AMDは、AIでゲーム映像を高画質化するFSR 4を、2026年末にAPUや携帯ゲーミングPCへ広げる方針だ。韓国メディアThe Elecによると、コンピューティング・グラフィックス部門を率いるJack Huynh氏が10月7日、ソウルでの記者説明会で明らかにした。既存APU向けには、専用の軽量モデルを新しく開発したという。

デスクトップGPUで先行していたAIアップスケーリングが、すでに手元にある携帯機にも届く可能性が見えてきた。ただ、画像をきれいに再構成するAIにも計算時間が要る。限られた電力でゲームを動かす携帯機では、画質を保ちながら、その処理をどこまで軽くできるかが使い勝手を左右する。

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既存APUと新製品、二つの展開経路

Huynh氏は、年末の展開先としてAPU、ゲーミングノートPC、携帯端末を挙げ、既存APUへの対応と新製品群の投入という二つの方向で進めると説明した。APUはCPUとGPUを一つのチップに収めたプロセッサーで、携帯ゲーミングPCの描画を担っている。今回の発言は、新しい機器だけを対象にした計画ではない。

既存APUには、APU環境に合わせて軽量化した専用モデルで対応する。Huynh氏が挙げた開発上の狙いは、優れた画質と低い遅延だ。ただし、軽量化の方式や対応するAPUの型番、提供日はまだ示されていない。

AMDはすでに2026年6月24日、FSR SDK 2.3で、RDNA 3世代のRadeon RX 7000シリーズの独立GPUへFSR Upscaling 4.1.1の対応を広げていた。一方、RDNA 3.5などには、機械学習を使わない従来方式への切り替えを用意している。同じFSR SDKに対応していても、実際にAIモデルで映像を再構成しているとは限らない。

なお、FSR 4は現在、公式には「FSR Upscaling」と呼ばれ、フレーム生成などとともにFSR “Redstone”を構成する。AMDの現行案内では、機械学習によるアップスケーリングの対象はRX 7000とRX 9000シリーズで、RX 6000シリーズは2027年の予定だ。年末の「製品群へ拡大」という発言を、過去の全世代が一斉に対応する約束とは読めない。

軽量モデルが必要になる、1フレームの時間制約

60fpsで動くゲームでは、1フレームに割ける時間は約16.7ミリ秒である。アップスケーリングは、低い解像度でゲームを描き、そこから画面に表示する高解像度の画像を再構成する技術だ。FSR 4は、複数フレームの情報やゲームから渡された動きの情報を機械学習で処理し、細部を補う。

低解像度での描画によって浮いた時間の一部を、画像の再構成に使う。その収支を考える手がかりが、AMDの開発者向け資料にある処理時間だ。公開されている1080p出力の参考値を、60fpsの1フレーム時間に換算すると次のようになる。

GPU FSR 4の処理時間 60fpsの1フレーム時間に対する割合
Radeon RX 7600 1.998ミリ秒 約12%
Radeon RX 9070 XT 0.352ミリ秒 約2%

AMDの参考値では、1080p出力のFSR 4処理だけで、RX 7600は60fpsの1フレーム時間の約12%、RX 9070 XTは約2%を使う。

表は2026年10月9日に確認したFSR Upscaling 4.1.1のPerformanceモードの値で、RCASによるシャープ化を無効にし、GPUをピーククロックで動かした条件である。割合は「処理時間÷(1000÷60)×100」で算出した。これは再構成処理の総時間であり、FSR 3から増えた時間でも、入力してから画面が反応するまでの遅延でもない。GPUの構成も異なるため、世代だけの差としては扱えない。

携帯機向け軽量モデルの性能を、この表から予測することはできない。それでも、AIによる画質改善を低い電力で使うには、再構成に割く時間を抑える必要があると分かる。AMDは同資料で、FSRの処理時間が主に出力解像度に左右されるとも説明している。内部の描画解像度を下げれば、再構成の負荷まで同じ割合で減るわけではない。

たとえば1080p表示では、縦横を1.5倍にするQualityモードの内部描画は720pとなり、画素数は表示時の約44%になる。縦横2倍のPerformanceモードなら540pで、画素数は25%だ。これは倍率から計算できる画素数の比率であり、ゲーム全体の負荷が同じ割合で減るという意味ではない。描画を減らすほど、少ない情報から細部を保つ再構成の品質が効いてくる。

