伝説は、再び動き出すのだろうか。1995年にスーパーファミコンで発売され、今なお多くのRPGファンから金字塔として愛される『クロノ・トリガー』。そのリメイク版が開発中である可能性が、イタリアで開催されたナポリコミコンでの、ある「うっかり発言」によって急浮上した。発言の主は、『ドラゴンクエスト』シリーズの生みの親であり、『クロノ・トリガー』ではシナリオを担当した堀井雄二氏その人だというのだから、ファンとしては穏やかではない。
ナポリコミコンでの堀井雄二氏の「衝撃発言」とは
事の発端は、ナポリコミコンで開催された堀井雄二氏のパネルディスカッションでの出来事だった。複数の情報源、特にRedditユーザーのdf_tarocco_1氏やTheFishyOne氏、さらに現地にいたIGN Italiaの報告によると、堀井氏は質疑応答の中で、通訳を介して『クロノ・トリガー』のリメイクについて言及したとされている。
具体的な状況について、複数の証言を統合すると、以下のような流れだったようだ。
- リメイクへの言及: ある質問(開発時の逸話に関するものだったという情報もある [IGN Italia])に答える中で、堀井氏の発言を通訳が訳した際、「リメイクが開発中である」という趣旨の内容が含まれていた。IGN Italiaによれば、通訳は「Mi sembra di aver capito che ci sia anche un remake in sviluppo(リメイクも開発中であると理解したように思います)」と述べたという。
- 会場と司会の反応: この予期せぬ情報に、会場は騒然となった。司会者も発言の重大さに気づき、「もしそれが本当なら、これは大ニュースだ」といった反応を示し、堀井氏に確認を求めた。
- 堀井氏の反応と「火消し」: 自身の発言が意図せぬ情報漏洩であったことに気づいたのか、堀井氏は驚いた様子にも見える。その後、通訳は聴衆に対し、「皆さんは何も聞いていません」と言った意味の発言を行い、これが聴衆には重要事実の漏洩と捉えられ、更なる歓声を呼んだようだ。実際の様子は以下の動画の30秒くらいからご覧になれる。筆者はイタリア語が分からないため、どなたか堪能な方の解説をお願いしたいところだ。
ただし、この一連のやり取りは、単なる憶測や勘違いではなく、実際に何らかの「口止め」が必要な情報が漏れた可能性を示唆しているように見える。特に、複数の異なる情報源(Reddit、ResetEra、X、そして直接参加していたメディア)から同様の報告が上がっている点は、単なる噂として片付けるには無視できない重みを持っていると言えるだろう。
目撃証言が続々 – 噂の信憑性は?
この「事件」の後、SNSやフォーラムでは目撃証言が相次いだ。
- Redditの『ChronoTrigger』サブレディットでは、「堀井雄二氏がナポリコミコンでクロノ・トリガー リメイクを認めた」と投稿され、大きな話題を呼んだ。
- 同じくRedditの『DragonQuest』サブレディットでは、自身も会場にいたとするユーザーが、上記の詳細なやり取りを報告している。
- ゲームフォーラムResetEraでは、パネルに参加していた友人から「クロノ リメイクについてメッセージが来た」と述べるユーザーもいた。
- X(旧Twitter)では、ストリーマーが、直接の録音はないとしつつも、堀井氏が「CTが今も愛されていることを嬉しく思う、そして(スクエニが?)リメイクしている」といった趣旨の発言をしたと証言している。
これだけ多くの、しかも独立した情報源から同様の内容が報告されていることを考えると、堀井氏がリメイクの存在を示唆する何らかの発言をした可能性は極めて高いと言わざるを得ない。もちろん、通訳の解釈ミスや、堀井氏自身の言い間違いの可能性もゼロではない。しかし、その後の「何も聞いていないことにして下さい」という対応も含めて考えると、やはり「うっかり漏らしてしまった」という見方が有力ではないだろうか。
ただし、強調しておかなければならないのは、これが現時点ではあくまで「噂」の域を出ないということだ。スクウェア・エニックスからの公式な発表は何もない。確かに堀井氏自身がかつて『クロノ・トリガー』の開発に関わり、現在も自身の会社アーマープロジェクトを通じてスクウェア・エニックスと密接な関係にあることを考えれば、氏がリメイクの内部情報に精通していても何ら不思議はない。しかし、公式発表があるまでは、憶測の域を出ないことを肝に銘じておく必要がある。
なぜ今、クロノ・トリガーなのか? – 30周年とスクエニの戦略
もしこのリメイクの噂が真実だとしたら、なぜこのタイミングなのだろうか?いくつかの理由が考えられる。
第一に、『クロノ・トリガー』が今年(2025年)で発売30周年を迎えたという節目であることだ。スクウェア・エニックスは、この30周年を記念して「様々なプロジェクト」を準備していると、以前から公言していた。今回のリメイクの噂は、その「様々なプロジェクト」の核心部分である可能性が高い。
