Nintendo Switch 2が発表され、スペック向上に期待が高まる一方、ディスプレイに有機EL(OLED)ではなく液晶(LCD)が採用されたことに疑問の声も上がっている。任天堂は、この決定の背景にはHDR(ハイダイナミックレンジ)への対応と、LCD技術自体の進歩があったと説明している。
任天堂が語る「液晶採用」の決め手:HDR対応と技術の進歩
多くのファンが期待した有機ELパネルではなく、液晶パネルが採用されたNintendo Switch 2。その理由について、任天堂の技術開発本部 本部長であり技術開発部部長を務める佐々木哲也氏は、海外メディアIGNなどが参加したラウンドテーブルQ&Aにて、決して軽々しい決定ではなかったと語っている。
佐々木氏は、「開発中にLCD技術には多くの進歩があった」と述べ、「利用可能な技術を検討し、多くの考慮の結果、LCDに固執することにした」と説明した。特に強調されたのが、HDR(ハイダイナミックレンジ)への対応である。
「Nintendo Switch(有機ELモデル)では、HDRへの互換性サポートはありませんでしたが、今回はサポートしています」
HDRは、従来のSDR(スタンダードダイナミックレンジ)に比べて、より広い明るさの幅(ダイナミックレンジ)を表現できる技術である。これにより、ゲーム内の明るい部分(太陽光や爆発など)はより眩しく、暗い部分(影や夜景など)はより深く沈んだ黒で表現され、現実に近い臨場感あふれる映像体験が可能となる。Switch有機ELモデルでは非対応だったこのHDR機能を、Switch 2では実現するためにLCDが選択された、というのが任天堂側の主な説明である。
液晶 vs 有機EL:Switch 2の画質はどう変わる?ユーザーの声は
今回の決定に対し、特に現行のSwitch 有機ELモデルのユーザーからは、画質面での「ダウングレード」を懸念する声も聞かれる。ここで、Switch 2の液晶とSwitch 有機ELモデルの有機ELを比較してみよう。
機能 | Nintendo Switch 2 | Nintendo Switch (有機ELモデル) |
---|---|---|
パネル種類 | 液晶 (LCD) | 有機EL (OLED) |
画面サイズ | 7.9インチ | 7.0インチ |
解像度 | 1920×1080 (フルHD) | 1280×720 (HD) |
HDR対応 | 対応 (HDR10) | 非対応 |
VRR対応 | 対応 (最大120Hz) | 非対応 |
色域 | 広色域 | – (情報なし) |
コントラスト比 | (LCDの特性上、OLEDに劣る傾向) | 非常に高い(ほぼ無限) |
黒の表現 | (LCDの特性上、完全な黒は難しい) | 引き締まった深い黒 |
Switch 2のメリット:
- 大型化・高解像度化: 画面が大きくなり、解像度もフルHDに向上。より精細な映像を楽しめる。
- HDR対応: よりリアルで没入感のある映像表現が可能に。
- VRR対応: 対応ゲームや環境で、映像のカクつきや表示遅延を抑え、滑らかな描画を実現。最大120Hzのリフレッシュレートも、対応コンテンツで効果を発揮する。
- 広色域対応 (IGN報道): 有機ELほどではないかもしれないが、色表現の豊かさも向上している可能性がある。
Switch 有機ELモデル のメリット:
- 高コントラスト比: 自発光である有機ELは、液晶のようにバックライト漏れがないため、ほぼ無限のコントラスト比を実現。特に暗いシーンでの表現力に優れる。
- 引き締まった黒: 画素単位で発光をオフにできるため、「真の黒」を表現可能。
- 鮮やかな発色: 一般的に有機ELは色再現性が高いとされる。
このように、Switch 2のLCDは、解像度、HDR、VRRといった機能面で明確な進化を遂げている。しかし、有機ELが持つ「漆黒の表現」や「高いコントラスト比」といった特性を好むユーザーにとっては、物足りなさを感じる可能性がある点は否めない。
ファンの間では、「コストを抑えるためではないか」「数年後に高価な有機ELモデルを投入する布石では?」といった憶測も飛び交っている。これらはあくまで推測の域を出ないが、ユーザーの有機ELに対する期待の高さを示しているとも言えるだろう。
ディスプレイだけじゃない!Switch 2の進化点とゲーム体験への期待
Nintendo Switch 2の進化はディスプレイだけにとどまらない。内部ストレージは現行モデルの最大64GBから256GB(UFS規格)へと大幅に増量され、より高速なデータアクセスが期待される。さらに、microSDカードスロットは高速規格「microSD Express」に対応し、大容量化するゲームデータの読み込み速度向上にも貢献するだろう。

実際に、判明しているSwitch 2向けタイトルのダウンロードサイズは、「マリオカート ワールド」が23.4GB、「ドンキーコング バナンザ」が10.0GBなど、現行Switchタイトルと比較して増加傾向にある。ストレージ容量と速度の向上は、こうした次世代ゲームを快適に遊ぶ上で不可欠な要素となるだろう。
加えて、Wi-Fi 6への対応による通信速度の向上や、ドック接続時には最大4K/60fpsでの映像出力が可能になる点も、ゲーム体験全体の質を高める重要な進化点である。
Joy-Conにも改良が加えられ、本体への磁気接続方式や、マウスモード、大型化されたSL/SRボタンなどが採用されている。
Nintendo Switch 2が液晶ディスプレイを採用した背景には、HDR対応という明確な技術的目標と、進化したLCD技術への自信があった。有機ELの画質を知るユーザーにとっては一長一短ある選択かもしれないが、解像度、HDR、VRRといった機能向上は、ゲーム体験を新たなレベルへ引き上げる可能性を秘めている。ディスプレイ以外のスペック向上も含め、総合的な進化に期待したいところである。
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