ポータブルゲーミングPC市場に、新たな「怪物」の登場を予感させる衝撃が走った。ニッチながらも先鋭的な製品で知られる中国メーカーGPDが、次世代機「GPD Win 5」をティーザー公開。その心臓部には、AMDの最新かつ最強のAPU「Strix Halo」が搭載されることが明らかになった。圧倒的な性能の片鱗を見せつける一方で、その実現のために取られた「外部バッテリー」という異例の設計は、ユーザーに大きな選択を迫りそうだ。

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怪物APU「Strix Halo」がポータブル機に降臨

GPDが公開した短いティーザー映像は、業界関係者の度肝を抜くには十分だった。最新の重量級タイトル『黒神話:悟空』をプレイする映像には、フレームレートが160fpsから200fps超で推移する様子が映し出されていたのだ。その間、APUの消費電力は55Wから60Wに達しているにもかかわらず、CPU温度は60度台半ばで安定。これは、現行のポータブルゲーミングPCの常識を遥かに超えるパフォーマンスと、それを支える強力な冷却システムの存在を示唆している。

この驚異的な性能の源泉こそ、AMDの「Strix Halo」アーキテクチャを採用した「Ryzen AI Max+ 395」APUだ。

  • CPU: 最新の「Zen 5」アーキテクチャに基づく16コア32スレッド
  • iGPU: 「RDNA 3.5」アーキテクチャを採用した「Radeon 8060S」(40コンピュートユニット)

現行の主要なポータブル機、例えばASUS ROG Allyに搭載されているRyzen Z1 ExtremeのTDPが最大30W程度であることを考えれば、GPD Win 5が目指す性能の次元が全く異なることは明らかだろう。これはもはや、ポータブル機の皮を被ったハイエンドデスクトップPCに匹敵するポテンシャルと言っても過言ではない。

明らかになった詳細スペックと、最大の「驚き」

ティーザー公開後、リークによってGPD Win 5の詳細なスペックが明らかになった。その内容は、性能への徹底的なこだわりを示すものだ。

  • APU:
    • Ryzen AI Max+ 395 (16C/32T, Radeon 8060S 40CU)
    • Ryzen AI Max 385 (8C/16T, Radeon 8050S 32CU) の下位モデルも用意
  • TDP: 45W〜75Wの範囲で調整可能
  • ディスプレイ: 7インチ、1920×1080解像度、120Hzリフレッシュレート、VRR (AMD FreeSync Premium) 対応のLTPSパネル
  • メモリ: 32GB64GB、最大128GBのLPDDR5X-8000メモリ(クアッドチャネル構成)
  • ストレージ: PCIe 4.0対応 M.2 2280スロット ×1
  • 冷却: デュアルファン、クアッドヒートパイプ構成

しかし、スペックシートの中で最も注目すべきは、バッテリーに関する記述だった。

性能の代償か? 80Wh「外部バッテリー」という選択

GPD Win 5は、本体にバッテリーを内蔵しない。その代わりに、着脱可能な80Whの「外部バッテリーパック」を使用するという、極めて異例の設計を採用しているのだ。

これは、Strix Haloという強力なAPUをポータブル機の筐体に収めるための、苦渋の決断だったと推察される。TDP最大75WというAPUを安定して冷却するためには、強力な冷却機構(デュアルファン、クアッドヒートパイプ)のための広大なスペースが必要となる。GPDは、内蔵バッテリーという「常識」を捨てることで、そのスペースを捻出したのだ。

この設計により、ユーザーはバッテリーパックを接続するか、最大180Wに対応するDCポートから直接給電してプレイすることになる。GPDはこれを「バックパックモード」や「ワイヤードモード」と呼んでいるようだ。このトレードオフがもたらす影響は大きい。

  • メリット: 本体重量の軽量化、バッテリーの熱から解放されることによる冷却効率の向上。
  • デメリット: バッテリーパックを含めた携帯性の低下、ケーブルの取り回しの煩わしさ。

果たしてゲーマーは、究極のパフォーマンスと引き換えに、この不便さを受け入れるのだろうか。筆者が特に興味を惹かれるのは、この点だ。

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王者の座は揺るぐのか?価格と市場へのインパクト

これだけのモンスターマシンとなると、当然価格も相応のものになる。複数の情報筋は、Ryzen AI Max+ 395搭載モデルの価格が1,500ドル(約23万円)を超える可能性を示唆している。参考として、同じAPUを搭載するタブレットPC「ASUS ROG Flow Z13」が2,300ドル前後(日本では値下げ後の価格で32万円前後)で販売されていることを考えれば、この予測は現実味を帯びる。

GPD Win 5は、2025年8月1日から開催される「Chinajoy 2025」で正式に披露され、10月頃の発売が予定されている。

大手メーカーがバランスを重視する中、GPDは常に性能に特化した製品でニッチ市場を開拓してきた。今回のGPD Win 5は、その思想を最も先鋭化させた製品と言えるだろう。これは単なる新製品の登場ではない。ポータブルゲーミングPCの「性能」の限界を再定義し、市場に「性能か、携帯性か」という根源的な問いを突きつける、GPDの挑戦状なのである。その答えは、市場と、我々ゲーマー自身が下すことになる。


Sources