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中国でAI需要が失速?データセンターがNVIDIA RTX 4090Dを大量売却する異例の事態に

Y Kobayashi

2025年4月24日

AI開発競争の過熱は連日報じられているが、そんな中、中国の一部のデータセンターが保有するNVIDIA GeForce RTX 4090D GPUが大量に市場へ放出し始めているとの報告がDigiTimesによって報じられている。背景にはAIインフラの深刻な稼働率低迷があり、この動きは中国AI市場の現状と将来に疑問を投げかけるものだ。

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大量放出されるRTX 4090D:何が起きているのか?

DigiTimes Asiaが報じたところによると、中国国内の一部のAIデータセンターが、保有するNVIDIA GeForce RTX 4090D、特にVRAM(ビデオメモリ)を48GBに増強したとされる特殊なモデルを、分解・再生した上で市場に再販しているという。

これらのGPUは、本来コンシューマー向けであるRTX 4090Dをベースに、データセンターでの利用に適した改造が施されている可能性がある。データセンターでは冷却効率を高めるために、一般的なファン冷却から「ブロワーファン」と呼ばれるタイプに換装されることが多い。ブロワーファンは、多数のGPUを高密度で稼働させるサーバー環境では効率が良いとされる一方、単体で利用する場合には騒音が大きく、冷却性能も劣る可能性がある。市場に放出されるGPUがどのような状態かは不明だが、購入者にとっては注意が必要な点だ。

驚くべきはその価格である。これらの再生品とされるRTX 4090D(48GBモデル)は、現在中国市場において20,000人民元から40,000人民元、日本円にして約43万円から86万円(1ドル=157円、1元=21.5円換算、2025年4月時点の為替レートに基づく概算)という高値で取引されているという。

なぜ売却?背景にある深刻な「AIインフラの遊休化」

なぜデータセンターは、高価なGPUを手放し始めたのだろうか? その根底には、中国におけるAI開発競争の過熱と、それに伴うインフラ投資の歪みがある。

DigiTimes Asiaのレポートによると、中国のAIデータセンターが利益を上げるためには、サーバーの稼働率が70%から75%以上必要であるという。しかし、現状では多くのデータセンターで実際の稼働率は20%にも満たないと指摘されている。これは、AIに対する期待先行で過剰な投資が行われた結果、需要をはるかに超える計算リソースが供給されてしまい、その大部分が「アイドル状態」、つまり使われずに眠っているからに外ならない。

このような状況下で、データセンター運営企業は苦境に立たされている。GPUをレンタルして収益を上げるビジネスモデルでは、投資回収に3年から5年かかるとされるが、稼働率が低ければそれもままならない。そこで、一部の企業は、保有するGPUを売却することで、より早く現金を確保し、ハードウェア購入のために借り入れた銀行ローンの返済などに充てようとしているのだ。

さらに、技術の進歩が早いAI分野では、旧世代のGPUは急速に陳腐化するリスクがある。将来的に競争力を失う前に、活用されていない資産を今のうちに高値で売却し、実際に需要が発生した際に最新のハードウェアを導入する方が合理的、という経営判断も働いていると考えられる。

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GPU価格は下がるのか?

データセンターからのGPU大量放出は、中国国内のGPU市場にどのような影響を与えるだろうか。まず考えられる事は、この動きによって中国国内で高騰していたRTX 4090Dの価格が下落する可能性だ。これは、高性能GPUを求めていた国内の消費者にとっては朗報かもしれない。しかし、価格が「AIブーム以前」の水準に戻るまでには時間がかかるとも見られている。

一方で、この動きには不可解な点もある。現在、米国は先端AIチップの中国への輸出規制を強化しており、NVIDIA H20やAMD MI308といった中国市場向けに調整されたチップさえも輸出が差し止められている。さらに、RTX 4090Dの後継とされるRTX 5090Dについても規制対象になるのでは、という噂や、NVIDIAがボードパートナーへの供給を一時停止したとの情報もある。このような供給不安が高まる中で、貴重な高性能GPUを売却するという動きは、一見矛盾しているようにも見える。

しかし、これは裏を返せば、データセンター運営企業が直面している財務状況の厳しさを示唆しているとも言える。供給リスクよりも、目先の資金繰りや経営破綻のリスク回避を優先せざるを得ない状況なのかもしれない。

今回の事態は、中国におけるAI開発の過熱とその反動、そして米国の輸出規制という複雑な要因が絡み合って発生している。データセンターによるGPU売却が一時的なものなのか、それとも中国AI市場の構造変化を示す兆候なのか、今後の動向を注意深く見守る必要があるだろう。


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