中国のDRAMメーカー、長鑫存儲技術(CXMT)が、2026年第2四半期に世界DRAM市場の売上高シェア10%へ到達した。Counterpoint Researchが9月1日に公表した四半期データによると、前年同期の4%、前四半期の8%から伸び、主要3社に続く供給者として存在感を増している。
ただし、この10%は出荷した記憶容量の割合ではない。汎用DRAMの値上がりとHBMの価格動向が分かれた市場では、製品の構成や契約時期も売上の取り分を動かす。CXMTがどこまで供給を増やし、買い手にどのような選択肢をもたらすのかは、シェアの推移と、実際に供給する製品を重ねて考える必要がある。
10%到達で変わった大手3社の占有率
2026年第2四半期のDRAM売上高シェアはSamsungが38%、SK hynixが25%、Micronが24%、CXMTが10%だった。Samsungは前年同期の33%から上がり、Micronも22%から24%へ増えた。下落が集中したのはSK hynixで、39%から25%へ縮んでいる。最新の四半期表は、この移動を同じ集計版で並べている。
大手3社の合計は94%から87%へ、7ポイント低下した。前年同期は33+39+22=94%、2026年第2四半期は38+25+24=87%であり、87−94=−7ポイントとなる。全社が後退したわけではない。SamsungとMicronは前年を上回った一方、CXMTとNanyaを含む他社側の取り分が広がった。
- Samsung
- SK hynix
- Micron
- CXMT
データを表で見る
| Samsung (%) | SK hynix (%) | Micron (%) | CXMT (%) | |
|---|---|---|---|---|
| 2025 Q2 | 33 | 39 | 22 | 4 |
| 2025 Q3 | 33 | 33 | 26 | 5 |
| 2025 Q4 | 36 | 32 | 22 | 8 |
| 2026 Q1 | 38 | 29 | 22 | 8 |
| 2026 Q2 | 38 | 25 | 24 | 10 |
グラフではCXMTの上昇とSK hynixの低下が目立つが、既存顧客がそのまま両社間を移ったことを示すデータではない。売上高シェアは、各社の売上を市場全体の売上で割った値であり、販売量と単価、製品構成に左右される。4%から10%への変化はシェアが2.5倍になったという意味で、CXMTの売上高が2.5倍になったという意味ではない。表示値は丸められており、合計が100%からずれる場合もある。
※8月のCounterpointの分析はSamsung 39%、SK hynix 26%、Micron 25%としており、9月の表とは異なる。本稿のシェア比較は9月1日版に統一した。
なぜHBMの首位が売上シェアを落とすのか
SK hynixはHBMではなお首位だ。2026年第2四半期のHBM売上高シェアはSK hynixが50%、Samsungが33%、Micronが18%で、表示値の合計101%は丸めによる。Counterpoint ResearchのHBM表にはCXMTの行がない。ただし、行がないことをHBM売上ゼロの証明にはできない。
データを表で見る
| HBM売上高シェア (%) | |
|---|---|
| SK hynix | 50 |
| Samsung | 33 |
| Micron | 18 |
HBMではSK hynixが半分を占める一方、全DRAMではSamsungが先頭に立つ。HBM市場内の売上高を分母にした順位と、世界DRAM市場全体での順位は、このように分かれる。
Counterpointは8月の分析で、同四半期に汎用DRAM価格が前期比で上がる一方、HBM価格は前年比で下がったと説明した。特にHBM3Eの値下がりとHBM4の導入遅れが平均価格に影響したという。比較期間は異なるものの、HBMへの依存が高いSK hynixと、汎用DRAMの値上がりを取り込めた企業とでは、売上の伸び方が違ったという分析である。
契約を結ぶ時期も効く。Counterpointによれば、SK hynixは他社より早く長期供給契約を結び、その価格条件が相場上昇時の増収を抑えた。供給を早く確保できる契約は顧客にとって価値があるが、メーカーが後の値上がりをすべて売上へ反映できるとは限らない。HBMで先行した企業のシェア低下を、製造技術の競争に負けた結果とだけ捉えると、この価格と契約の効果を見落とす。
汎用DRAMにも及ぶAI需要
Micronは2024年6月の決算資料で、同じ製造世代、同じビット数を前提にすると、HBM3EにはDDR5の約3倍のウェハー投入量が必要だと示した。同じ記憶容量を作るのに多くの生産資源を使うため、HBMを増やすと、通常のDRAMへ振り向けられる資源が制約される。この約3倍という比較は当時のHBM3EとDDR5についての説明であり、CXMTの工場の歩留まりを表す数値ではない。
