中国のプリント基板(PCB)メーカーが、AIサーバー向けの生産設備へ資金を集中させている。South China Morning Postは7月8日、Victory Giant Technology(勝宏科技)やWUS Printed Circuit(沪電股份)、深南電路など20社超が2026年上期に積極的な増産計画を開示し、業界の設備投資が過去最高に向かうと報じた。投資を促しているのはPCB需要の一律な拡大ではない。高速信号を扱う高多層基板と高ビルドアップHDIに注文が集まり、同じ1平方メートルの価値と製造に必要な工程数が大きく変わったためである。

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1四半期で35.74億元、長期資産への支払いが4.90倍

Victory Giantが2026年1〜3月に固定資産、無形資産、その他長期資産の取得・建設へ支払った現金は約35.74億元だった。前年同期の約7.30億元に対して4.90倍、増加率では389.5%となる。この会計項目には製造設備の取得が含まれるが、全額がAI向け設備に使われたとは確認できない。設備増強のペースを比べる指標として見る必要がある。

同じ四半期の売上高は27.99%増の約55.19億元、親会社株主に帰属する純利益は39.95%増の約12.88億元だった。長期資産への支払額は営業キャッシュフロー約21.17億元を約14.57億元上回った。同社は同じ期間に約29.89億元を借り入れている。建設仮勘定も2025年末の約36.10億元から3月末には約51.70億元へ増えた。AI向け需要が実績へ表れるなかで、将来の受注に備える支出が先行している。

競合も追随する。WUSが同じ会計項目へ支払った現金は約14.67億元で、前年同期の約6.58億元から2.23倍になった。同社は2月、高速演算サーバーや次世代スイッチ向けの高多層PCB工場に33億元を投じる計画を公表した。高周波・高速伝送や高密度配線、大電流に対応する。建設期間は2年で、年14万平方メートルの生産能力と年30.5億元の売上高を見込む。さらに3月31日には、PCB工場と付帯設備へ約68億元を投じる別の案件を取締役会が承認している。

面積より工程回数、AI向けPCBが設備を長く占有する

AIサーバーでは、GPUやCPU、メモリなど主要部品の間を高速で結ぶ配線が基板に集中する。信号速度が上がるほど、配線の損失と反射、隣接配線からの干渉を抑えなければならない。そこで低損失材料を使い、配線層を増やし、微細なビアで層間を接続する。基板を厚くしながら微細加工の精度を保つ必要もある。

Victory Giantは、12層のコアの両側へ6層ずつ積み上げる「6+12+6」の24層HDIを量産している。70層超の多層PCBも量産し、100層超を製造できる技術を持つという。28層HDIは従来型PCBの2〜3倍の配線密度を持ち、M8・M9級の低損失材料を使う基板は最大224Gbpsの伝送を想定する。厚さ15.0ミリメートルの基板に40対1の厚径比で穴を通し、不要なビアの残り部分を削るバックドリルは4±2ミルの精度で量産している。

層を積むたびに、積層とレーザー穴あけ、めっきという主要工程を繰り返す。そのつど露光による配線形成と位置合わせも加わり、高ビルドアップHDIほど設備を長く占有し、検査点も増える。Victory Giantの目論見書も、層数やビルドアップ回数が増えると同じ設備から出せる面積が減ると説明している。2025年の同社全体の設備稼働率は82.4%だったが、HDIは97.7%に達した。PCB全般が不足しているのではなく、高難度品を通せる工程が先に詰まったのである。

同社が香港上場で想定した手取り資金172億8,660万香港ドルのうち、74%は中国本土の増産に向けられる計画だ。設備購入だけで59.3%を充てる。投資の対象は幅広く、露光・画像形成や積層・プレス工程の装置に加え、レーザー穴あけとめっき・表面処理の設備も増強する。仕上げの自動光学検査と電気検査も対象に入る。工場の床を広げるより、微細ビア形成から層間位置合わせ、接合、検査までを一式で強化する投資になっている。

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販売量14.8%減で売上4.88倍、製品構成が変わった

Victory Giantの2025年実績では、HDI販売面積が64.7万平方メートルから55.1万平方メートルへ14.8%減った。それでもHDI売上高は約15.21億元から約74.25億元へ4.88倍に増えた。1平方メートル当たり平均販売単価が2,351元から1万3,475元へ5.73倍になったためである。同社は増収の主因として、AI計算など先端用途に使う高ビルドアップHDIの構成比上昇を挙げているが、AI用途だけの販売面積や単価は開示していない。

HDIの粗利益率は22.5%から43.5%へ上昇し、粗利益は約3.43億元から約32.32億元へ増えた。多層PCBでも、販売面積が601.8万平方メートルから596.5万平方メートルへわずかに減る一方、14層超の構成比が上がり、平均単価は1,026元から1,394元へ上昇した。高難度品の比率を上げるほど、面積当たりの売上高と粗利益率を高められる。この製品構成の変化が、高多層・HDI向け設備を増やす判断の背景にある。

深南電路は4月、無錫で高速・高密度・高多層の電子回路製品を作るプロジェクトに最大46億元を投じると発表した。鵬鼎控股も2025年後半から2028年まで淮安の高性能PCB生産能力へ80億元を投じ、2026年末までにIHDIと高多層基板の能力を倍増させる計画を掲げる。加えて2026年初めには、淮安で110億元規模の先端PCB生産拠点を建設する投資協定を結んだ。

生産拠点は中国本土に限られない。Victory Giantはベトナム北寧省の新工場を2026年に稼働させ、年15万平方メートルまで増やす計画である。タイの新設備は残る部分を2026年後半に立ち上げ、全面稼働時には年150万平方メートルを見込む。いずれも多層PCBとHDIが中心だ。顧客に近い地域へ生産を分散しながら、高性能品を供給する体制を築いている。

増産計画の先に残る、量産立ち上げの壁

発表された生産能力が、そのまま高性能品の供給量になるわけではない。Victory Giantは中国本土の主要増産ラインについて、建設完了後に全面稼働へ達するまで3年を見込む。WUSの33億元案件も建設に2年を要し、同社は需要の鈍化、販売価格の変動、許認可の遅れによって計画変更や期待収益の未達が起こり得ると明記している。設備を据えた後には顧客認証と歩留まり改善も続く。

供給網にも制約がある。鵬鼎控股は2025年の業界一斉増産で上流の製造装置が不足したと説明している。PCBの材料費では銅張積層板、銅箔、銅ボールなど銅関連が60〜70%を占め、銅価格が上がれば製品構成の改善で得た利益の一部を削る。高度な低損失材料ほど認証や調達先の切り替えにも時間がかかる。

Victory Giantでは受注が少数顧客に集中しており、発注変動の影響も大きい。Victory Giantの上位5顧客は2025年売上高の51.0%を占め、2024年の25.1%から急上昇した。最大顧客だけで29.7%に達する。AI基盤の世代交代で基板仕様が変わったり、大口顧客が発注先を分散したりすれば、新設備の稼働率へ直接響く。

2026年の設備投資額は、中国メーカーが高性能PCBの量産能力を獲得できるかを測る出発点にすぎない。確認すべき数字は工場面積ではなく、新ラインの立ち上げ後に高ビルドアップHDIの歩留まりと設備稼働率を維持し、急上昇した平均単価を受注の継続へ結びつけられるかである。