AMDが、機械学習ベースのアップスケーリング技術「AMD FSR Upscaling 4.1」をRadeon RX 7000シリーズへ正式に広げた。AMD Software: Adrenalin Edition 26.6.2のリリースノートは、RX 7000向けの新機能としてFSR Upscaling 4.1対応を掲げている。これまでFSR 4系の中核だった機械学習アップスケーリングは、Radeon RX 9000シリーズ、つまりRDNA 4世代を前提に語られてきた。今回の更新で、2022年末から販売されているRDNA 3世代のディスクリートGPUにも、AMDの最新アップスケーラーが公式ルートで届く。
この更新で、RX 7000のアップスケーリングは仕組みから作り替わる。FSR 3.1までの解析的な処理から、ニューラルネットワークで低解像度フレームを再構成する方式へ移るため、細線、粒子、動く物体、ちらつきの処理が変わってくる。GPUOpenのSDK 2.3ページは、FSR Upscaling 4.1.1がRadeon RX 9000シリーズとRX 7000シリーズのディスクリートGPUを対象にすると明記した。AMDはこれを、以前はRDNA 4専用だった画質改善のRDNA 3展開と位置づけている。
一方で、RX 7000に降りてきたのはRedstone全体ではなく、アップスケーリング部分だけである。FSR Frame Generation 4.0.1、FSR Ray Regeneration 1.2.0、Radiance Caching 0.9.0の技術プレビューは、SDK 2.3の要件では依然RX 9000シリーズ以上に限られる。AMDは古い世代向けに解析的なフォールバックを残しているが、機械学習版のフレーム生成やレイトレーシング用デノイザーまでRX 7000に開いたわけではない。今回の意味は、RDNA 3のゲーム体験で最も頻繁に使われるアップスケーラーの画質が、公式に一段上がった点にある。
ドライバ更新でFSR 3.1対応ゲームを4.1へ引き上げる
AMD Software: Adrenalin Edition 26.6.2は、2026年6月22日付のリリースノートでFSR Upscaling 4.1対応を新機能として掲載した。対応製品一覧にはRadeon RX 7900、7800、7700、7650、7600シリーズが含まれる。26.6.2自体はRX 9000、RX 7000、RX 6000、RX 5000まで広く対応するドライバだが、FSR Upscaling 4.1の新規対象として示されているのはRX 7000シリーズだけだ。
実装の軸はFSR SDK 2.3にある。AMD FSR SDK 2.3はFSR Upscalingを4.1.1へ更新し、ゲーム側がFSR 3.1以降を統合済みであれば、将来のAdrenalinドライバ経由でMLベースのFSR Upscaling 4.1.1へ自動的に引き上げられる可能性がある。対象はDirectX 12で、Radeon RX 9000シリーズとRX 7000シリーズである。
この仕組みは、ゲームごとのパッチを待つ負担を減らすためのものだ。SDK 2.3では、タイトルがamd_fidelityfx_loader.dllを通じてFSR SDKへアクセスし、amd_fidelityfx_upscaler.dllがFSR Upscaling 4.1.1と従来のFSR 2.3.4、3.1.5を扱う。対応GPUなら4.1.1が使われ、対象外のハードウェアではFSR 3.1.5が選ばれる。開発者にとってはAPIの更新経路がそのまま保たれ、プレイヤーにとっては既存タイトルのアップスケーラーがドライバ更新で新しくなる可能性が出てくる。
ただし、すべてのゲームで即座に同じ体験になるわけではない。AMDの文言は、FSR 3.1以降を統合済みのゲームが「eligible」、つまり自動アップグレードの対象になり得るという書き方に留まる。個別タイトルの実装、DLLの扱い、ゲーム側の配布形態、ドライバ側の対応リストによって挙動は変わる。実際の利用では、ゲーム内でFSRを有効にし、対応ドライバと対応GPUの組み合わせで動作を確認する必要がある。
RDNA 4専用だった前提が崩れた理由
FSR 4がGPUOpenで開発者向けに公開された2025年時点では、AMDの説明はRadeon RX 9000シリーズを前提にしていた。SDK 2.0の文書は、FSR 4アップスケーリングにはRX 9000シリーズ以上が必要で、それ以外のハードウェアではFSR 3.1.5を自動選択するとしていた。RDNA 4は第2世代AIアクセラレータを備え、AMDはそこに機械学習アップスケーリングの最適な実行基盤を見ていた。


その前提が2026年のSDK 2.3で変わった。AMDは、FSR Upscaling 4.1.1をRDNA 3向けに最適化し、RX 9000シリーズで提供している画質に近い結果をRX 7000シリーズでも得られると説明している。SDKページは、FSR Upscaling 4.1.1の要件をRadeon RX 9000およびRX 7000シリーズのディスクリートGPU、Shader Model 6.6対応とした。RX 7000はFSR 4系の対象外から、AMDが公式にテストし要件に載せる製品へ移ったことになる。
アップスケーリングが最初に広がったのは、順序として自然でもある。Redstoneはアップスケーリング、機械学習フレーム生成、Ray Regeneration、Radiance Cachingを含む広い技術群だが、毎フレームの描画解像度を下げて最終画像を再構成するアップスケーリングは、プレイヤーが最も直接的に画質とフレームレートの折り合いを取る機能だ。FSR 3.1までの弱点は、細い柵や草、粒子、反射のような時間方向に不安定になりやすい要素で目立っていた。AMD自身もFSR 4の説明で、ゴーストの低減、粒子表現の保持、細部と時間安定性の改善を前面に出している。
