かつて「デバイスを探す」として知られたGoogleの紛失物探索ツールが、「Find Hub」として生まれ変わる。名称の変更に加え、待望の超広帯域無線(UWB)技術への対応や、衛星通信、さらには航空会社との連携といった新機能を引っ提げ、Androidユーザーにとっては、これまで以上に落とし物が見つかりやすくなることが期待出来そうだ。
「デバイスを探す」から「Find Hub」へ
Googleは2025年5月13日(現地時間)、同社の紛失物発見サービス「デバイスを探す」を「Find Hub」へとリブランドすることを発表した。この変更は、単に名前が変わったという以上の意味を持つ。従来のスマートフォンやタブレット、イヤホンといった「デバイス」の追跡に留まらず、Bluetoothトラッカーを取り付けた鍵やカバン、さらには位置情報を共有する家族や友人まで、あらゆる大切なものを見つけるための「ハブ(中心)」となるというGoogleの明確な意志表示である。
近年、Bluetoothトラッカー市場はAppleのAirTagが一歩リードしていたが、AndroidエコシステムもChipoloやPebblebeeといったサードパーティ製トラッカーの登場により、徐々にその利便性を高めてきた。今回の「Find Hub」への進化は、この流れをさらに加速させ、より多くのモノや人をシームレスに繋ぐプラットフォームを目指すものと考えられる。
待望のUWB対応:ピンポイントで失くし物を見つけることが可能に
今回の発表で最も注目すべきは、なんといっても超広帯域無線(UWB)技術への対応であろう。UWBは、Bluetoothに比べて指向性と距離測定の精度が格段に高く、まるでレーダーのように、数センチ単位でタグの方向と距離を正確に示す。これにより、「部屋のどこかにあるはずなのに探し物が見つからない」といったイライラは過去のものになるかもしれない。
Googleによると、このUWBサポートは今月後半(2025年5月後半)から利用可能になる予定で、まずはMotorola製の「Moto Tag」が対応するとのことである。Moto Tagは昨年夏にUWB対応を謳って登場したが、これまでその真価を発揮できずにいた。ようやく、そのポテンシャルが解放される時が来たのだ。

もちろん、UWBの恩恵を受けるためには、UWBに対応したスマートフォンも必要だ。現時点では、比較的新しいPixel Proシリーズや、Galaxy SシリーズのPlus/UltraモデルなどがUWBチップを搭載している。AppleがiPhoneの多くでUWBをサポートしているのに対し、Android陣営はまだ対応機種が限られているのが現状だが、今回の「Find Hub」のUWB対応を機に、今後急速に普及が進むことが期待される。
「Find Hub」をさらに強力にする新機能群
「Find Hub」の進化はUWB対応だけに留まらない。Googleはさらにいくつかの強力な新機能を発表している。
- 衛星通信への対応: 2025年後半には、携帯電話の電波が届かない場所でも友人や家族と位置情報を共有できるよう、衛星通信機能が統合される予定だ。これは、登山や辺鄙な場所への旅行などでの安全確保に大きく貢献するだろう。
- 航空会社との連携: 2026年初頭からは、Aer Lingus、British Airways、Cathay Pacific、Iberia、Singapore Airlinesといった主要航空会社と提携し、Bluetoothタグの位置情報を航空会社と共有できるようになる。これにより、空港での手荷物紛失のリスクを減らし、万が一紛失した場合でも迅速な発見が期待できる。
- 新たな提携パートナー: 「Find Hub」エコシステムはさらに拡大する。July社やMokobara社はトラッキング機能内蔵のスーツケースを、Peak社はスキー用品専用のタグを、そしてPixbee社はディズニーキャラクターをあしらった可愛らしいBluetoothタグを提供する予定である。これにより、より多様なアイテムを「Find Hub」で管理できるようになる。
Apple「探す」ネットワークとの比較 – Androidユーザーの期待と、これから
Appleの「探す」ネットワークとAirTagは、その使いやすさと精度の高さで市場をリードしてきた。特にUWBによる正確な位置特定は、多くのユーザーに支持されている。今回のGoogle「Find Hub」のUWB対応は、Androidユーザーにとってまさに待望のアップデートであり、Appleの牙城に迫る大きな一歩と言えるだろう。
課題がないわけではない。前述の通り、AndroidスマートフォンにおけるUWB対応機種の普及はまだ道半ばである。また、広大なAndroidエコシステムの中で、多様なメーカーのデバイスやトラッカーがシームレスに連携し、Appleに匹敵するユーザー体験を提供できるかどうかも、今後の大きな焦点となる。
しかし、世界中で数十億台以上も利用されているAndroidデバイスのネットワークは、紛失物発見において計り知れないポテンシャルを秘めている。Googleが本腰を入れて「Find Hub」の機能強化とエコシステムの拡大を進めることで、Androidユーザーはこれまで以上に安心して持ち物を管理し、大切な人との繋がりを維持できるようになるはずだ。
「Find Hub」がもたらす新たな安心への期待
Google「Find Hub」へのリブランディングとUWBをはじめとする新機能の搭載は、我々のデジタルライフにおける「安心」を更に高めてくれる可能性を秘めている。失くし物を見つけるという日常的な課題から、電波の届かない場所での安全確保、さらには旅行時の手荷物管理に至るまで、その応用範囲は広大だ。
もちろん、テクノロジーは万能ではないし、プライバシーへの配慮も不可欠である。しかし、テクノロジーが我々の生活をより便利で、より安全なものにできるという未来像を提示しているという点で、Googleの新たな「Find Hub」には、1人のAndroidユーザーとして大いに期待したい所だ。
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