電気自動車向け全固体電池をめぐる2027年前後の期待に、世界最大級の電池メーカーから強い留保が出た。Electrekは2026年6月25日、CATLの創業者で会長兼CEOの曾毓群氏が世界経済フォーラムのAnnual Meeting of the New Champions、いわゆるSummer Davosで、全固体電池の技術成熟度は9段階中まだ4段階にとどまり、量産の本格化は2030年まで始まらないとの見方を示したと報じた。

この発言は、全固体電池の研究や限定投入が止まることを意味しない。むしろ、2027年という年が指すものを厳密に分ける必要がある。試験車、少量の高級車、材料やセルのパイロット生産は2027年前後に出てきてもおかしくない。一方で、数十万台から百万台規模の車両に載り、価格と保証を含めて既存のリチウムイオン電池と競える状態は別の段階だ。曾氏の発言は、その二つを同じ「量産」という言葉で混ぜてきた市場の期待に線を引く。

CATL自身の直近の発表を読むと、この慎重さは全固体電池への消極姿勢ではなく、商用化の順番をどう見るかの問題として浮かび上がる。同社は2026年4月のSuper Technology Dayで、全固体ではなく、既存系統の延長にある複数の電池を前面に出した。350 Wh/kgのQilin Condensed Battery、急速充電に振った第3世代Shenxing、2026年末に本格量産予定のNaxtraナトリウムイオン電池、そして充電と電池交換を組み合わせるインフラ計画である。全固体電池が主役になる前に、実車で使える改善余地はまだかなり残っている。

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CATLが2030年を見る理由は、技術と市場の段階が違うためだ

Electrekによると、曾氏は全固体電池について、製品が出ても市場で受け入れられ商業的に成功するかはなお見極めが必要だと述べた。この言い方は、研究室で動くセル、顧客に渡せる製品、利益を出しながら大量に供給できる事業を分けている。

全固体電池は、液体またはゲル状の電解質を固体電解質に置き換えることで、高いエネルギー密度、安全性、急速充電の余地を広げる技術として期待されている。ただし車載電池では、セル単体の性能だけでは足りない。温度変化、衝撃、長期サイクル、急速充電、保証期間中の劣化、材料供給、パック設計、製造歩留まりが同時に問われる。CATLのように年間数百GWhを扱うメーカーにとって、少量の成功は量産の成功と同じではない。

この違いはCATLの規模を見ると分かりやすい。同社の2025年リチウム電池販売量は661 GWh、世界のパワーバッテリー市場シェアは39.2%だった。2025年末時点の生産能力は772 GWh、建設中能力は321 GWhに達する。こうした企業が「量産」と言う場合、数百台や数千台分の先行搭載ではなく、主要顧客の量産計画に組み込める品質、コスト、供給安定性まで含む。

CATLが先に売るのは、全固体ではなく複数の現実解だ

CATLが2026年に強調したQilin Condensed Batteryは、全固体電池そのものではない。同社はこれを、航空グレード技術を乗用車へ応用した凝縮系電池として説明している。発表値ではセルの重量エネルギー密度は350 Wh/kg、体積エネルギー密度は760 Wh/Lで、セダンで1,500 km、大型SUVで1,000 km超の航続距離を可能にするとした。パック重量は650 kg以内に抑えるという。

同じ発表でCATLは、電動航空向けでは500 Wh/kgのシステムが4トン級航空機で初飛行検証を終え、8トン超の機体で追加検証を進めているとも説明した。2023年に同社が凝縮系電池を発表した際も、最大500 Wh/kgという数字と、航空用途からの展開が前面に出ていた。つまりCATLは、高エネルギー密度の領域で技術を止めているわけではない。ただし、それを全固体電池の大量車載とは別のルートとして進めている。

第3世代Shenxingは航続距離より補給時間を前面に出す。CATLは、10%から80%まで3分44秒、10%から98%まで6分27秒、氷点下30度でも20%から98%まで約9分で充電できるとうたう。第3世代Qilinは280 Wh/kg、1,000 km航続、10C急速充電を掲げる。これらは液体電解質系の延長にあり、製造設備や顧客設計に近いところで改良できる。

