NVIDIAは9月3日、Arm系プロセッサー「RTX Spark」を搭載したWindows PCを2026年10月に発売すると発表した。5月31日の初発表で示した「秋」という予定が具体化し、公式仕様には18コア版と20コア版の構成も並んだ。

最大128GBの共有メモリーを備え、CUDAやRTX対応ソフトを薄型ノートでも使える点が売りになる。ただ、同程度のメモリー容量を持つ製品はAMDやAppleにもある。RTX Sparkを選ぶ理由は、扱えるデータの量に加え、メモリーの転送速度と、手元のソフトがどこまで動くかにある。

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18コア版と20コア版、電力枠は筐体で変わる

RTX Sparkの中核はNVIDIA N1Xである。NVIDIAの製品ページは、ノートPC向けに20 CPUコア・6,144 CUDAコア・最大128GBの構成と、18 CPUコア・5,120 CUDAコア・最大64GBの構成を掲げる。いずれも消費電力の枠は45〜80Wだ。対してデスクトップ向けは20 CPUコア、6,144 CUDAコア、最大128GBで、140Wを割り当てる。全構成がLPDDR5XとWindows 11を使う。

用途 CPUコア / CUDAコア 最大共有メモリー / 電力枠
ノートPC(上位) 20 / 6,144 128GB / 45〜80W
ノートPC 18 / 5,120 64GB / 45〜80W
デスクトップ 20 / 6,144 128GB / 140W

同じ20コア、6,144 CUDAコアでも、ノートとデスクトップでは性能を別々に評価する必要がある。薄型ノートの45〜80Wに対し、デスクトップは140Wという異なる設計条件を持つ。コア数が同じだからといって、長時間の推論やレンダリングで同じ速度が続くとは限らない。

NVIDIAはCPU設計でMediaTekと協業し、Grace CPUとBlackwell RTX GPUをNVLink-C2Cでつなぐとしている。CPUはArm系で、CUDAはネイティブに動く。GPUが使えるメモリーの大きさと、CUDA向けに作られたソフトを実行できることを、一体で訴求する構成だ。

Lenovoの実機仕様と、機種ごとの発売案内

9月3日のLenovo発表で具体的に姿を見せたのが、15型のYoga Pro 9nである。最大128GB、256-bit、9,400MT/sのLPDDR5Xを搭載し、最薄16.7mm、最軽量1.65kg、TDPは80Wと案内された。高容量の共有メモリーを持つノートを、持ち運べる大きさに入れようとする設計だ。

共有メモリーはCPUとGPUが同じ物理メモリーを使う。大きなモデルをローカルで動かす際には有利になり得るが、128GBすべてをモデルの重みに割り当てられるわけではない。Windows、アプリケーション、推論時の作業領域も同じ容量を使うからだ。容量表示だけで、扱えるモデルの大きさを断定することはできない。

Lenovoは16型のYoga 9n 2-in-1も発表し、360度回転する筐体とペン対応を打ち出した。ただし、Yoga Pro 9nとYoga 9n 2-in-1の価格・発売時期は、いずれも後日発表としている。この発表に日本向けの価格や発売日はない。

NVIDIAのIFA発表に登場するAcerの小型デスクトップも、展示されたのはコンセプトだ。10月というプラットフォームの発売予定から、紹介された全機種の発売日までは決まらない。購入候補を絞る際には、メーカーごとの販売地域と構成を確認する必要がある。

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同じ128GBでも、帯域幅とソフトは違う

大容量の共有メモリーはNVIDIAだけの特徴ではない。AMDのRyzen AI Max+ 395は16 CPUコア32スレッド、Radeon 8060Sの40 GPU演算ユニット、最大128GBの256-bit LPDDR5X-8000を備える。同チップを使うRyzen AI Halo128GB構成では、メモリー帯域幅は256GB/sと公表されている。395のチップ仕様はWindows 11とx86 Linuxに対応し、標準TDPは55W、構成可能な範囲は45〜120Wだ。AI Halo自体のTDPは120Wとなる。

AppleのM5 Maxを搭載するMacBook Proは、18 CPUコア、最大40 GPUコア、最大128GBの共有メモリー、最大614GB/sを掲げる。QualcommのSnapdragon X2 Elite Extreme、型番X2E-94-100は、Arm64互換の18 CPUコア、Adreno X2-90 GPU、最大128+GB(実際の搭載量は製品ごと)のLPDDR5X、228GB/sを公表する。Hexagon NPUはINT8で80 TOPSだ。

