Armが2026年11月4日に発表した7〜9月期決算は、売上高が前年同期比27%増の14億4300万ドルとなり、会社予想の上限である14億3000万ドルを上回った。しかし、増収額の約84%はライセンス等収入によるもので、ロイヤルティ収入の伸びは8%にとどまった。ArmはAIデータセンターでの採用拡大を成長要因に挙げているが、その効果はロイヤルティ収入全体にはまだ大きく表れていない。今回の決算からは、ライセンス主導の成長が続いており、ロイヤルティ中心の成長へ移行したとは判断しにくい。

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売上高は予想を上回るも、GAAP純利益は45%減

Armが公表した株主レターによると、非GAAPベースの1株当たり利益(EPS)は0.52ドルとなり、会社予想の0.47ドル±0.04ドルを上回った。非GAAP営業利益は6億3800万ドルで、営業利益率も前年同期の41.1%から44.2%へ改善した。売上高は前年同期比20%超の成長が5四半期連続となっており、収益規模の拡大は続いている。

一方、米国会計基準(GAAP)に基づく純利益は1億3000万ドルとなり、前年同期の2億3800万ドルから45%減少した。営業利益自体は1億6300万ドルから2億100万ドルへ23%増えているため、減益の主因は営業外損益の縮小にある。営業外損益は前年同期の1億3900万ドルの利益から、今期は700万ドルの利益へ大きく減少した。

非GAAPベースのフリーキャッシュフローも1億1000万ドルにとどまり、前年同期の4億1100万ドルから73%減少した。ただし、直近12カ月の累計では10億9600万ドルを確保しており、四半期ごとの変動による影響も考えられる。Benzinga Proのデータによると、決算発表後の時間外取引でArm株は3.55%安の185ドルをつけた。

増収額の約84%をライセンス等収入が占める

今回の決算で注目すべきなのは、売上高の増加を牽引した収益源だ。総売上高は前年同期の11億3500万ドルから14億4300万ドルへ3億800万ドル増加したが、そのうち2億5800万ドルをライセンス等収入が占めた。増収額に占める割合は約84%に達する。一方、ロイヤルティ収入の増加額は5000万ドルにとどまっている。

収益項目 前年同期 今期 前年同期比
売上高合計 11億3500万ドル 14億4300万ドル +27%
ライセンス等収入 5億1500万ドル 7億7300万ドル +50%
ロイヤルティ収入 6億2000万ドル 6億7000万ドル +8%

ライセンス等収入の増加額2億5800万ドルは、1ドル=158円で概算すると約408億円に相当する。ただし、これは説明用の換算値であり、決算日の為替レートを適用したものではない。

ライセンス収入とロイヤルティ収入では、売上を計上する仕組みが異なる。Armの株主レターによると、ライセンス収入の一部は、知的財産(IP)の引き渡しと契約期間の開始のうち、遅い方の時点で計上される。一方、ロイヤルティ収入は、顧客がArmの技術を採用した半導体製品を出荷した四半期に、その出荷数量などに応じて計上される。このため、ライセンス収入は大型契約の規模や計上時期によって変動しやすいのに対し、ロイヤルティ収入は実際の製品出荷やロイヤルティ単価の影響を受ける。

Armはライセンス等収入が50%増加した理由として、IP需要の拡大、複数の大型ライセンス契約における規模や計上時期の変動、受注残からの寄与を挙げている。ただし、それぞれが増収にどの程度貢献したかは明らかにしていない。

この違いを考えるうえで参考になるのが、年間契約価値(ACV)だ。ACVは、締結済みのライセンス契約に基づく確定料金を年換算した業務指標で、会計上の売上高とは直接照合できない。今期のACVは17億9000万ドルとなり、前年同期の16億ドルから12%増加した。ライセンス等収入が50%増加したのに対し、ACVの伸びは12%にとどまっており、今期の売上高には大型契約の計上時期が影響した可能性がある。ただし、契約ごとの内訳が公表されていないため、その影響を定量的に評価することはできない。

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データセンター向けロイヤルティは倍増、全体の伸びは8%

もっとも、ライセンス収入の拡大が先行し、その後にロイヤルティ収入の成長が加速するというArmの説明にも根拠はある。同社は、顧客がライセンスを取得した新しい半導体設計を量産に移すことで、将来のロイヤルティ収入が増えると見込んでいる。実際、データセンター向けロイヤルティ収入は前年同期から倍増した。また、主要ハイパースケーラー(大手クラウド事業者)におけるArmベースのサーバーのシェアは、2024年の15%から2025年には50%超へ拡大したという。

一方、ロイヤルティ収入全体の伸びが8%にとどまった理由について、Armはスマートフォン市場に対するメモリ価格の影響を挙げている。つまり、AIデータセンター向けの成長が進む一方で、スマートフォン向け事業の逆風がその効果を一部相殺した可能性がある。この説明が正しければ、スマートフォン市場の状況が改善するにつれて、ロイヤルティ収入全体の伸びも加速する余地がある。

ただし、株主レターで示されたデータセンター向けロイヤルティの「倍増」は伸び率であり、具体的な収入額は公表されていない。スマートフォン市場の影響についても、ロイヤルティ収入をどの程度押し下げたかは不明だ。そのため、データセンター向けの成長が全体の収益構造を変えるほどの規模に達しているかは、現時点では検証できない。実際、前四半期のロイヤルティ収入は7億1500万ドル(前年同期比22%増)だったのに対し、今期は6億7000万ドルとなり、前四半期から4500万ドル減少している。

次の焦点はロイヤルティの再加速とArm AGI CPUの出荷

今回の決算に対する評価を左右するのは、次の四半期にロイヤルティ収入の伸びが回復するかどうかだ。前年比で再び二桁成長に戻れば、今期の8%増はスマートフォン市場などの一時的な逆風によるものだったとの見方が強まる。一方、伸びが一桁台にとどまるようであれば、データセンター向けの成長がロイヤルティ収入全体を押し上げるまでには、なお時間を要すると考えられる。

Armは次の2026年10〜12月期について、売上高を15億4000万ドル±5000万ドルと予想している。中央値は今期実績を約6.7%上回るが、ライセンス等収入とロイヤルティ収入の内訳は示されていない。このため、会社予想の達成だけでは、収益構造の変化を確認することはできない。

もう一つの注目点は、Armが設計した半導体を顧客へ直接供給する「Arm AGI CPU」だ。同社は初の商用出荷を2027会計年度第4四半期(2027年1〜3月)に予定しており、複数の顧客から2027年末までの発注を確保したと説明している。これまでのIPライセンス事業に加え、Arm自身が設計したシリコンを販売する新事業が本格的に立ち上がれば、収益構造にも変化が生じる可能性がある。

現時点で確認できるのは、ライセンス等収入が今期の増収を牽引したことと、データセンター向けロイヤルティが急成長していることだ。今後はロイヤルティ収入全体の伸びが二桁に戻るか、Arm AGI CPUの商用出荷が予定どおり始まるかが重要になる。両事業の収益への寄与が明らかになれば、Armが掲げるIPライセンス事業とシリコン事業の2本柱が、どの程度成長を支えているのかを評価しやすくなるだろう。