
サイエンス
暗号用の乱数をもっと速く:磁気と電気を組み合わせる新材料「オートフェロイクス」が示す可能性
磁気の反転を電気分極の状態へ迂回させ、読み出し信号を保ちながら乱数を高速化する理論研究。論文の速度を条件別に比較し、暗号用途への可能性と材料実証までの課題を読み解く。
別名: MTJ
Magnetic Tunnel Junction。2枚の磁性層でナノメートル単位の極薄の絶縁層を挟んだ素子。量子力学的なトンネル効果により、磁性層の磁気秩序の向きによって電気抵抗が変化する現象を利用して情報を読み出す。

磁気の反転を電気分極の状態へ迂回させ、読み出し信号を保ちながら乱数を高速化する理論研究。論文の速度を条件別に比較し、暗号用途への可能性と材料実証までの課題を読み解く。

シンガポール国立大学の研究チームは、磁気メモリ素子の熱揺らぎを乱数として利用する確率的プロセッサを開発した。室温で動作するこの技術は、膨大な計算量を要する組合せ最適化問題において、既存のCPUや量子アニーラーを凌駕する高速性と省電力を実現した。

東京大学の共同研究チームは、非共線型反強磁性体Mn3Snと酸化マグネシウムを積層した磁気トンネル接合において、運動量空間に生じる「幻の磁極」を利用することで、最大1000%の巨大なトンネル磁気抵抗効果を理論的に証明した。これは、外部に磁場を漏らさない反強磁性体から磁気情報を読み出すという長年の課題を解決し、超高速かつ不揮発性の次世代メモリ実現への道を開く画期的な成果である。