第二に、近年のスクウェア・エニックスにおけるリメイク・リマスター戦略の成功が挙げられる。『ファイナルファンタジーVII』のリメイクプロジェクト(『リメイク』『リバース』)は世界的な大ヒットとなり、新たなファン層を獲得した。また、『ドラゴンクエストIII』をHD-2Dグラフィックでリメイクした『ドラゴンクエストIII そして伝説へ… HD-2D Remake』も、往年のファンを中心に大きな期待を集め、その美しいビジュアル表現は高い評価を得ている。こうした成功体験が、『クロノ・トリガー』という、同社が誇るもう一つの巨大IPのリメイクへと舵を切らせたとしても不思議はない。
『クロノ・トリガー』は、『ファイナルファンタジー』や『ドラゴンクエスト』のような継続的なシリーズ展開こそなかったものの(直接的な続編は『クロノ・クロス』のみ)、その完成度、革新性、そして感動的な物語は、今なお色褪せることなく、JRPGの歴史における最高傑作の一つとして語り継がれている。スクウェア・エニックスがこの「宝」を現代に蘇らせようと考えるのは、むしろ自然な流れと言えるかもしれない。
リメイクの形は? HD-2Dか、それとも…
ファンにとって最も気になるのは、「もしリメイクされるなら、どのような形になるのか?」という点だろう。現時点では全く不明だが、いくつかの可能性が考えられる。
有力視されているのが、HD-2Dスタイルでのリメイクだ。『オクトパストラベラー』で確立され、『ドラゴンクエストIII HD-2D Remake』でも採用されたこのスタイルは、ドット絵の持つ温かみや懐かしさを活かしつつ、現代的な光影表現やエフェクトを加えることで、独特の美しいビジュアルを生み出す。『クロノ・トリガー』の持つ、鳥山明氏(故人)による魅力的なキャラクターデザインや、中世、未来、原始といった多彩な時代を巡る世界観は、HD-2Dとの相性が非常に良いのではないだろうか。コスト面でも、『FF7リメイク』のようなAAA級の大規模開発に比べれば抑えられる可能性があり、現実的な選択肢として考えられる。
一方で、『ファイナルファンタジーVII』のような、完全な3Dグラフィックによるフルリメイクを期待する声もあるかもしれない。しかし、開発規模やコストを考えると、その可能性はHD-2Dに比べて低いのではないか、という見方もある。
また、数年前にはスクウェア・エニックスがファンに対し、『クロノ・トリガー』をリメイク、リマスター、あるいは単純な移植のどれで復活させるべきか意見を求めていた、という情報もある。今回のナポリでの発言が真実なら、同社は「リメイク」という形で結論を出したのかもしれない。
いずれにせよ、どのような形であれ、『クロノ・トリガー』が現代のプラットフォームで再びプレイできる(あるいは新たな体験ができる)のであれば、ファンにとってはこれ以上ない朗報となるだろう。
期待と憶測、そして公式発表はいつ?
堀井雄二氏の「うっかり発言」疑惑は、世界中の『クロノ・トリガー』ファンに大きな衝撃と期待をもたらした。SNSでは歓喜の声が上がり、「ついに来たか!」「HD-2Dなら最高」「信じて待つ」といったコメントが溢れている。筆者自身、スーパーファミコンでリアルタイムに『クロノ・トリガー』をプレイし、その革新的な戦闘システム、時空を超える壮大な物語、そして胸を打つ音楽に心を奪われた一人である。個人的には、同じくスクウェア(当時)が生み出した傑作『ゼノギアス』と並び、生涯忘れ得ぬゲーム体験として深く記憶に刻まれている。それだけに、今回の噂には、一人のファンとして大きく期待したい所だ。
今回の件を受けて、スクウェア・エニックスがどのような対応を取るのか注目される。計画していた発表タイミングを待つのか、あるいは噂が広まったことを受けて、早期に何らかの公式発表を行う可能性もあるだろう。
しかし、繰り返すが、現段階ではすべてが未確定情報だ。ファンとしては、期待を胸に抱きつつも、冷静に公式発表を待つ姿勢が求められる。もし本当にリメイクが進行中なのであれば、それは30周年という記念すべき年にふさわしい、最高のサプライズとなるはずだ。
Sources
どうやら翻訳者の誇張らしいが???
とある記事より↓
実際には堀井氏の口からはそういった言葉は発されていなかった。
現地メディアIGN Italyでも、「リメイク版が開発中だと聞いている」という通訳者の発言として伝えている。ところが、前述のアーカイブにて実際に堀井氏の日本語による発言を確認してみると、該当する発言はしていない様子なのだ。
堀井氏自身による日本語の発言は、あくまでも根強い人気にちらりと触れる一言と、コンセプトについて触れた内容のみだった。つまり、通訳者側の翻訳でかなり話が膨らんでいる様子も見られるわけだ。また、通訳者の態度も、本当は言ってはいけなかった情報の“うっかり発言”を冗談めかして誤魔化しているようにも受け取れたため、「本当っぽさ」に拍車をかけたのだろう。こうしたアクシデントの背景は不明ながら、。いずれにせよ堀井氏は現場で「リメイク版」については一言も口にしていないのだ。
https://m.twitch.tv/videos/2448211166?desktop-redirect=true&t=5h15m35s