Naxtraナトリウムイオン電池も、全固体電池とは違う意味で重要だ。CATLは2026年に、ナトリウムイオン量産で課題だった水分管理、ハードカーボンのガス発生、アルミ箔の密着、自形成負極システムの4点に対処し、2026年末に本格量産へ入るとしている。エネルギー密度で全固体の期待値に届かなくても、低温性能、資源制約、定置用蓄電、低価格車両で使えるなら、量産効果は先に出る。

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2027年は「登場」の年であって、普及の年とは限らない

全固体電池をめぐる競争相手の発表も、よく読むと2030年発言と矛盾しない。トヨタと出光興産は2023年10月、BEV向け全固体電池の量産技術開発、固体電解質の生産性改善、供給網整備で協力すると発表した。両社は2027年から2028年の商用化を目指し、その後に本格量産へ進むとしている。

ここでも段階は分かれている。トヨタと出光は、2027年から2028年に全固体電池を搭載したBEVを市場投入する一方、将来の本格量産はその後の検討事項として扱っている。トヨタ側は、全固体電池の利点として充電時間の短縮、航続距離の伸長、高出力を挙げる一方、耐久性を最大の課題と説明した。充放電の繰り返しで正極、負極、固体電解質の間にひび割れが生じ、性能が落ちる問題があったためだ。

この比較から見えるのは、業界が2027年前後にまったく何も出せないという話ではない。むしろ、最初の商用車載は高価格帯や限定用途から始まりやすい。そこで実車データを集め、材料生産、セル組み立て、品質検査、保証設計を詰めていく。2030年という節目は、最初の発表ではなく、量産車の販売台数に意味のある規模で反映される時期として読むべきだ。

全固体電池の壁は、液体をなくすだけでは消えない

全固体電池の難しさは、電解質を固体に置き換えるところで終わらない。固体同士を接触させてイオンを滑らかに動かす必要があるため、電極と固体電解質の界面が性能を大きく左右する。液体電解質なら材料の隙間に入り込んで接触を作れるが、固体では圧力、粒子形状、膨張収縮、クラックが抵抗を増やす。

リチウム金属負極を使う場合、デンドライトと呼ばれるリチウムの枝状成長も課題になる。固体電解質は液体より安全だと説明されることが多いが、界面での不均一な析出や圧力集中が起きれば、クラックや短絡につながる。全固体電池が理論上有利であることと、車両の寿命全体で安全に動くことは同じではない。

トヨタと出光が硫化物系固体電解質を選び、柔軟性や密着性、ひび割れ耐性を説明しているのもこのためだ。高いイオン伝導性だけでなく、電極との接触を長期間保ち、品質とコストを満たす材料生産へ落とし込まなければならない。CATLが「技術、製品、商業性」を分けて見ているとすれば、そこにはこうした製造上の現実がある。

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全固体待ちの空白を埋める競争が始まっている

CATLにとって、全固体電池の大量普及が2030年以降になるなら、その前の数年をどう取るかが事業上の焦点になる。2026年の発表では、同社は4,000カ所の充電・交換ステーションを2026年末までに整備し、190都市近くと全国高速道路網を対象にするとした。2028年末までには、自動車メーカーやエネルギー企業と10万カ所超の共有補給施設を作る目標も掲げる。

これは電池化学だけで航続距離の不安を解くのではなく、急速充電、電池交換、低温性能、低コスト電池を組み合わせて、利用体験を先に改善する考え方だ。全固体電池が本格普及する前に、既存系の電池で充電時間が数分台に近づき、長航続パックが軽くなり、ナトリウムイオンが安価な用途に入れば、顧客が全固体電池に求める条件も変わる。

曾氏の発言が市場に冷や水を浴びせたように見えるのは、全固体電池がEVの未来を一気に変えるという物語が強すぎたためだ。現実には、最初の採用、限定的な商用化、大量搭載、利益を伴う普及は別々の関門である。2030年までに見るべきなのは、派手な航続距離の数字だけではない。どの自動車メーカーが何台規模で採用するのか、保証条件は既存電池と並ぶのか、セルの歩留まりはどこまで上がるのか、そして価格が量販車に降りてくるのかである。

全固体電池はまだ遠い、というだけでは今回の話は薄くなる。より正確には、電池業界は全固体電池を待つ間にも、凝縮系、急速充電、ナトリウムイオン、電池交換で別の競争を進めている。CATL会長の2030年発言は、その競争の主戦場が当面は「夢の電池」そのものではなく、量産できる電池をどこまで実用域で磨けるかにあることを示している。