FSR 4の品質モードは、Native AA、Quality、Balanced、Performance、任意のUltra Performanceという従来型の選択肢を維持する。Performanceモードなら、4K出力では1920×1080から3840×2160へ引き上げる計算だ。アップスケーラーの出来が悪ければ、内部解像度を下げた時点で草や髪、細線が崩れ、1440pではぼけが目につきやすくなる。RDNA 3でFSR 4.1が使えるようになる意味は、この低い入力解像度の場面でFSR 3.1より見やすい絵を得られるかどうかに集約される。
独立検証では画質改善が大きく、負荷はゲームごとに変わる
AMDの公式資料は対応範囲と設計思想を示すが、実際の画質と速度はゲームごとに見なければ分からない。TechSpot/Hardware Unboxedは、Radeon RX 7900 XTX上のFSR 4.1 INT8実装を、FSR 3.1およびRadeon RX 9070 XT上のRDNA 4版と比較した。検証対象は9本のゲーム、21の画質例で、4K Performanceや1440p Balancedといった厳しい条件も含む。
その検証では、FSR 4.1はFSR 3.1より明確に安定した画像を出している。4K Performanceでは、FSR 4.1がFSR 3.1 Qualityより細部を保つ場面が多く、草、木の葉、フェンス、粒子、透明エフェクト、ディスオクルージョンの処理で差が出た。1440pでは影響がさらに大きく、FSR 3.1 Qualityを避けていたユーザーでも、FSR 4.1 QualityやBalancedなら選びやすくなるという評価だった。
RDNA 3版とRDNA 4版の画質差も小さい。TechSpot/Hardware Unboxedは、4K PerformanceでRDNA 3のINT8版とRDNA 4のFP8版を比べ、通常のプレイ中に見分けるのが難しいほど近いとした。AMDのGPUOpenブログも、DEATH STRANDING 2: ON THE BEACHの比較画像を使い、RDNA 3向けに最適化したFSR UpscalingがRX 9000シリーズの画質に近い結果を出すと説明している。公式説明と独立検証は、画質面では同じ方向を向いている。
性能面では、RDNA 3側の負荷がはっきり見える。TechSpot/Hardware UnboxedのCyberpunk 2077検証では、RX 7900 XTXの4Kレイトレーシング設定で、FSR 4.1 Qualityの性能向上はネイティブ比82%だった。FSR 3.1 Qualityは92%で、画質の良い新方式の方が数フレーム重い。Performanceモードでも、FSR 4.1は168%、FSR 3.1は200%の向上だった。Mafia: The Old Countryでは、RX 7900 XTXのFSR 4.1 Performanceが83%向上、FSR 3.1 Performanceが114%向上という結果だった。
この数字は、FSR 4.1が単純に速い更新ではないことを示す。新しいアップスケーラーは、場面によってはFSR 3.1より処理が重い。それでも同検証では、FSR 4.1 PerformanceがFSR 3.1 Qualityより高い平均フレームレートと良い画質を両立する例があり、Horizon Zero Dawn Remasteredのように性能面の見返りが小さいゲームでも、画質改善を理由にFSR 4.1を選ぶという結論だった。RX 7000ユーザーが見るべきは、ベンチマークの最大上昇率ではなく、同じ画質許容ラインでどのモードまで下げられるかである。
RX 6000と携帯ゲームPCにはまだ境界が残る
今回の更新で取り残された層もはっきりしている。FSR Upscaling 4.1.1の公式要件は、Radeon RX 9000とRX 7000シリーズのディスクリートGPUに限られる。RX 6000シリーズは26.6.2のドライバ対応製品には入るが、FSR Upscaling 4.1の新機能対象としては示されていない。SDK 2.3は、RDNA 3.5、RDNA 2、さらに古いGPU向けには解析的なアップスケーリング経路を維持すると説明しており、そこはFSR 3系の領域に残る。
携帯ゲームPCも注意が必要だ。26.6.2のリリースノートは、AMD Softwareが携帯ゲームデバイスをサポートせず、デバイス固有のドライバはOEMに確認するよう案内している。Ryzen Z系やRyzen AI系の内蔵GPUを搭載した端末では、GPU世代だけで判断できない。AMDがRX 7000ディスクリートGPUへ公式対応を広げたことと、各携帯ゲームPCで同じタイミングに同じ機能が使えることは別の問題である。
Redstone全体の広がりも次の焦点になる。AMDは、機械学習フレーム生成が光学フロー推定とモーションベクトルを使って中間フレームを作ると説明している。Ray Regenerationはレイトレーシング入力を機械学習でデノイズし、Radiance Cachingはパストレーシングの間接光を学習ベースで補う技術だ。これらはレンダリングパイプラインの別の位置に入るため、アップスケーラーと同じ条件で下位世代へ展開できるとは限らない。
AMDにとって、RX 7000へのFSR 4.1展開はソフトウェア支援の印象を変える機会でもある。Radeon RX 7000シリーズは、登場時点ではDLSS 2/3に相当する機械学習アップスケーラーを持たず、FSR 4の初期展開でもRDNA 4専用の外側に置かれていた。2026年になって公式対応が始まったことで、同世代GPUの寿命を延ばす材料は増えた。残る評価は、対応ゲームの広がり、ドライバ更新の安定性、そしてRX 7000より古い世代や携帯ゲームPCへどこまで機能が降りてくるかにかかっている。