TrendForceは6月、2026年第1四半期の汎用DRAM契約価格が前期比93〜98%上がったと報告した。第2四半期には高容量サーバーRDIMMを優先するため、PCやスマートフォン向けの供給が制約を受けるとの見通しも示している。クリーンルームの増設には時間がかかり、2026年の供給拡大は工程移行が中心で、ウェハー投入の増加は限られるという。
AI需要はGPUのHBMだけでは完結しない。CPU側にも汎用DRAMが必要になり、サーバー用の製品を増やすほどPCやスマートフォン向けとの生産配分が難しくなる。HBMの積層メモリーとDDR5モジュールはそのまま交換できる製品ではなく、総供給量だけで不足の解消を判断することもできない。
CounterpointはCXMTの成長要因として、中国国内の汎用DRAM需要と生産能力拡大を挙げている。買い手にとっては、必要な規格の製品を調達できるかが切実な問題だ。最先端のHBMで首位を取らなくても、汎用DRAMを安定して供給できれば、AI投資が広げた需要を取り込む機会がある。
DDR5とLPDDR5Xで広がる供給先
CXMTは2025年10月、LPDDR5Xの8533Mbpsと9600Mbpsを同年5月に量産開始したと発表した。一方、10667Mbpsはその発表時点で顧客向けサンプル出荷だった。
| 製品・仕様 | 確認できる状態 | 確認時点 | 留意点 |
|---|---|---|---|
| LPDDR5X 8533Mbps / 9600Mbps | 2025年5月に量産開始 | 2025年10月28日発表 | ダイ容量は12Gb / 16Gb |
| LPDDR5X 10667Mbps | 顧客向けサンプル出荷 | 2025年10月28日発表 | 現在もサンプル段階とは断定できない |
| DDR5最大8000Mbps、ダイ容量最大24Gb | 製品を展示 | 2025年11月23日 | UDIMM、SODIMM、RDIMM、MRDIMMなどを展示 |
| LPDDR5X最大10667Mbps | 製品を展示 | 2025年11月23日 | 展示は全製品の量産認定を意味しない |
量産を確認できる速度帯と、展示で示した上限速度は同じではない。一方、DDR5でPC用とサーバー用の両方のモジュールを示したことは、狙う供給先が複数の用途へ広がっている証拠になる。DDR5のダイ容量最大24Gbも、モジュール全体の容量を指す数値ではない。
市販品の側にも手掛かりはある。TechInsightsはGlowayの16GB×2 DDR5-6000 UDIMMを解析し、CXMT G4を確認したと報告した。実際の販売製品からチップを確認した解析は、PC向けに供給された製品の存在を裏付ける。ただし、そのモジュールを確認した事実から、CXMT製品すべての速度や製造コストまで評価することはできない。
製品ごとの供給実績が積み上がれば、購入側は用途に応じて調達先を増やせる。逆に、最速品の展示が増えても、必要な容量の製品を必要な時期に買えなければ、調達の制約は解消しない。シェア拡大が続くかを見極めるには、品種の広がりと継続供給を一緒に確かめる必要がある。
値下がりを左右するのは、製品ごとの供給量
CXMTの売上高シェア10%は、買い手の選択肢が増える方向を示す。ただし、日本の店頭価格が直ちに下がると数字から導くことはできない。購入価格への影響を見るには、規格別の出荷量に加え、サーバーと民生向けの需要、HBMへの生産配分を追う必要がある。売上シェアの上昇が値上がりによるのか、買える製品の量が増えたためなのかで、買い手にとっての意味は変わる。
| 見る指標 | 分かること | 直接は分からないこと |
|---|---|---|
| 売上高シェア | 市場売上に対する各社の取り分 | ビット出荷量、絶対売上、供給能力 |
| ビット出荷量 | 出荷した記憶容量の合計 | 単価を含む売上構成 |
| ウェハー投入量 | 製造に割いた生産資源の規模 | 完成品の数量、歩留まり、販売先 |
| 量産・サンプル・展示 | 製品がどこまで確認できるか | 顧客認定、継続供給、採算 |
売上シェアとビット出荷量を合わせて追えば、価格と供給量の変化を切り分けやすくなる。HBM市場への進出を評価する場合も、全DRAMの10%とは別に、量産と顧客採用の実績を確認しなければならない。
DDR5とLPDDR5Xのどの容量・速度で出荷が増え、サーバーと民生向けの不足がどう変わるか。そこで継続的な供給増が確認できれば、CXMTの成長は買い手が調達先を増やし、供給条件を比較する力につながる。日本のPCユーザーにとっても、次に見るべきなのはシェアの桁数より、必要な規格の製品が安定して店頭へ届くかどうかである。