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画質の改善と、fps・操作応答の違い

FSR 4への移行で期待できるのは、まず低い内部解像度から作る画像の改善である。ネイティブ解像度で全画素を描く場合との比較なら、低解像度化で描画時間を節約できる。一方、すでにFSR 3.1を使い、同じ内部解像度で動かしているゲームでは、FSR 4へ替えたときの速度は再構成処理の負荷にも左右される。画質が上がることと、fpsが上がることは別の結果だ。

軽量モデルの価値は、より低い内部解像度でも納得できる画質を保ち、その描画の節約が再構成の負荷を上回る組み合わせを作れるかにある。実現できれば、同じ電力でfpsを伸ばす使い方も、fpsの上限を固定して電力を抑える使い方も考えられる。ただ、後者がどの程度バッテリー駆動時間を延ばすかは、画質とfpsの上限をそろえた実測を待つ必要がある。

フレーム生成も、アップスケーリングとは役割が違う。既存フレームの間に画像を補間して表示を滑らかにするもので、補間した画像が増えても、ゲームがその分だけ新しい入力を処理しているわけではない。AMDのFSR 3の説明も、補間には追加の遅延があり、それを抑える仕組みを組み込んでいると明記する。

また、FSR 3の開発者向け指針は、補間前のフレームレートを60fps以上にするよう勧めている。低いfpsでは補間による映像の乱れが目立ちやすいためだ。これは既存のFSR 3に対する指針で、未公開の軽量FSR 4の動作要件ではないが、表示fpsの数字だけで携帯機の快適さを決められない理由を示している。

Intelの42%と2倍超、異なる比較条件

Intelは5月28日に携帯機向けArc G3シリーズを発表し、XeSS 3をAI超解像、複数フレーム生成、低遅延技術の組み合わせとして訴求している。AMDが軽量FSR 4を投入しても、競争はアップスケーラーの有無だけでは決まらない。

Intelが掲げる「Ryzen Z2 Extremeより42%高速」という数字は、同社の測定条件で見ると、「2倍超の滑らかさ」という別の主張と区別する必要がある。

Intelの主張 対象作品数 画像処理の条件
Arc G3 Extremeが42%高速 36作品 対応作品で2倍アップスケーリングを使用
Arc G3 Extremeが2倍超の滑らかさ 15作品 超解像に加え、対応時にXeSS/FSRフレーム生成やXeSS複数フレーム生成を使用

いずれも2026年5月28日時点のIntelによる測定で、両機の持続電力は35W、ゲームは1080pのHigh設定、平均性能の比率を幾何平均でまとめている。比較したのはMSI Claw 8 EX AI+の試作機とASUS ROG Xbox Ally Xだ。メモリ構成も、前者の32GB・LPDDR5X 8533に対し、後者は24GB・LPDDR5X 8000と異なる。表に各作品の絶対fpsは示されていない。

42%の測定行にはフレーム生成の有効化が明記されておらず、アップスケーリングを使った比較である。これをネイティブ解像度の描画性能差と呼ぶことも、フレーム生成による差だけで説明することもできない。さらに、設定名や表示解像度が同じでも、異なる超解像技術の出力画質まで同じとは限らない。

軽量FSR 4がこの差をどこまで縮めるかは、同じゲームで画質と電力をそろえて測るまで分からない。既存AMD機へAI超解像が届けば画質面の選択肢は増えるが、Intelへの対抗力は、その画質を保ったときに残る描画性能と応答性で評価されることになる。

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年末対応に残る、ゲームと端末の配布条件

現在のFSR Upscalingには、ゲームが直接統合する経路と、FSR 3.1以降に対応するゲームをAMD Softwareで更新する経路がある。AMDの案内では、後者は処理用のDLLを置き換えて機械学習版へ切り替える。ハードウェアが対応しても、あらゆるゲームが自動的に対応するわけではない。

年末のAPU向け軽量モデルが同じ経路で配られるかは、まだ発表されていない。ROG Ally系やLegion Go系のどの機種が対象になるか、Steam DeckやSteamOSでも使えるかも、今回の発言では確定していない。新APUの具体的なGPU世代も明らかではない。

機能ごとの対象も分けて見る必要がある。現行SDKでRX 7000へ広がったのは機械学習によるアップスケーリングで、機械学習版のフレーム生成やレイ再生成はRX 9000以降向けである。APUでFSR 4が使えるようになることから、それらも一緒に届くとは言えない。

年末の提供時には、対応機種の名前に加えて、動いている場面の画質と、補間前のfpsを見たい。操作してから表示が変わるまでの遅延を測り、fpsの上限をそろえて消費電力を比べれば、軽量モデルが携帯機で何を改善したかを確かめられる。そこで画質と処理の軽さが両立すれば、買い替えずに手元の携帯機で遊べる設定を広げられる。