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パルワールド、任天堂との法廷闘争を受け「ボールを投げて召喚」機能を削除

Y Kobayashi

2025年5月9日

世界的な大ヒットを記録したモンスター収集サバイバルクラフトゲーム「パルワールド(Palworld)」が、任天堂からの特許侵害訴訟を受け、一部ゲームシステムの変更を余儀なくされていることが明らかになった。開発元の株式会社ポケットペア(Pocketpair)は、プレイヤーに謝罪しつつも、ゲーム開発と配信の継続に向けた「予防的措置」であると説明している。

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法廷闘争の余波、Palworldに迫られた「苦渋の決断」

ポケットペアの発表によると、任天堂は2024年9月にパルワールドが同社の特許を侵害しているとして訴訟を提起した。 これに対しポケットペアは、特許侵害を否定し、特許の無効性を主張するなど、法廷で争う姿勢を見せている。

しかし、訴訟の長期化や不測の事態がゲーム開発・配信に及ぼす影響を避けるため、ポケットペアは「予防的な措置」として、いくつかのゲーム仕様変更に踏み切ることを決定した。 同社は公式声明で「訴訟の進行状況に左右されることなく、今後、どのような状況においても『パルワールド』の開発と配信を継続できるようにするため」と説明している。

注目すべきは、ポケットペアが「現在係属中の訴訟において、従前の仕様が特許を侵害していないことが明確に認められるまで、変更した仕様を従前の仕様に戻すことはありません」と明言している点だ。 これは、法的なリスクを徹底的に排除し、安定的なゲーム提供を最優先する強い意志の表れと言えるだろう。

具体的な変更点:「パル召喚」と「グライディング」はどう変わるのか

今回の訴訟で任天堂が問題視した特許には「キャラクターに乗ること」や「フィールドでボールを投げること」といった要素が含まれている。Pocketpairはこれに対応する形で仕様の変更を行った。

今回の仕様変更で、特にプレイヤーのゲーム体験に影響を与えそうなのは、主に以下の2点である。

パルスフィアでの召喚方式変更:投擲から近距離召喚へ (パッチv0.3.11)

2024年11月30日に配信されたパッチv0.3.11において、パルワールドの象徴的なアクションの一つであった「パルスフィアを投げてパルを召喚する」機能が削除された。 代わりに、プレイヤーのすぐそばにパルが直接出現する仕様へと変更されている。

多くのプレイヤーが、この変更を任天堂の「ポケットモンスター」シリーズにおけるモンスターボールの投擲アクションとの類似性を回避するためではないかと推測していたが、ポケットペアは公式声明で「この変更は、今回の訴訟対応に伴うものです」と明確に認めた。

だが、このパッチ0.3.11では召喚アニメーションが静的なものに変更されただけでなく、いくつかのUIバグやAIの挙動に問題が発生したことも指摘されており、急な仕様変更が開発に与えた影響の大きさをうかがわせる。

グライディングシステムの変更:パルから専用アイテム「グライダー」へ (パッチv0.5.5)

さらに、近日配信予定のパッチv0.5.5では、パルに乗って滑空する従来のグライディングシステムにも変更が加えられる。 新バージョンでは、パルそのものではなく、専用のアイテム「グライダー」を使用して滑空する方式となる。

ただし、ポケットペアは「グライダーパルの性能は、アップデート後は、グライダーに追加効果という形で影響を及ぼしますので、実際のプレイ体験への影響は最小限となるように配慮しております」と説明する。 プレイヤーが滑空するためには、インベントリ内にグライダーを所持し、装備している必要があるとのことだ。

この変更は、「パルに乗って滑空する」行為が、ポケモンにおける「そらをとぶ」能力のイメージと重なるため、任天堂が法的措置の一環として変更を強いた可能性がある。

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開発元Pocketpairの胸中やいかに

一連の仕様変更に対し、Pocketpairは「開発チーム一同、プレイヤーの皆さまにご不便をおかけしておりますことを深くお詫びいたします」「私たちにとって心苦しい決断ではございますが、『パルワールド』の開発・配信の継続のために、『パルワールド』が特許を侵害していないことをより明確にしておく観点から、必要な措置であると判断した次第です」と、プレイヤーへの謝罪と理解を求めている。

今回のパルワールドの仕様変更は、ゲーム業界における特許戦略の重要性と、巨大IPホルダーとの間で起こりうる法的紛争の厳しさを改めて浮き彫りにした。Pocketpairは、任天堂の特許の有効性について「ゼルダの伝説」や「ARK: Survival Evolved」、「トゥームレイダー」といった他社作品の事例を挙げて反論しているとの報道もあり、法廷闘争はまだ予断を許さない状況である。 また、Pocketpairが「任天堂が主張する特許の一部は、パルワールドのリリース後に申請されたものだ」と主張している点も注目に値するだろう。

一方で、任天堂は今年後半に「Pokémon Legends: Z-A」という大型新作のリリースを控えており、自社IPの保護には一層力を入れてくるものと予想される。

今回のポケットペアの対応は、係争中のリスクを最小限に抑え、何よりもプレイヤーへのコンテンツ提供を継続するという、現実的な判断だったと言える。特許紛争は、その結論が出るまでに長期間を要することが多く、その間、開発が停滞したり、最悪の場合、配信停止に追い込まれたりするリスクも伴う。人気ゲームであればあるほど、その影響は甚大だ。

今回の変更がパルワールドのゲーム体験の核をどこまで損なうのか、あるいは新たな工夫によってそれを補うことができるのかは、今後のアップデート内容とプレイヤーの評価にかかっている。Pocketpairが「プレイ体験への影響は最小限となるように配慮」と述べている点に期待しつつ、この困難な状況を乗り越え、ファンに愛されるゲームであり続けることができるか、引き続き注目していく必要がある。そしてこの一件は、多くのゲーム開発者にとって、自社のオリジナリティを守りつつ、他社の権利を尊重するためのバランス感覚を養う上で、重要なケーススタディとなるのではないか。


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