プラットフォーム CPU / GPUの公表構成 最大共有メモリー メモリー帯域幅 OS・主なソフト条件
NVIDIA RTX Spark(Yoga Pro 9nの上位仕様) 最大20 CPUコア / 最大6,144 CUDAコア 128GB 300.8GB/s(理論値) Windows 11、CUDA・RTX
AMD Ryzen AI Max+ 395 16 CPUコア32スレッド / Radeon 8060S 40演算ユニット 128GB 256GB/s(AMD公称) Windows 11、x86 Linux
Apple M5 Max 18 CPUコア / 最大40 GPUコア 128GB 最大614GB/s(Apple公称) macOS、MacBook Pro
Snapdragon X2 Elite Extreme X2E-94-100 18 CPUコア / Adreno X2-90 最大128+GB 228GB/s(Qualcomm公称) Windows on Arm、NPUはINT8 80 TOPS

Yoga Pro 9nの公表仕様から計算した理論メモリー帯域幅は300.8GB/sとなる。計算式は「9,400 MT/s × 256 bit ÷ 8 ÷ 1,000 = 300.8 GB/s」。これはLenovoが示した当該機種の構成から求めた値で、実測速度でも、RTX Spark全機種の共通保証値でもない。

表は9月4日に確認した各社の公表仕様を並べたもので、同条件のベンチマークではない。OSや電力枠に加え、冷却と対応ソフトも異なる。CUDAコア、AMDの演算ユニット、AppleのGPUコアは数え方が違うため、コア数をそのまま性能比に置き換えられない。メモリー帯域幅の差も、推論速度の差を直接表すものではない。

用途による選び分けはできる。既存のx86アプリや周辺機器を優先するならAMD系Windows機が比較の出発点になる。macOSの制作・AI環境で完結するならM5 Maxを見ればよい。CUDAやRTXに対応した制作ソフト、開発ツール、ローカルAIをWindowsで使いたい読者にとって、RTX Sparkは大容量の共有メモリーを使える新たな選択肢になる。Qualcommは同じWindows on Armだが、NPUのINT8 TOPSとGPU処理、ソフト対応を分けて判断する必要がある。

CUDAが動いても、Armの互換性確認は残る

CUDAがネイティブに動くことは、NVIDIAの既存ソフト資産を使う読者には大きい。RTX SparkはRTコアとTensorコアを備え、DLSS 5、Reflex 2、Studio Driver、Game Ready Driverにも対応する。もっとも、GPU側の対応だけでPC上のすべてが動くわけではない。

Windows 11 on ArmはPrismを通じ、x86とx64のアプリを変換して実行できる。ただし、対象はユーザーモードのアプリである。カーネルモードのドライバーなどはArm64向けにコンパイルされていなければならない。外付け機器、古い業務ソフト、特定の開発環境を使う人ほど、GPUの性能表より先にドライバーとネイティブ対応を確かめる必要がある。

ゲームも同じだ。NVIDIAは8月25日、EA、Embark、UbisoftがRTX Spark対応に参加すると発表し、Apex LegendsやARC Raidersなどを例に挙げた。EAのJavelin Anticheatについては、EAとネイティブ対応を進めている。アンチチートがArm64で動くかどうかは、グラフィックス設定より前に起動可否を左右する。対応作業中という情報は、全ゲームで対応が終わったという意味ではない。

たとえばCUDAを使う処理が動いても、その前後で使うプラグインや周辺機器に未対応のものがあれば、作業を移す際の障害になる。使うソフト一式で仕事が完了するかを確かめたい。

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10月の製品で確かめたい実効性能

NVIDIAが掲げる最大1 PFLOPSは、FP4という低精度形式でのAI演算性能だ。通常のFP32演算性能や、QualcommのNPUが示すINT8で80 TOPSという値とは計算の条件も処理する回路も違う。数字の桁だけでAIの速さを順位付けすることはできない。

ローカルAIを目的に買うなら、同じモデルを同じ量子化設定で動かし、文脈長をそろえたときの生成速度と消費電力が判断材料になる。メモリーにモデルが収まることと、待たずに仕事を進められることは別の条件だ。ゲームでは、普段遊ぶタイトルが起動するかに加え、解像度やフレーム生成の設定をそろえて比較したい。

CUDAを使う制作と大容量のローカルAIを一台にまとめたい人には、RTX Sparkの登場で持ち運べるWindows機の候補が増える。10月の製品で価格と実アプリの速度が明らかになり、手元のソフトや周辺機器も対応していれば、普段の制作環境を保ちながらローカルAIへ作業を広げる道が具体的になる。