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GoogleがPixelスマートフォンのGPU性能を密かに強化、最大62%アップも

Y Kobayashi

2025年3月22日

Googleが密かに、しかし着実にPixelシリーズのスマートフォンのグラフィック処理能力を引き上げていることが明らかになった。ユーザーからの報告によると、最新のAndroidアップデート後、一部モデルでは最大62%もの性能向上が確認されている。グラフィック処理能力の向上はゲームプレイからAI処理まで、幅広い用途での体感速度向上につながると見られる。

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数字で見るPixelのGPU性能向上

Redditの投稿を発端に、複数のPixel所有者たちがベンチマークスコアの急上昇を報告している。それら報告によると、Pixel 7aに至っては平均値と比較して62%ものGeekbench 6 GPUスコア向上を記録。Pixel 8とPixel 9もそれぞれ31%と32%の堅実な性能アップを見せている。特に注目すべきは、3Dグラフィックス描画の新標準とされるVulkan APIテストでの顕著な向上だ。

Vulcan GPU Geekbench doubled in Android 16!
byu/Educational_Leg8005 inpixel_phones

当初、この性能向上は次期OS「Android 16」のベータ版特有の変更と推測されていた。しかし、Android Authorityの検証により、現行バージョンのAndroid 15最新安定版を搭載したPixel 6aでも約23%の性能向上が確認された。さらに驚くべきことに、このPixel 6aはGeekbench 6 GPUベンチマークで8252ポイントを記録し、最新フラッグシップモデルのPixel 9 Proさえも上回る結果となったのだ。

GPU性能向上の技術的背景

このパフォーマンス向上の舞台裏には、Googleによる緻密なソフトウェア最適化戦略がある。TensorチップシリーズはQualcommのSnapdragonプロセッサと比較すると純粋な演算能力では見劣りするものの、Googleはソフトウェア面での最適化によって既存ハードウェアの限界に挑んでいる。

具体的には、各種Androidアップデートで最新のGPUドライバーを継続的に提供することで性能を絞り出している。TensorチップをArm Mali GPUと組み合わせたPixelシリーズは、出荷時点では最新のグラフィックドライバーを搭載していない。これは多くのメーカーがシステムの安定性を重視して保守的なアプローチを取るのとは対照的だ。

Android Authorityによれば、Googleは「Pixel Drop」と呼ばれる四半期ごとの機能アップデートに合わせて、新しいGPUドライバーを段階的に導入している。例えば、Android 15アップデートでは、Tensor G1、G2、G3搭載機種には2024年2月リリースのドライバー、最新のTensor G4搭載機種には2023年12月リリースのドライバーが適用された。その後も、より新しいドライバーが順次提供されている状況だ。

以下の表は、各TensorチップとAndroidバージョンの組み合わせにおけるGPUドライバーバージョンを示している:

AndroidバージョンTensor G1搭載機Tensor G2搭載機Tensor G3搭載機Tensor G4搭載機
Android 15r48p0r48p0r48p0r47p0
Android 15 QPR1r49p0r49p0r49p0r49p0
Android 15 QPR2r51p0r51p0r51p0r51p0
Android 16 (Beta 3)r52p0r52p0r52p0r52p0

また、各ドライバーのリリース時期を見ると、Googleがいかに迅速に最新版を取り入れているかが分かる:

Mali GPUドライバーバージョンリリース日
r47p02023-12-14
r48p02024-02-19
r49p02024-04-18
r51p02024-08-14
r52p02024-10-03

注目すべきは、Android 16 Beta 3に搭載されているr52p0ドライバーが、リリースからわずか数週間でベータビルドに組み込まれている点だ。この積極的なアプローチが、ハードウェアの限界を超えるパフォーマンスを引き出している。

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ユーザー体験への実質的影響

ベンチマークスコアの向上は単なる数字の遊びではない。GeekbenchのGPUテストは「機械学習やコンピュータビジョンなど、実際のアプリケーションをモデルにしたテスト」を使用しており、日常使用での体感性能向上に直結する可能性が高い。

特に恩恵を受けるのは、VulkanグラフィックスAPIを活用する3Dゲームやグラフィック処理を多用するアプリケーションだ。例えば、2024年12月のアップデート後、オープンワールドRPG『原神』のフレームレートが約20-25fpsから45fps以上へと倍増。プレイ体験が「カクカク」から「サクサク」へと劇的に変化したという。

AIや機械学習を活用するアプリケーションも、この恩恵を受ける可能性が高い。Googleの強みであるAI処理と組み合わさることで、写真編集や音声認識といった日常的なタスクがより快適になると予想される。

実際の体感向上度は、アプリの実装方法によって大きく異なる。特に最新のVulkan APIを採用したアプリケーションや、新しいドライバーで最適化された機能を多用するソフトウェアでは、より顕著な改善が見られるだろう。

Android 16がもたらす将来性

現在のAndroid 16 Beta 3には、2024年10月3日にリリースされたばかりの最新GPU「r52p0」ドライバーが組み込まれている。これは、正式版のAndroid 16が数か月後にリリースされた際に、古いPixel端末にも新たな命が吹き込まれる可能性を示唆している。

ただし、これらの強化によってTensorチップとQualcommやMediaTekの最新チップとの間の性能差が完全に埋まるわけではない。それでも差を縮めるのには役立つだろう。

スマートフォン市場では、多くのメーカーが新機種の販売促進のために古い端末のサポートを早期に打ち切る傾向にある中、Googleのこうしたアプローチは称賛に値する。ハードウェアの物理的限界を超えるソフトウェア最適化は、環境負荷の観点からも、ユーザーの財布の観点からも、持続可能なスマートフォン利用の道を示している。

もちろん、Pixelシリーズが他のフラッグシップスマートフォンと差別化されるのは、純粋な演算性能ではなく、洗練されたカメラ体験や独自のAI機能、そしてクリーンなAndroid体験だ。しかし、静かに進められてきたこのGPU性能向上は、「Pixelはゲームに向かない」というユーザーの印象を少しでも払拭するのに一役買うことになるかもしれない。


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