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トランプ大統領のiPhone関税、Tim Cook CEOへの”私怨”か? 中東歴訪不参加が引き金との報道

Y Kobayashi

2025年5月27日6:37AM

Donald Trump米大統領が示唆した、米国外で製造されたiPhoneに対する25%の追加関税。この突然の方針転換の裏には、AppleのTim Cook CEOがTrump氏の最近の中東歴訪への同行を辞退したことに対する、Trump氏個人の不快感が影響している可能性が米メディアによって報じられている。かつては「Tim Apple」と呼び親しむほど良好だった両者の関係は、なぜここまで冷え込んでしまったのか。そして、この新たな火種はAppleの未来にどのような影を落とすのだろうか。

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発端は中東訪問への不参加?Trump氏の苛立ち露わに

The New York Times紙の情報筋によると、ホワイトハウスはDonald Trump大統領の中東(サウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタール)訪問に際し、多くの米国企業トップに同行を要請した。しかし、AppleのTim Cook CEOはこの招待を辞退したという。この決定が、Trump氏を苛立たせた可能性が指摘されている。

実際にTrump氏は歴訪中、Cook CEOの不在に複数回言及している。サウジアラビアの首都リヤドでの演説では、同行したNVIDIAのJensen Huang CEOを称賛した後、「Tim Cookはここにはいないが、あなたはいる」と、あからさまな当てこすりを見せた。このイベントには、BlackRockのLarry Fink氏、OpenAIのSam Altman氏、CitigroupのJane Fraser氏、AMDのLisa Su氏など、名だたるCEOが出席していた。

さらにカタールでは、「Tim Cookとは少し問題がある」と述べ、Appleの米国内投資は評価しつつも、「インドでの大規模な製造計画を聞いている。インドで作ってほしくない」と、名指しで不満を表明した。

これらの発言は、Cook CEOの不在に対するTrump氏の個人的な不快感の表れと見る向きが強い。そして、この中東歴訪終了直後の5月23日、Trump氏は自身のソーシャルメディアで「米国で販売されるiPhoneは米国内で製造されるべきだ。そうでない場合、Appleは少なくとも25%の関税を支払わなければならない」と投稿し、Appleだけでなく自政権のスタッフさえも驚かせた。

「報復関税」の憶測と、専門家の見方

AppleがサプライヤーであるFoxconnを通じてインドでのiPhone生産に15億ドルを投じる計画が報じられた直後でもあったが、The New York Times紙の報道は「Cook CEOへの中東訪問辞退に対する報復ではないか」というTrump氏の個人的な感情が優先された可能性を指摘する。

元GoogleおよびFacebookのワシントン政策コミュニケーション担当で、現Four Corners Public Affairs代表のNu Wexler氏は、Cook CEOとTrump氏の「非常に公的な関係」が裏目に出たと分析。「Appleのあらゆる動き、Trump氏からの譲歩の可能性さえもが精査されるため、Appleは不利な立場に置かれている」とし、Trump氏にとって「Appleに甘い顔をしたり、関税で取引したりするインセンティブは少なく、むしろ厳しく取り締まるインセンティブの方がはるかに強い」と述べている。

Appleはこの件に関してコメントを控えており、White Houseも中東訪問に関するコメントを拒否している。しかし、ホワイトハウスのKush Desai報道官は「Trump大統領は、半導体や半導体製品を含む、国家安全保障と経済安全保障に不可欠な製造業を国内に回帰させる必要性を一貫して明確にしてきた」と述べ、政権がAppleと「生産的な関係を継続している」と付け加えた。

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蜜月から一転、冷え込む両者の関係

Tim Cook CEOは、Trump政権下で巧みな外交手腕を発揮してきたことで知られる。2019年にTrump氏がCook CEOを誤って「Tim Apple」と呼んだエピソードは有名だが、Trump氏はCook CEOを「偉大な経営者だ。彼は私に電話してくるが、他の連中はそうしない」と称賛していた。Cook CEO個人がTrump氏の就任式に100万ドルを寄付したとも報じられている。

しかし、そのCook CEOも、時にはTrump氏の方針に静かに異議を唱えることもあった。2017年末のFortune magazineのカンファレンスでは、米国での製造を望むとしつつも、中国の方がエンジニアが多く技術も高いと説明。数ヶ月後にはMSNBCの番組で、移民政策を批判した。

そして今年に入り、両者の関係は急速に冷え込んでいるように見える。Trump氏は製造業の国内回帰をより強硬に推し進めており、海外に巨大なサプライチェーンを持つAppleは主要なターゲットとなりつつある。Appleは今後4年間で米国内に5000億ドルを投じることや、今年は米国から190億個のチップを調達し、ヒューストンでAIサーバーの製造を開始するといった発表で批判をかわそうとしてきたが、Trump氏を満足させるには至っていないようだ。

Appleが直面する多方面からの試練

この新たな関税の脅威は、Cook CEOにとって最悪のタイミングと言えるかもしれない。Appleは現在、複数の課題に直面している。

  • App Store訴訟: 先月、App Storeの運営方法に関する裁判で敗訴に近い判断が下され、裁判官はApple幹部が「宣誓下で完全に嘘をついた」「Cook氏は誤った選択をした」と厳しく批判した。
  • Vision Proの不振: 2024年1月に鳴り物入りで発売された複合現実ヘッドセット「Vision Pro」は、期待されたほどの成果を上げていない。
  • AI開発の遅れ: 3月には、約束されていた新しいSiriのリリースを延期し、AI分野での競争力に対する疑問が再燃している。
  • Jony Ive氏の動向: Appleの元最高デザイン責任者で、Cook CEOと疎遠になり2019年に退社したJony Ive氏が、先週OpenAIに参加し、iPhoneの競合となりうるデバイスを開発すると報じられた

これらの問題は、Appleの交渉力や企業イメージに影響を与える可能性があり、今回の関税問題と合わせて、同社が厳しい状況に置かれていることを示唆している。

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「iPhone税」の行方と、テクノロジー企業への警鐘

現時点では、この25%の関税が実際に発動されるかは不透明だ。しかし、もし実行されればiPhoneのコストは上昇し、最終的には消費者に転嫁される可能性が高い。Appleは過去にも関税の期限前に製品を空輸するなどして影響を回避しようとしたことがあるが、9月に新型iPhoneの発表を控える中、同様の対応が取れるかは未知数だ。

Trump氏は金曜日、「もし彼らがアメリカで売るなら、アメリカで作ってほしい。彼らにはそれができるはずだ」と改めて強調しており、その要求は強硬だ。Cook CEOは公には反応していないが、水面下での交渉やロビー活動が活発化することは必至だろう。

今回の出来事は、テクノロジー企業がいかに政治的リスクと隣り合わせであるかを改めて浮き彫りにした。一人の指導者の個人的感情が、世界最大級の企業の経営戦略を揺るがしかねないという現実は、多くの企業にとって他人事ではない。AppleとTrump氏の関係、そして「iPhone税」の行方は、今後のテクノロジー業界と政治の関係性を占う上で、重要な試金石となるだろう。


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