じで、数値は各テストのスコアで、単位はポイント。
総合マルチで14.4%高くても、すべての処理が14.4%速いわけではない。写真へのフィルター処理を多用する人と、別の演算を続ける人とでは、CPUの進化から受ける恩恵が違い得る。しかも、これらはGeekbenchが定めた処理であり、写真アプリ全体や実際の開発環境の速さを直接測った結果ではない。
Primate Labsの技術資料によると、Geekbench 6のマルチコアテストは、一つの大きな仕事を複数のコアで分担する方式を採る。コア間で連絡を取り合う処理も必要になるため、コアを増やした分だけスコアが伸びる仕組みではない。A20 Proとみられる6コアと、競合2機種の8コアを比較するときも、コア数だけから優劣は決められない。
また、物体検出という名前が付いていても、ここで測っているのはCPU側の処理だ。専用AI回路のNeural Engineを評価したものではなく、レイトレーシングの項目もGPUの描画性能を表さない。ゲームや端末内AIを目的に買い替えるなら、対応する実アプリの試験が必要になる。
クロックと冷却の進化を、発売後の実機で確かめる
iPhone19,2の周波数欄は4.93GHzで、比較したA19 Proの4.26GHzより15.7%高い。L2キャッシュ欄も、A19 Proの6.00MBに対して8.00MBと表示される。CPUのコア数はどちらも6のままだが、記録上は周波数とキャッシュに変化がある。
周波数の差は「(4.93÷4.26−1)×100」で求めた表示値の比較であり、テスト中ずっとその周波数で動いていたことを示さない。キャッシュはCPUがデータを近くに置いて使うためのメモリだが、容量の表示だけでは、どの処理にどれほど効いたかは分からない。今回のスコア上昇をクロック、キャッシュ、回路設計へ分けて割り当てることはできない。
Appleの発表では、A20 Proは2nmプロセスを採用し、メモリ帯域をA19 Pro比で50%広げた。さらにチップのダイとメモリを横に並べ、メモリを放熱経路から外すことで、ダイをベイパーチャンバーへ直接接合する設計にしたという。演算する回路に加え、データを届ける能力と熱を逃がす経路を改めた点が、実際の使用でどれほど効くかを見たい。
Appleは新しい冷却系を含め、iPhone 18 Proシリーズの持続性能が前世代より最大40%向上すると説明している。今回のGeekbench投稿は、その主張を検証する試験にはなっていない。Primate Labsの技術資料のCPU実行条件では、Geekbench 6.1以降は熱の影響を抑えるため、各負荷の間に既定で5秒の休止を挟む。休みを挟んで測るCPUスコアと、ゲームや編集処理を長く続けたときの速さでは、確かめているものが違う。
iPhone 18 ProとPro Maxは、日本では9月12日に予約を開始し、9月18日に発売する予定だ。A19 Proからの買い替えを考えるなら、製品版でスコアが再現するかに加え、普段使う重い処理の所要時間と、その間の消費電力を確かめたい。A18 Proからなら、比較例に表れた2世代分の差が、写真編集や長時間の処理でも残るかが判断材料になる。速度を維持したまま同じ仕事を少ない電力で終えられるなら、A20 Proの進化は待ち時間と電池持ちの両方で実感できるはずだ。
